ティーチみやぎの「活動ブログ」|自閉症の子どもの自立支援

ティーチみやぎの「活動ブログ」|自閉症の子どもの自立支援

宮城県仙台市を中心に、ティーチプログラムを活用して自閉症の子どもの自立支援を行っております。アメブロには、日々のティーチみやぎの日々の活動を記録して参ります。

 

 東北、仙台、薫風が心地よい季節なのに、毎日落ち葉掃きで忙しい。なぜなら我が家の生け垣は全てサザンカ、しかも植えている木がツバキ、モッコク、カナメモチそしてカクレミノと常緑広葉樹が大半を占めている。秋のイチョウ、コナラやモミジなどの落葉樹の落葉は超ド派手で、私たちを落ち葉掃きに奔走させる。

 一方、ツバキなどの常緑広葉樹は、サクラなどの落葉樹の美しい花が終わった青葉の頃、ひっそりと新しい枝葉を伸ばすと同時に古い葉を落とし始める。秋に見られる一斉の落葉ではなく、パタ、パタと何日もかかって古い葉を落とす。その様子は実に奥ゆかしい。

 そんなわけで我が家は毎日落ち葉掃きで忙しい。新旧の葉っぱの交代で有名なのが正月飾りに使われている常緑のユズリハ。

ユズリハの古葉は3年越しに新葉と入れ替わる。新葉が出てきてから古い葉が落ちるので、まるで代を譲るかのように見えるのでユズリハと名前がついたと言われる。

 樹木の花を見てみると、落葉広葉樹にはウメ、モモ、サクラ、リンゴ、ハナミズキやシャクヤク等々人の目を引く美しく見事な花が数え切れないほど多い。これに反して常緑樹はというと、ツバキ、サザンカ、キンモクセイ、タイサンボクやキョウチクトウと、数えきることができるほど美しい花は少ない。

 落ち葉掃きをしながら、パタ、パタと散っていく常緑広葉樹のことを考えてみた。

        ブナの森に聴く

 

  私の住む東北地方には、ブナの原生林そして世界自然遺産

 で有名な白神山地がある。そのブナについてドイツのペータ

 ー・ヴォールレーベンはその著書『樹木たちの知られざる生 

 活~森林管理者の聴いた森の声』の中で「ブナの木は仲間意

 識が強く、お互いに養分を分け合う。弱った木を見捨てない」   

 「樹木には驚くべき能力と社会性がある」と言っている。今

 までの既成概念では植物の世界は競争社会で、弱い木、病気

 になった木は誰にも助けてもらえず、病虫害の攻撃で衰弱し

 枯れてしまい、その空間と光は他の木に奪い取られてしまう、

 というのが常識だった。

  しかしドイツのブナの原生林では違っていた。一本一本の

 木同士が情報伝達を行っている。それは地中の菌類(きのこ

 の仲間)が根と根の間に入り込んで、インターネットの光フ

 ァイバーのような役割を担い、細い菌糸が縦横に走り、想像

 を絶するほどの密なネットワークを築き上げている。木と木

 が菌類を通してお互いに養分を分かち合っている。

  もしブナの原生林で弱い木が次々枯れていくと、林がまば

 らになって、その空間に光や風が直接入り込み、森林特有の

 湿った冷たい空気が失われてしまう。そんな空間が所々にで

 きると、今まで元気だった木も病害虫の被害を受け、時には

 大風で倒れてしまう。

  しかし丈夫な木、病気になった木などが助け合って、いろ

 んな木が密集していれば、強風がきてもみんなで集まって風

 を避けることができる。このようにブナの森は無条件で助け

 合っている。

  ただし人間の手で植林された中央ヨーロッパの針葉樹など

 の林ではそうはいかない。人工林では地中のネットワークが

 広げられないらしい。

  私は今まで3回ほど白神山地に行き有名なマザーツリー

 (樹齢約400年)に触れてきた。今度もう一度行って、天然

 の森の声を聴いてみたい。

 

 

 

本の紹介 『船を編む』

 

