前回、6.過去の内部監査員教育実施記録の確認の説明を途中で区切らせていただきました。

 

外部研修機関を長年使っている組織において、ISO事務局に新しく加入された方にとって必要な視点をお伝えする狙うで、外部研修機関についてはどのような評価選定、そして活用価値の判定をしていけばよいか、ということをAI先生に基礎的な部分を教えてもらう、そこでは日本の実情を踏まえた回答が全く入っていないので、その点についての私の見解をお伝えしましょう、ということで持ち越しになっていました。

 

今日は早速その部分の続きです。

 

 

新しくISO事務局担当の部署に入られた方が、それまでの自社の内部監査員の教育訓練状況を確認するのであれば、過去5年程度の教育訓練記録を確認することをお勧めします。

 

その上で、その教育訓練が、外部研修機関を活用しているのか、自社内教育で対応しているかによって、次のステップが変わってきます。

 

 

まずは前回の流れから、外部研修機関を活用している場合について解説していきましょう。

 

 

① 過去の研修機関活用では、同じ会社を使っているのか。複数の会社を使っているのか。

② その会社はどのような会社か、評価した記録が残っているのか。

③ その会社で受けている教育のカリキュラムはどのようなものなのか。

④ その会社で受講後、本当に内部監査業務に従事できているのか。

 

このような視点が必要です。

 

外部の取引先の評価は、製品の原材料を購入する先だけすればよい、というものではありません。

教育研修機関でも、さまざまな会社があります。

どのような評価軸を持ち、そしてその評価軸に則って評価した場合の結果をきちんと反映した実務運営ができているのかどうかは、どのような分野であっても共通の事項であり、ここでもきちんと対応することが必要です。

 

よって、1項目めに関しては、まずは自社の購買管理規程を確認する必要があります。そしてその規程内で、研修会社のようなサービス業の相手先をどのように評価するのが自社ルールかを決めて、それに則った評価結果の記録を確認していきましょう。

 

 

ISOの研修会社(研修機関)については、認定制度あるいは明快なお墨付き、というものは日本国内では存在しません(海外でもあまり聞きません)

 

ご参考までにお伝えしますが、テクノファをはじめとしたいくつかの研修機関は、JRCA等の団体からコースの承認を受けています。これは審査員になるためのオフィシャルな研修コースについての承認、という位置づけで、会社そのものを承認、認定しているわけではありません。

 

とは言え、何もそのような承認もない研修会社よりは、圧倒的に信頼感はあろうかと思います。

 

 

ちなみに、それらの研修会社(研修機関)が集まった団体があります。

JATA(審査員研修機関連絡協議会)という名称で、こちらからホームページにアクセスが可能です。

審査員研修機関連絡協議会 (jata-iso.com)

 

 

ここに加盟している機関の研修であれば、基本的には外れ、ということはありません。

もちろんテクノファはこのJATAに加盟する機関の中でのメインプレーヤーの1社、ということになります。

 

 

さて、その上でISO研修という観点から、自社の社員が受講している研修研修会社のセミナー内容がどのようなものか、という確認に進みます。

 

 

第一は、上記のように、JATA加盟の研修機関かどうか、という視点でチェックしてください。その上で次は

 

カリキュラム

 

の確認です。研修機関で受講するカリキュラムはほとんどが、1日ベースか、2日ベースのカリキュラムになっています。

 

なぜかというと、短時間でマスターするにはやはり厳しいそれだけの力量がISO内部監査員になるには必要だから、ということです。

 

JATA加盟の機関で開催している公認コースは、2日間以上です。

なぜか。

 

 

理由は簡単で、内部監査員になるために学ぶこと、身につけること、これらを1日でカバーするのはまず無理、という理由からです。

 

JATAではコースの公認基準が色々な観点から定められているのですが、コース時間だけとっても14時間以上、とされています。

 

2日間必要な理由がお判りいただけると思います。

 

 

 

実は、お客様からの要望で、2日間業務をあけるのは大変厳しいので、何とかこれを1日に圧縮して実施してもらえないか。

というご要望をいただくケースがあります。

 

お客さまのご要望があれば、無下にお断りする、ということもなかなかできないため、1日コースへのアレンジをお受けして研修を開催する場合もあります。

 

しかしその際には、身につけられないものがある、ということをご理解いただき、その上での研修実施、ということで対処しています。

 

事前勉強がしっかりできている方であれば、あとは実践演習だけでよい、となると1日研修でも力量は身につけられる場合もありますので、すべてはお客様の現在地点がどこなのか、ということによります。

 

 

そしてもう一つの修了確認の視点もお伝えしましょう。

 

世の中にある研修の一つのパターンは、とにかくその場にいることが大事、という研修もお分かりかと思いますが存在します。

しかし、ISOの内部監査員として実務でしっかりとした対応を図るためには、とにかくその場にいて、雰囲気だけ掴む、というレベルでは実践の場で、つまり現場で役に立つ、ということにはなかなかなりません。

 

