雰囲気重視: /5
ちょっと難解: /5
ファンタジック食べ物の魅力: /5
長野まゆみさんの「カルトローレ」を読みました。
天空をゆく《船》で暮らす集団の一族であった私。
あるとき《船》が航行不能になり地上へ降り、
救済委員会の訓練を受け沙地(すなち)の広がる土地へ
住む事を許された。
そして組合からの奨学金をうけ、「Cartorolle」と記された
109冊の日誌の調査を依頼される。
ワタと呼ばれる水脈を探す能力のある少年、
「管理局」に詰めている《船》出身のコリドーと
過ごす私の日々。
そして薄れつつある《船》での生活と
109冊の日誌の謎に迫る。
丁寧に作りこまれたファンタジーほど、その世界に入り込む
のに時間がかかる気がします。
ふとそんなことを思い出した作品でした。
まさに長野さん独自の世界。
言葉の違いや、習慣、食べ物、文化まで結構細かく
作り込まれていたのでちょっと難解です。
しかしその世界はとにかく幻想的。
細部まで理解できたかと言われると疑問が残りますが、
曖昧さのある不思議な雰囲気を満喫できます。
そしてファンタジーっぽい食べ物が魅力的でした。
レモネード売りの動作を描写した文章や、
ワタの作ったレモンパイ、チーズ入りのお粥、
豆のゼリーよせ、香草のパンなどなど
ファンタジックすぎて全然馴染みがない食べ物まで
かなりおいしそうに描かれています。
食いしん坊も嬉しい仕様になっていました。
全部の謎を理解しないとスッキリしないという方には
オススメできない感じでしたが、雰囲気重視派には
これほどのものはないかも、でした。