 以前ある自閉症の研修会で、三浦しをん著『舟を編む』光文社(2013)に出てくる青年が話題にのぼり、そのことが気になりつつ、時が流れてしまった。今回たまたま同作品の映画のDVDを大崎市の図書館で見つけ、ようやく観ることができた。この感動を弾みに本を買い求めたところ、一気に読みきった。『舟を編む』は2012年の本屋大賞に選ばれ、映画化もされたので多くの人が知っているだろうが、簡単なあらすじは以下の通り。

主人公は大手総合出版社の馬締(まじめ)光也。対人関係、コミュニケーションが苦手で、生活全てにおいて不器用、ただ本好きで真面目だけの人間、女性社員からは「キモい」とやゆされ、所属の営業部では存在すら忘れられるような人物。趣味は膨大な量の本を読む以外は「エスカレーターに乗る人を見ること」と、とても変わっている。

しかしひょんなことで「大渡海」という辞書を編纂するという野望に燃えるが、窓際族の部署、辞書編集部へと異動となる。ここは、辞書作りには一つの言葉をいかに簡潔に、的確に説明するか、という言葉を徹底して追究し、一つの言葉も漏らさない根気強さが必要とされる。そして個性豊かな仲間と関わりながら仕事が始まる。いつしか馬締の言葉へのこだわりが、言葉に対する鋭い感覚として活かされ、超真面目さは言葉調べでは何種類もの辞書をめくりつづけ、指紋がすり減るほどの仕事一徹、どんどん辞書作りにのめり込む。

 このような不器用な馬締とは正反対で何事も要領よくこなす同僚の西岡正志 。彼は辞書に魅入られた人を、自分では理解できない人種と考えていた。しかし次第に馬締らの辞書への打ち込み方を見て、胸が苦しいほどの輝きにみちている!と思うようになる。ある時、小刀で鉛筆を削っている馬締の不器用さを見て代わって削ってやったりする。最後には「すべてをかけて辞書を作ろうとする仲間を、会社の同僚として、渾身の力でサポートする」と自分の職業観を180度°転換させるところで宣伝広告部へ異動していく。

 代わりにファッション誌編集部から異動してきた入社3年の岸辺みどり。13年経っても刊行できていない辞書を追い求めている変わった人たちと、全く知らない分野でどう仕事をしていくか分からないでいた。そこで主任になった馬締の元で何となく働いているうちに、馬締が製紙会社の社員と辞書で使う特注紙をめぐって、専門家同士でコミュニケーションし合う姿の真摯さに胸を打たれる。あるいは馬締から重要な仕事を任され、それを自分一人で解決し、仕事の醍醐味を味わう。こうして岸辺も又いつしか辞書作りに夢中になっていおく。このように何事にも不器用でマイペースな馬締と一緒に仕事をしていくうちに、同僚たちの仕事への意気込みが変わっていく、生き方も変わっていく。このようなストーリーに馬締や西岡そして岸辺ら若者それぞれの恋愛や結婚がコミカルに描かれ、物語を盛り上げている。

これは自閉症が主人公の名作、映画『レインマン』の中で、二人旅を通して、お金が全ての弟チャーリー(トムクルーズ)が、常に我が道を行く自閉症の兄レイモン(ダスティ・ホン)によって大きく変わっていくのに通じる。『舟を編む』『レインマン』二つとも自閉症の主人公と一緒にいることによって、いつの間にか周囲が変わっていく。自閉症の存在を世の中に問う感動的な物語である。

 もちろん自閉症の人全員が秀でた能力をもっているわけではない、いやもっていない方がずっと多い。しかし自閉症の人一人ひとりに自分の中に凸凹があるわけで、他者と比較しないで、少しでも突出した(得意な)能力を伸ばすこと。その人のマイナス面(凹)を修正するのではなく、プラス面(凸)を伸ばすということに力点を置くべきであろう 。したがって自閉症に見られるこだわりの強さ、好きなことへのすごい集中力、これらを立派なプラス能力ととらえたい。

 『舟を編む』を読んで、自閉症のままで自分らしく生きていける人が増えていって欲しい。できれば隠れ自閉症(カモフラージュ)として必死で生きている人や、その家族そしてその周りにいる人たちにもお勧めしたい一冊である。

 


 [久鈴1]

 [久鈴2]