「九杯目には早すぎる」ミステリを堪能できる短編集 | 本の話がメインのつもり

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気まぐれに選んだ本を読みながら、何となく見つけたジャンクな菓子ばかり食べます。

九杯目には早すぎる (FUTABA・NOVELS)/蒼井 上鷹

叙述トリック:ワクワクワクワク /5

登場人物がおもしろい:♪♪♪ /5

1冊でミステリ堪能:GOODGOODGOODGOOD /5



蒼井上鷹さんの「九杯目には早すぎる」を読みました。


前から蒼井さんの作品を何か読んでみたいと思っていたところ

鈴と空さんのブログで拝見し、面白そうだったので早速……



『大松鮨の奇妙な客』

 ミステリ好きの蓑田は妻の友人の夫の浮気調査を快諾した。

 早速勢い込んで尾行していると、男は鮨屋で奇妙な行動を

 とり始めた。


『においます?』(ショート・ショート風)

 マンションの管理員・宋は伊上の服に付いた臭いから

 どこへ出かけていたのかを見事に当ててしまう。

 そこまでは伊上の予想通りだったが…… 

 

『私はこうしてデビューした』

 相尾は自身のブログでミステリ小説を発表していたが、

 熱烈なファンである狛江に合作を迫られ、ストーカーまがいの

 メール攻撃に合っていた。


『清潔で明るい食卓』(ショート・ショート風)

 新婚家庭の朝食に並んだのはギネスを使ったパンと

 卵とソーセージそして飲み物はギネス。

 思わず酒好きの飼い猫メルにもパンを与えてしまう。


『タン・バタン!』

 串本は気に入っていたバー「サード」へ行く事が

 いつしか苦痛になっていた。そこで偶然に出会った

 小野田という馴れ馴れしい男が原因だ。


『最後のメッセージ』(ショート・ショート風)

 ストーカーを撃退するために葵にそっくりで合気道の

 有段者である女を連れてきた三谷。上手くいくはずだった

 作戦はしかし”裏切り”によって殺人事件へと発展する。


『見えない線』

 バーテンのバイトをしているノリオは客としてやってくる

 チエに思いを寄せていた。チエに薦められた病院へ

 行ってみるみると、夜にも関わらずそこにはチエの姿が……


『九杯目には早すぎる』(ショート・ショート風)

 「九杯目に早すぎるよ」バーテンと客の会話には実は

 深い意味がある。バーテンが酔い覚ましにと差し出した小瓶の

 中身はとんでもないものだった。


『キリング・タイム』

恋人のみのりとデートの約束をしていたのに、

 運悪く近所に住んでいる課長につかまってしまった。

 社内でも煙たがられている課長に強引に飲み屋に連れていかれ……



初めての蒼井さんの作品でした。

おもしろかったです。


いろいろなテイストの短編が入っていて、いろんなタイプの

ミステリが堪能できます。

間に挟まるように収録されているショートショートが

口直しのような効果があってこの本そのものを楽しめました。


お気に入りは『タン・バタン!』でしょうか。

何だか印象に残ります。

ブラックなユーモアが効いていてシュールでした。


主人公・串田をとことんうんざりさせる

小野田のキャラクターが面白いです。

人の話の論点を全然理解しない小野田の的外れな発言は、

とにかく笑えます。


他の作品も”変人”さんのキャラクターがおもしろいものが

多いように感じました。

『私はこうしてデビューした』で人の言葉をすべて自分の

都合のいいように変換させる狛江もすごい人”個性”です。


叙述トリックがふんだんに使われていますが、

どうもそこはノリきれなかったかも……

叙述トリックが来る、と予想できるとその時点で疑心暗鬼に

なっちゃうので短編でちょこちょこ使われちゃうと

やっぱり分かっちゃいますね。


そこを差し引いても、楽しませてもらいました。