1月に投稿したCorvette, オートサロンの記事に引き続き何を書くか。このところ似たような書き出しが続いているが、新年を迎えたことだし新しいジャンルに踏み込んでみようということで

お届けするのはHondaの軽シリーズ N Series唯一の商用車 N-VANである。私以上にHonda嫌いのMr. マイペース, ドリフト番長の2人はこのチョイスにきっと眉をしかめるのだろう。まして私たち3人は終了から10年近く経った今でもなお、スバル自身が生産したサンバーこそが軽商用車の究極の姿であると信じている。


このあたりはいつかMr. マイペースがこの記事に触発されてサンバー愛を語るブログを書くと思うのだが、彼の凄まじいサンバー愛にはいくつものエピソードがある。まだ私たち3人が地元にいた頃、私と2人でBMW, Audiとドイツ車を乗り倒した帰りにスバルディーラーでディアスワゴンの試乗車に乗りたいと言いだしたのだ。到着するやいなやセールス顔負けの知識を披露して周囲を圧倒し、運転席に座ると助手席に乗る私が唖然とするペースで細いワインディングを駆け抜けてみせた。普段遅いことが信条であるあのMr. マイペースがである。


元来重心の高いクルマのロール感が私は好きではないのだが、その時のサンバーの挙動ときたら不安に感じる私をよそに容易に破綻しようとしない。道中私は彼にずっとステアリングを預けて助手席に陣取っていたが、この魅力はズバリ足湯のようだと語ったことは今でも鮮明に覚えている。

ただ、そんな私がN-VANをテストしようと思ったのはこのクルマがかなり本腰を入れて開発された匂いを感じたからだ。そもそもHondaNシリーズはグループ会社の八千代工業での生産から、本田技研工業自身が生産までも手がけるモデル。Hondaの軽商用車といえばACTYのトラック&バンがあるわけだが、このN-VANの登場を契機にACTYの生産を打ち切るという。これじゃ今までHondaの軽の生産を請け負ってきた八千代工業の仕事がS660の生産だけになっちゃうじゃんと思って調べたら、八千代工業は自動車部品の製造だけに特化しており20184月に完成車事業を本田技研工業へ譲渡していた。しばらくは八千代時代から稼働する四日市で生産を続けるというが、ACTYの生産が終わったらかつてのNSXS2000のように生産拠点が移管されるのだろうか。


余計な話が長くなったので、一旦N-VANに話を戻そう。このクルマが軽トラのニーズまでも引き受けられるか、という点については使い方次第とも言えるのでなんとも言えない。ただ、このクルマの最大のウリは少なくとも新たなマーケットを開拓できるポテンシャルを持っている。それは

運転席以外のシートを倒すと正真正銘のフラットな荷室が誕生するのだ。そこに左側はピラーレスドアを組み合わせることで、2つのドアを開ければテールゲートよりも大きい開口部を作り出すこともできる。荷物を積むという人にとってはこの荷室容量と大開口ドアは大きな魅力である。しかも、このフラットフロアはディーラーオプションのボードを追加することで車中泊スペースとして活用できる。休日のドライブでは車内で昼寝することもある私にとってはこの装備は見逃せない。


とはいえ、ずっと寝ているわけじゃないから車中泊に使える大空間はあくまで「運転して楽しい」という感覚があって私の食指が動き始める。実は、その点においてもN-VANは気になる装備があったのだ。

そう、軽商用車として考えれば当たり前の3ペダルマニュアル。ただし、そのシフトノブに刻まれた数字を見てほしい。ミッションの段数は5速ではなく6速なのだ!Nシリーズとしては初搭載となるマニュアルだが、この6MTのベースはS660N-VANS660より先に誕生していたとしたらこの設定はあり得ないんじゃないかと思う。


そんな注目のマニュアルの話をする前に、販売のメインとなるであろうNA CVTモデルの印象について。動力性能そのもの自体はタウンスピードでは必要十分。パワートレインでいうとCVTのラバーバンドフィールが強めというクセは以前乗ったことのあるN-ONEの印象に似ている。ただ、それ以上に気になるのがドライビングポジション。真横から見た時のステアリングの角度が立っていて、ステアリングを抱え込むような姿勢になってしまう。乗り心地がもう少ししなやかならという気持ちもあるが、フル積載時の姿勢を考慮したサスペンションと商用車用タイヤゆえの限界はあるだろう。たしかなことは、これもかつてのサンバーのような商用車というエクスキューズはほとんど感じさせない。

これが3ペダルMTだとどうなるのか。ペダルの踏力は軽めながらもダルなフィールはあまり感じられず、マニュアルの基本を知っていればエンストすることなく乗りこなすことができる。これも6速とギヤ数が増えたことで各段をクロスレシオにすることができた恩恵なのだろう。そして、CVTのベルトから解放されるとこのNAエンジンが意外と活発!市街地で流れをリードするくらいの運転でもストレスを感じずに走ることができるだろう。


それ以上のパワーが欲しいというのであればターボの出番となるわけだが、このパワートレインには長所と短所がある。

まず長所は低中速トルクが太く、高い音で唸らせずとも加速していく力があること。それ自体は嬉しいのだが、短所はトランスミッション。ミッションの組み合わせがCVTしかなく、あのラバーバンドフィールがつきまとうのである。エンジンパワーがあるだけに幹線道路での中間加速などはNAのマニュアルでがんばっても勝てないと思うが、自分の狙ったとおりにクルマが走らないというのはやっぱりストレスになる。

ということで印象をまとめよう。パワートレインの組み合わせに関しては気になるところはあるものの、私の想像以上によく考えられたクルマなんじゃないかと思うに至った。商用車という枕詞があるとその割に高く思える価格も気になるが、”Honda Sensing”と呼ばれる先進安全機能をレスオプションにしない限りは全車標準装備にしたうえでの価格である。細かいことを言うと、これでN-WGNに採用したEPBとブレーキホールド機能がつけばなぁ。もちろん、その時はターボ MTの設定も合わせてお願いしたい。


ここまで書いておけばきっとMr. マイペースのスイッチが入るはずww