何かおかしな事になってます
この機体は一式陸上攻撃機といって、簡単に言うと中型の爆撃機です
爆撃機なのに何でわざわざ『陸上』を名乗るかというと、これが海軍機であり、海軍で爆撃機というと空母で運用する『艦上爆撃機』を指すので、地上の飛行場で運用される機体だからわざわざ『陸上攻撃機』と称しています
ちなみに『攻撃機』とは戦車とか地上部隊とか軍艦のような戦術目標をピンポイントで叩く物を指し、『爆撃機』は「あの辺に多数の爆弾をばら撒いて面を叩こう」という物を指します
但し日本海軍の分類では単純に爆弾を運用する機体は小型だろうが大型だろうが、目標が戦術的だろうが戦略的だろうが『爆撃機』で、主に魚雷を運用する機体は『攻撃機』とカテゴライズされていました
この一式陸攻は魚雷なら1本を搭載してピンポイント攻撃を行い、爆弾なら対艦や陸上施設を大きめの爆弾で叩き、小さ目の爆弾で面制圧もある程度できるというタイプの中型爆撃機/攻撃機になりますが、主に対艦攻撃を目的として設計開発された機体なので『陸上攻撃機』と呼ばれます
空母艦載機ならせいぜい3~400Kmの距離が攻撃圏ですが(日本機ならその倍近くは飛べる)、陸攻は1000km先の目標を叩ける、そういう違いがあります
まあこんな中型機を空母に乗せて使える訳がないのでわざわざ『陸上機』を名乗る必要もなく、日本以外では聞きなれない名称です
┌─┐
_☆☆☆_
( ´_⊃`) 「そうかな?」
これは1942年4月に行われたドーリットル爆撃で、B-25ミッチェル中型爆撃機を空母ホーネットに乗せて日本近海まで運び、発艦させて日本本土を爆撃させた時の物です
攻撃後の着艦回収は無理なので日本を横断した後は中国に着陸する計画になっていました
中型なので大型爆撃機であるB-29と比べるとこの位の差になってしまいます
何がおかしいかと云うと海面スレスレに飛んでいる両端の機体の高度です
この一式陸攻の全長は約20mであり、海面に映る機体の影との距離から高度を割り出すと、左の機体は高度6~7m、右の機体に至っては高度4m程度で攻撃侵入をやっているのです
中央の機体は右の機体とほぼ同じ長さで写っており、撮影者との距離的な差は殆ど無いと考えられる事から右機の高度4mの8.7倍の高度にいると計算できるので高度約35mで飛んでいると考えられます
この機体の爆装時・海面高度の最高速度は時速360Km程度なので1秒間に100m、機体全長5個分移動しますから、高度35mで飛ぶこの機体が機首を約20度下げれば1秒で海面に突っ込みます
高度35mでも結構な超低空飛行と言えますが、その左右に4mと6~7mで飛ぶ僚機がいるのを見ると
( ;゚´∀`゚,) 「何ビビってんだよコイツwww」
と云う風に見えてしまうから不思議です
中央の機体のパイロットがチキンなんじゃありません
両側の機体のパイロットが凄腕過ぎる、というより頭がおかしいレベルです
高度35mから20度の急降下(大型機なら充分な急降下)で1秒で激突しますが、高度4mなら0.1秒ちょっとで突っ込みます
人間の反応速度は最短で0.3秒と云われますから、ちょっと「ヤバ!?」と思った時には手遅れでしょう
というか1式陸攻のプロペラ径は3.4mなので半径が1.7m、ペラの先から海面まで2.3mしかありません
実は中央の機体もビビって高度を下げられないのではなく、敵の対空射撃から僚機を護るために囮になるべく、わざと高めに飛んでいるんだそうです
ちなみにもっとおかしい事に最初の画像の左下を飛んでる一式陸攻のパイロットは今もご存命で、90歳で現役のパイロットなのだとか(2013年時点)
高橋淳さん
もう現在にしてから只者じゃない雰囲気を醸し出してますが、当時の写真がこちら
カッコ良すぎだろ・・・
その画像のキャプションを読むと、1942年8月8日ガダルカナル・ツラギ上陸部隊に攻撃を掛ける日本雷撃機となっています
今から73年前のちょうど今頃、南太平洋の楽園のような島々が地獄に変わっていく戦いの始まりのような1枚がこの画像なのです
( ・ω・) 「やっと平面航空写真地図の出し方が分かりました」