「南の子供が夜いくところ」幻想的な連作短編 | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

南の子供が夜いくところ/恒川 光太郎

幻想的:笑2笑2笑2笑2 /5
面白い:151515 /5


恒川光太郎さんの
「南の子供が夜いくところ」を
読みました。



『南の子供が夜いくところ』
 タカシは家族との旅行中で出会ったおねえさんに
 連れられ、遠い島で暮らすことになった。両親は
 別の場所で働いていると聞いたが、タカシは不安だった。

『紫焔樹の島』
 赤い実は食べてもよいが、白い実は食べてはならない。
 ユナの村では約束事が守られ続けていた。
紫焔樹のある聖地へ
 行けるスーに認められ、ユナも果樹の巫女になる。

『十字路のピンクの廟』
 町の十字路にあるピンク色の廟が気になり、住民に聞き込みを
 開始した。どうやら学校が関係しているようだが、子どもたちは
 口を閉ざしていた。

『雲の眠る海』
 ペライアの酋長の甥であるシシマデウさんは祭の翌日にコラの
 襲撃を目の当たりにした。背後にスペイン人がついているコラ軍は
 強力で、シシマデウさんは一人カヌーに乗りテオスへ逃れた。

『蛸漁師』
 息子は、夜間に崖下に落ちて死んだ。その息子が死んだ場所で
 もとからいた蛸漁師に仕事を譲ってもらい、暮らしていたが、岬の
 崖の中に部屋が埋まっているのを発見してしまう。

『まどろみのティユルさん』
 男はずっと同じ場所で埋まっていた。よく晴れた午後、少年が
 男の前に現れた。彼はタカシというらしい。そして翌日は、ロブという
 友達を連れてきて、ジュースを飲ませてくれた。

『夜の果樹園』
 乗るバスを間違えたかもしれないと思ったが、そのまま終点まで
 乗ってしまった。降りたバス亭から明かりのある方へ歩き、初めに
 見つけた家に助けを求めると、連中は自分を犬のように扱う。



恒川作品は5作品目です。

またまた現実と幻想があやふやな
感じの短編集でした。
好きなやつです。

すべての短編が
ひとつの世界の出来事のように
リンクしています。

「まどろみのティユルさん」が
特にお気に入りでした。
長い間ひたすら埋まっていた男の人が
昔語りをはじめます。

この長い時の流れを感じさせる展開、
なんかいいですねー。
ロマンですな。

影の主役といった感じの
120歳の「おねえさん」ユナも
長ーい間同じ姿のままなのです。

借金を苦に逃げ出したタカシの家族と
長い時を渡る不思議な存在ユナ、
双方が雰囲気の違う様々な物語の中を
ゆったりと横切っていく。

――って、かっこよくいうと
そんな感じでした。
おもしろかったですよ。