耳の奥に違和感を残したまま起き上がると、どこかの遠くからモーター音が聞こえてきた。
大きな機械なのだろうか、低い音だ。どこで鳴っているのかわからない程に小さな音だ。
ぐるりと周りを見渡してもモーター音を出すようなモノは見えない。
音の低さから考えて恐らく大きな機械のはずだのに、その姿の見えない気持ち悪さに襲われた。
何かに騙されている気分だ。
胸のどこかをザラリとなでられた。嫌いな感触だ。
とにかく家へ戻ることにした。
軽くふらつきながら歩いていると耳の違和感は遠のくように消えて行った。しかしモーター音は後ろをつけて来るように鳴り続けている。
誰もいない道を、車とすれ違うこともなくモーター音を引き連れながらなんとか家にたどり着いて気がついた。
誰とも会わないというのはどういうことだ。車とすれ違うことすら無いということは何なんだ。
玄関のドアの鍵穴に鍵か入らない。サイズが違っていた。
もう一度ゆっくりと鍵穴にあてがってみても、やはり鍵穴の大きさが小さくなっていた。
仕事の帰り道、アスファルト舗装が2mだけ途切れているところで石ころをひとつ蹴飛ばす。
毎日の小さなクセだ。
何かの理由で狭い歩道の端の溝をいつか埋めてやろうと思ったのが始まりだったが、その理由が何だったかなんて覚えちゃいない。だけれどもいつまでも続けてる。
人生なんてそんなもんさ。
石ころを蹴飛ばすたびにココロに刻む。毎日のことだ。
昨日は大きなヤツに足が行って「あふっ」とマヌケな声が思わず出てしまう痛い目にあった。
今日はカエルだった。
蹴っ飛ばされて10秒後そいつは仰向けにひっくり返った状態のまま、頭だけをクリッと持ち上げて小さな視線を合わせると、小さな口を開いた。
「お前自分の姿見えてないんじゃねえの」
と口をきいた。
「オレの姿ってなんだよ」
「カァーっほんとうにわかってなかったのか。ダメだこりゃ」
ギュニュ
踏みつけてやった。
人生こんなもんだし
カエル生だってそんなもんさ。
静かに生きてりゃよかったのに。
毎日の小さなクセだ。
何かの理由で狭い歩道の端の溝をいつか埋めてやろうと思ったのが始まりだったが、その理由が何だったかなんて覚えちゃいない。だけれどもいつまでも続けてる。
人生なんてそんなもんさ。
石ころを蹴飛ばすたびにココロに刻む。毎日のことだ。
昨日は大きなヤツに足が行って「あふっ」とマヌケな声が思わず出てしまう痛い目にあった。
今日はカエルだった。
蹴っ飛ばされて10秒後そいつは仰向けにひっくり返った状態のまま、頭だけをクリッと持ち上げて小さな視線を合わせると、小さな口を開いた。
「お前自分の姿見えてないんじゃねえの」
と口をきいた。
「オレの姿ってなんだよ」
「カァーっほんとうにわかってなかったのか。ダメだこりゃ」
ギュニュ
踏みつけてやった。
人生こんなもんだし
カエル生だってそんなもんさ。
静かに生きてりゃよかったのに。
どうも時空の谷を通って来ちまったらしいなぁ
恐らく公園のベンチでひと休みしたときだろう。
昼めしを済ますともうやらなくちゃいけないことは何もなくなっていた。ほんとうに全て終わらせたか少し考えてみたが全てが完全に終わってしまっていた。夕食まで何をしていいやら軽く途方に暮れてみたがそれにはすぐに飽きてしまった。いつもなんとなく途方に暮れてみるけれども、何の理由もなく暮れてみているのだから長続きしない。いつもすぐに飽きてしまう。
夕食まではまだ軽く6時間はある。しかたがないので久しぶりに散歩に出た。
気持ちのよい天気だ。なんといっても職場とウチの往復ばかりの毎日だ。それ以外の道なんてあることすら忘れてしまうような暮らしだ。いかんなぁ。人間であることすら忘れていた。下手すると自分の名前すら忘れてしまいそうだ。
少し歩いたら野山公園に着いた。
