今までは生まれ変わりたい人物を取り上げてきたが、今回は生まれ変わりたいわけではないが、というか演じる役柄的には絶対生まれ変わりたくないけど、とても素敵な役者さんイ・ジュンギをご紹介したい。
イ・ジュンギの演技を初めて見たのは、IUとの共演作「麗〜花萌ゆる8人の皇子達〜」だったのだが、
とにかく彼の演じる皇子ワン・ソは、生まれてこの方知る主人公の中でもこれほど辛くて可哀想な人がいただろうかというほど気の毒な人物で、彼を含め登場人物みんながよかれと思って最善を尽くすのがことごとく裏目に出て最悪の帰結に至るという、ギリシャ悲劇やシェークスピアの悲劇に匹敵するスケールの悲劇の主人公だった。
辛いことだらけの中に差し込まれる心が通い合うシーンや束の間の幸せのシーンが心に刺さるOSTとあいまってそれはそれはかけがえなく描かれていて、より悲劇性が際立つという心憎い構造になっている。
ソ・ジュンギ演じるワン・ソは、皇子として生まれながらさる事情から両親に疎まれ、地方豪族に人質に出され、愛と承認に飢えながらそれを素直に表出することも出来ず、「狼犬」と呼ばれ冷徹で粗暴な人物として知られるようになってしまい、IU演じるへ・スと運命的な出会うことで、凍りついた心が次第にほどけていくのだが、2人が心を通わせるのも、なんとももどかしい経緯を経てるわけである。
そんな悲劇中の悲劇を演じるイ・ジュンギは、切れ長の目をしたなんとも端正でクールな顔立ちをしており、冷徹で峻厳な表情からふとこぼれる笑顔だったり、儚さやもろさをはからずも露呈してしまったり、とにかく人が経験するであろうあらゆるエモーションをこれでもかと追体験させてくれる。
そんなイ・ジュンギであるが、「悪の花」というドラマでもやはり影のある悲劇的な主人公を演じて観る者のハートを絞ってくれた。
この人は辛い役しか当ててもらえないのかと思っていたら、「無法弁護士」では軽妙で身体能力の半端ない正義の弁護士を演じてくれてホッとした。
彼は華やかアクションもそつなくこなすがダンスもすばらしく、
なんともしなやかな動きに見惚れてしまう。
そんなイ•ジュンギだが、「知ってるお兄さん」では、IUを目の前にしてデレデレしているのである。