「おつかれさま」には、恋愛、夫婦愛、親子愛、きょうだい愛、隣人愛などいろいろな形の愛が描かれている。激しい憎悪や軋轢もあるが、それらをも包摂した、大きな人類愛がドラマ全体を通じて表現されているように思える。
そういった意味で、ドラマの撮影中の2024年1月25日リリースされたIUの楽曲Love wins allはこのドラマの主題歌のようにも聞こえてくる。
この曲のMVは愛を歌い上げている歌なのに、SF短編映画のような荒涼としたディストピアからの逃亡劇に仕立てられており、歌詞のメッセージも明るく無邪気なものではなくてどこか陰影を伴いながらも闇を飲み込んでなおも輝く愛を讃えているところがいかにもIUらしくて心を揺さぶる。
歌詞を見ると
Dearest, Darling, My universe
私を連れて行ってくれる?
この貧弱な想像力では
思いつかないところへ
遠くfrom Earth to Mars
必ず一緒に行ってくれる?
それがどこでも、長い間の寂しさ
その反対の言葉を探して
どんな失敗をして
私たちはこんなふうに一緒にいるのかな
この世から逃げ出してRun on
私と果てまで行ってよMy lover
悪い結末になるのかな道に迷う私たち2人
壊れるほど強く抱きしめて
もっと愛おしくキスをしてLover
Love is all Love is all
Love Love Love Love
結局それでも
どうして私たちはお互いなのかな
この世から逃げ出してRun on
私と果てまで行ってよMy lover
悪い結末になるのかな道に迷う私たち2人
あなたをしっかり目に焼き付けるから
もう一度穏やかに笑って
泳ぐように浮かび上がった
その日の夜のように
私と一緒に恐れずに沈んでくれる?
バラバラに私を壊すRuiner
君と一緒に悲しみたいMy lover
必然から逃げ出してRun on
私と果てまで行ってよMy lover
わざと並んで道に迷う私たち2人
壊れるほど強く抱きしめて
もっと愛おしくキスをしてLover
もっと愛おしくキスをしてLover
Our Love wins all Love wins all
Love Love Love Love
エスンとグァンシクの駆け落ちの歌にも思える。
親子については、エスンの母グァンネのエスンへの後頭部に目が付いている猛烈な愛情は思い出すだけで涙が出る。しょっちゅう霊体で現れるし、なんなら生まれ変わってエスンの詩集の出版を実現させるなんてすごすぎる。
エスンとグァンシクのクムミョン、ウンミョン、ドンミョンへの愛情も胸を締め付ける。クムミョンには溺愛気味だし、ウンミョンにはややドライでちょっとかわいそうになるけど、鉄の男グァンシクが子供たちを金銀銅にちなんで名付けたヤン一家の絆は強靭。
そして何と言っても、ヤン一家をからかいながらも何かと世話を焼いてくれるグァンネの仲間の海女のおばさんたち、こっそりと食料を供給してくれた万物センターの老夫婦、窮地に陥ったクムミョンを助けてくれた家政婦のおばさんなど、心を打つ隣人愛がこれでもかと繰り出されるのには、Love wins allと感じざるを得ない。
とても好きなのが、6話後半にある、名優オ・ジョンセ演じるエスンの継父ビョンチルがグァンネの死後結婚したミノクが困窮したエスンたちにお金を援助していたことがわかるシーン。
ビョンチルはとてもクズ男でグァンネの死後もエスンに子供たちの世話やキャベツ畑の耕作などを押し付けるようなダメ男なのだがどこか憎めず、ミノクもエスンと性格が合わないと言いながらもリスペクトの念があり何気に心を通わせる仲になる。
ビョンチルとミノクが引っ越しをする車上で、ビョンチルはエスンに苦労をかけたのは自分なんだからお前がお金をあげなくてもよかったのにと言う。
ここで、俺を愛しただけだ、と言えるこのふてぶてしいまでのビョンチルの自己肯定感と、
それに対して悪態をついて尻を叩くミノクとのやりとりもひとつの愛の表現形。