名前の通り野原と小高い丘のある広い公園だが予想外にも誰ひとりいなかった。平日の昼間なんてこんなものなのかなとあまり気にしなかったが、そこからおかしかったのだ。
住宅街の真ん中にある広い公園に、春の穏やかな天気の公園に、いくら平日とはいえ野山公園に誰もいないということは何かおかしいのだ。ふだんなら犬の散歩の目白押し、30分で100種の犬を見ることができると聞いたこともある。
誰もいないというのはやはりおかしかったのだ。
今になって思えば風も吹いてなかった。車の音や街の喧騒もなかった。日の光だって差していたのかあやしい。あれはただ明るかっただけでお日様の光であったのか?野良犬も野良猫も蝶やテントウ虫もいなかったのだろう。
ただそこに公園はあって、思考の麻痺した俺はひとりノコノコ足を踏み入れ、たっぶりと時間をかけて丁寧にひと回りし、最後に丘の頂上に登り、ひとつだけあるベンチに腰掛けてしまったわけだ。
ひとまわりする間に何にも気付かなかったことがどうしてなのかわからない。頭が麻痺していたとしか考えられないが、誰にも会わないどころか、とにかく周りに動くものが全くなかったのだ。
ベンチに腰掛けると急に眠気に襲われるのは人の常。お昼寝タイムなのかと目を閉じた。瞬間、耳が例のツーンになった。高い山に登ったり車で長いトンネルに入ったときのあれだ。
当然驚いて目を開いて周りを見ると何も特に変わってはいなかった。しかしこのときに俺はこの世界に来てしまっていたのだ。
恐らく公園のベンチでひと休みしたときだろう。
昼めしを済ますともうやらなくちゃいけないことは何もなくなっていた。ほんとうに全て終わらせたか少し考えてみたが全てが完全に終わってしまっていた。夕食まで何をしていいやら軽く途方に暮れてみたがそれにはすぐに飽きてしまった。いつもなんとなく途方に暮れてみるけれども、何の理由もなく暮れてみているのだから長続きしない。いつもすぐに飽きてしまう。
夕食まではまだ軽く6時間はある。しかたがないので久しぶりに散歩に出た。
気持ちのよい天気だ。なんといっても職場とウチの往復ばかりの毎日だ。それ以外の道なんてあることすら忘れてしまうような暮らしだ。いかんなぁ。人間であることすら忘れていた。下手すると自分の名前すら忘れてしまいそうだ。
少し歩いたら野山公園に着いた。
名前の通り野原と小高い丘のある広い公園だが予想外にも誰ひとりいなかった。平日の昼間なんてこんなものなのかなとあまり気にしなかったが、そこからおかしかったのだ。
住宅街の真ん中にある広い公園に、春の穏やかな天気の公園に、いくら平日とはいえ野山公園に誰もいないということは何かおかしいのだ。ふだんなら犬の散歩の目白押し、30分で100種の犬を見ることができると聞いたこともある。
誰もいないというのはやはりおかしかったのだ。
今になって思えば風も吹いてなかった。車の音や街の喧騒もなかった。日の光だって差していたのかあやしい。あれはただ明るかっただけでお日様の光であったのか?野良犬も野良猫も蝶やテントウ虫もいなかったのだろう。
ただそこに公園はあって、思考の麻痺した俺はひとりノコノコ足を踏み入れ、たっぶりと時間をかけて丁寧にひと回りし、最後に丘の頂上に登り、ひとつだけあるベンチに腰掛けてしまったわけだ。
ひとまわりする間に何にも気付かなかったことがどうしてなのかわからない。頭が麻痺していたとしか考えられないが、誰にも会わないどころか、とにかく周りに動くものが全くなかったのだ。
ベンチに腰掛けると急に眠気に襲われるのは人の常。お昼寝タイムなのかと目を閉じた。瞬間、耳が例のツーンになった。高い山に登ったり車で長いトンネルに入ったときのあれだ。
当然驚いて目を開いて周りを見ると何も特に変わってはいなかった。しかしこのときに俺はこの世界に来てしまっていたのだ。