これまで様々な視点があることを見て来ました。では、この認知の
差異はどうやって埋めていくのでしょうか。
一つの事例がSFの古典の中にありました。
カーク船長が率いるスタートレックの物語は、「23世紀、地球から
は貧困や戦争などが根絶されており、偏見、差別も存在しない、
ある意味で理想的な世界と化している。人間は富や欲望ではなく
人間性の向上を目指して働いているという設定」だそうです。人間
性の向上を目指している地球人のリーダー像はどうなっているの
でしょうか。
ある惑星の2つの民族の争いに乗り出したカーク船長。惑星を
支配している皇帝を船に呼び込み和平調停を提案します。さらに、
惑星を追い出され盗賊と化している民族をなんとか説得し、和平
調停のテーブルにつかせます。
皇帝は「過去は水に流し、土地を与え、議会議席を一つ権利と
して付与」を提案します。盗賊達は皇帝を疑い続けます。
「惑星に行ったら全員とらえられるのではないか」
「そんなことはしない」
そして最後に「議席を3つと要求します」と盗賊達が要求すると、
皇帝は「3つはありえない」と声高に叫ぶのです。そこでカーク
船長がファシリテーターとして登場します。
「皇帝、あなたのお気持ちはよく分かりますが、もしあなたが、
彼らの民族の長だったら、議席がいくつ欲しいというでしょうか?」
皇帝は、悩んだ上で議会3つの付与を承諾します。
このプロセスは、ファシリテーションにおけるリフレーミングと
呼ばれています。ある枠組み(この場合は皇帝の民族の視点)
で捉えられている物事の枠組みをはずして、違う枠組み(盗賊
達の視点)で見ることを提案することを指しています。人間性の
向上を目指している地球人のリーダー像というのは、まだ、紛争
に明け暮れている民族に対して武力だけではない話し合いに
よる高い紛争解決能力を持っているという設定なのでしょう。
SFは、技術を織り込んでいるだけでなく、心理学の考え方も
多く組み込まれているように見受けられます。そのような目で
SFを読むとあなた自身の中にもいろいろなリフレーミングが
起きるかもしれません。
注) リフレーミング
ある枠組みで捉えられている物事の枠組みをはずして、違う
枠組みで見ること。元々は心理療法(家族療法)で使われて
いた用語である。例えば、悲観的に「お財布には1000円しか
残っていない」と考えるか、枠組みを変えて「まだ1000円も
残っている!」と考えることである。