【今週のワンポイント-27】和田殿と13人 | 人生竪堀

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TEAMナワバリングの不活発日誌

 僕(西股)は、歴史的な事象を考えるとき、時間の経過と世代の問題を頭に入れて読み解くよう、心がけている。ある事件と、ある事件との間に、どのくらいの月日が流れているか。事件にかかわった人たちは、どの世代に属しているのか、みたいなことだ。

 このワンポイントの第15回でも一度書きましたよね。北条時政・三浦義澄・土肥実平・千葉常胤らが、旗挙げ当初から頼朝を支えた「第1世代」であるのに対し、義時や三浦義村・和田義盛・畠山重忠は「第2世代」の代表。

 また、第25回で説明したように、頼朝の旗挙げから頼家に交替するまで、ほぼ20年がたっている。オッサンははジジイに、若者はオッサンになりつつあるということだ。

 そのつもりで「13人」のメンバー構成を見てみると、ほとんどが「第1世代」だとわかる。要するに、頼朝を支えてきた世代である。この世代は、シビアな言い方をするなら既得権益層でもある。そもそも13人の仕事は、御家人たちの訴えをどう裁くか決めることだが、訴訟とは権益が絡む案件なのである。

 そんな中、わずかに「第2世代」から入っているのが北条義時と和田義盛。政治家タイプでも実務家でもない義盛がメンバー入りしたのは、侍所別当という要職に就いたから。元はといえば、頼朝一行が房総に逃れて再挙を図ろうとしたとき、義盛が「オレを侍所の別当にしてくれ!」と言いだして、頼朝がノリでOKしちゃったものだ。

 おかげで義盛は、北条時政・三浦義澄などの「第1世代」と肩を並べて、宿老の一角に食い込むこととなった。義盛本人も、まさかこんなことになるとは思っていなかっただろう。ほら、キャッチコピーにあったでしょ、「予測不能のエンタテインメント」って。

 そして、鎌倉殿が交替したということは、御家人たちもいずれ世代交代してゆく、ということ。これは、ワンポイントの第24回で説明したとおり。結果として、義盛と義時が「13人」に入ったことが、政権幹部の世代交代を誘発してゆくことになる。

 というわけで、ここから始まる権力闘争は、「誰々vs.誰々」という家や個人の対立であると同時に、「第1世代」→「第2世代」へという世代交代の物語でもある。そんなことを頭の隅に入れながら、ドラマを楽しんでほしい。

 

(西股総生)

 

《ワンポイントイラスト》

 

 

侍所別当と、名乗ってよかった和田義盛。鎌倉殿の13人入り!

 

(みかめゆきよみ)