そうなると、研修にもそのことを反映させた修了基準が期待されるわけです。

 

 

 

JATA公認基準ではテストがあり、それにパスしないと、最終的な修了基準は満たしません。

あくまでテストに合格した方のみ、コース修了の証明となる、合格証明書を発行します。

 

 

よって、外部研修を受講した。何らかの証明書をもらってきた。というだけで社内の内部監査員登録をする、というのではあまりにも短絡的判断、ということで改善をすべき、という問題意識を、万が一そのような状況に御社があるようであれば持っていただきたいのです。

 

 

 

その上で、さらに余裕があれば、その研修会社がどのような教材を使っているのか、というところに踏み込んで評価をしていただきたいのです。

 

巷でよく見かける、研修中に使うスライド資料をそのまま紙焼きしただけのもの、いわゆるスライド資料のハードコピーをテキストとして使っているだけ、ということであれば、残念ながら、最上の研修会社という評価をつけるのは待ってください。

 

スライドを使うのは今や当たり前ではありますが、それは本来、講師業務を進めるための支援であり、アウトラインをつかむために存在するもののはずです。

 

それ以外に、しっかりとした文章で書き綴ったテキスト教材がない、ということであれば私の感覚からすれば、その研修会社は一流の域にはまだ達していない、という判断になります。

 

テキストとはすなわち教科書です。学校の教科書がパワーポイントのスライドハードコピーという状況であれば、お子さんをお持ちの方であればお感じになると思います。本当にここに我が子を預けて大丈夫なのか、という疑問です。

 

社会人教育であってもその原理原則は同じです。

 

どうぞそのことを念頭に置いたうえで、外部の研修会社の教材類の評価を行ってください。

 

 

 

その上で、最後は、その外部研修に参加した自社社員の評価です。

わかりやすい説明があったか。

力量が付いたという自己評価ができるかどうか、どのように認識しているか。

 

これらの観点を踏まえたうえで、自社社員に対してアンケート評価をとる、直接声(意見、感想)を聞く、ということを手を惜しまずに対応してください。

 

 

さて、このほかにもまだお伝えしたいことがありますが、細かい話にこの先は入っていきますので、それはまたどこかの機会に譲って、2つ目のテーマの説明に進めます。

 

 

(2) 自社内研修による新任内部監査員教育

 

外部研修の時は、ずいぶんいろいろな情報を提供したうえで、考えを深めていただきたかったわけです井が、社内で研修を行って、その上で内部監査員登録をしていく、という道を選ばれている場合でも、大きな評価軸、評価ポイントは変わりません。

 

カリキュラム

合格修了基準

教材の内容

講師の質

 

これらの項目を確実にチェックしていけば、内部監査員教育を今まで自社内でどのように行ってきたのかがわかるはずです。

 

その際にも、上記のJATAのコース公認基準は、ご参考になろうかと思います。

 

 

いずれにせよ大事なことは、ビフォー/アフターをしっかり意識する、ということです。

 

私がいつも講師をする際に意識してお伝えするのは、人材育成は、あてもなく近所をぶらぶらお散歩するのではなく、目的意識をしっかり持って登山をする、ということだ、という点です。

 

公園を散歩するのであれば、気分がすっきりした、とか次の予定の時間が来た、というようなことがトリガーとなって終わります。

それはそれで意味のある行動ではありますが、内部監査員は私的なものではありますが、資格として運用管理するのが基本です(絶対しなければならないというものではありませんが)。

 

そうすると、どのような事前の知識、経験を持った人々を教育訓練していくのか、ということをはっきりさせておかなければ、スタート地点に立てません。

 

そしてそれらの人々を、どこの地点まで引っ張り上げていくのか。

 

「abcが分かっているかどうかも判別できない状態の人々を英検合格まで指導教育する」

 

というような曖昧とした命題では対応ができないのです。

 

 

「英検3級合格者を対象に、半年間で英検2級合格レベルまで実力を高めて欲しい」

 

ということになって初めて教育カリキュラムも検討できますし、具体的な教材の準備も進められるようになります。

 

ISOの教育訓練もこれと全く同じです。

 

 

 

過去の内部監査員教育訓練記録をチェックする際にも、これらのことを分かったうえで、その記録を見ていけば、過去の状況への理解が大いに進むはずです。

 

そして、そこを理解しておけば、過去実施した教育訓練がどの程度有効であったか、ということにも理解が及ぶようになります。

 

 

実際の記録を見て、それをどう判断するか。

その先は個別のコンサルテーションの世界に入ってしまいますので、残念ながらメルマガでお伝えすることはできません。

 

ここまでお読みの方であれば、他社の支援を受けずとも対応できるでしょう。

万が一、自分ではできそうにもない、ということがあれば、お手伝いすることはやぶさかではありません。

 

別途ご連絡ください。

 

それでは2回に分けてお伝えした、「6.過去の内部監査員教育実施記録の確認」はここまでとさせていただきます。

 

本日もありがとうございました。

 

(了)