IUのリメイクアルバム「花しおり3」からの2本目のMVは、Beautiful Person
この曲、原題は미인で、美人という漢語を韓国語読みしたものなんだが、日本語でも美人というと何やら端正で近寄りがたいというか、「かわいい」や「きれい」とは違ったニュアンスを持つ。
一度見て二度見て何度も見たいね
美しいその姿を何度も見たいね
誰もが一度見たら何度も見ているね
誰の恋人なのか本当に気になるね
みんな愛してるね
私も愛してるね
みんな愛してるね
私も愛してるね
私も密かにその美人を何度でも見ているその皆が我を忘れて何度でも見ているね
みんな愛してるね
私も愛してるね
みんなも愛してるね
私も愛してるね
君よ、君は五月のスミレに似た美人
空高く飛ぶことを恥ずかしくないように
君よ、君は五月のスミレに似た美人
空高く飛ぶことを恥ずかしくないように
どこか近寄りがたいけど誰もが目が離せないただ見ていたい、そんな高嶺の花的な美しい人物を歌っている。
5月のスミレに似ているという比喩以外は、美人と呼ばれている人物がどんな容姿とかどういう性格とかと言う具体的な描写はなくて、美人を取り囲む人々の反応でほぼ歌詞が構成されているのが面白い。
IUバージョンのアレンジはちょっとコミカルなエレクトロニックなサウンドになっているのだが、
原曲は、とてもタイトな演奏のブルージィなオールドロックな曲で、ボーカルもシャウト系。
このジャケ写をオマージュした写真をIUが今アルバムリリース直前にアップして誰のカバー曲なのかを匂わせていたのが心憎い。
原曲とは異なりIUのバージョンでは「美人」は特定の美しい女性のことではなくて、ビハインド動画でIUが言及しているように、
性別にとらわれないやや抽象度の高い美しさをもった人物という解釈であり、実際MVで「美人」役を演じているのは、ウルトライケメンであるチャ・ウヌ。
IUとチャ・ウヌは、今年2月にファッションブランドの広告で共演しており、
ある種予兆のようなものがあったのだが、5月にMVにチャ・ウヌが出演するという情報が流れてファンたちが騒然となったそのMVが本作というのことになる。
鳴物入りでリリースされたMVだが、映像内では「美人」役の人物はずっと頭部が光っていて容貌が見えず、ラストシーンなって初めてその顔がチャ・ウヌであることが判明するというなんともチャ・ウヌの贅沢な使い方をしている。
対するIUは逆に顔が常に影が落とされているという演出になっていて、光り輝きみんなから称賛されるチャ・ウヌと、影に沈んで誰も見ていないIUが対比されている。
ただ、光を帯びる美人たるチャ・ウヌは、眩しすぎるがゆえに皆にその素顔を見てもらえず、光ゆえに忌避されてしまい、光を隠すために仮面をかぶる羽目に。
一方影たるIUは周囲から見えるように仮面をかぶるにいたり、最後に2人が出会い仮面を外して互いに素顔をさらし、対社会的ペルソナから解放されて本来の美しさを取り戻すという非常に美しい結末になっている。
ビハインド動画で「今回は自己愛をテーマにもっと幅広く解釈できるようにしている」とIUが発言しているように、美しい女人への憧れを歌うストレートなロックがIUの手で新たな光を帯びて蘇って感があり、単なるリメイクで終わらせず、もしかしたらこれこそがこの歌の本来の姿なのではと思わせるIUのシンガー魂に唸らされてしまう。