日本国においては、日本銀行が、通貨を独占的に発行する権限を与えられている。

これは、間違いのない事実であり、誰もが知っていることである。

しかし、日本銀行が、一体どのように通貨を発行しているのか、と言う点になると、多くの人々が、あまりにも何も知らなさすぎるし、知ろうともしない。
日銀は、独占的にお金(日本銀行券)を発行するが、しかし、日銀は、自分の力だけでお金を発行することはできない。

それはどういう意味かと言うと、日銀は、一般企業と同じ株式会社であり、一般企業と同じように、バランスシート(貸借対照表)に基づいて業務を遂行するからだ(日本銀行法第52条)。

バランスシートは、表の左側に資産を記入し、右側に負債と純資産を記入することになっている。
そこで、日銀は日本銀行券(お札)を発行する場合は、右側に日本銀行券いくら、と記入し、左側には日本銀行券と同額の資産を記入しなければならない。

日銀は、バランスシートに以上の記入をしなければ、日銀券を発行することは絶対にできない。なぜなら、日銀は株式会社であり、株式会社である以上、バランスシートに基づいて、業務を行わなければならないからだ。

これを、もう少しわかりやすく述べると、日銀は手形や債券などの資産を、買い取るのと引き換えに、それと同額の日銀券を、発行することができると言うことになるのだ。

もっとはっきり言うと、日銀は、ただ日銀券を刷って、これをそのまま発行することはできないのだ。
これほどの強い制約を受けて、日銀は、ようやく通貨を発行しているのだ。

さて、誰かに助けてもらわなければ、お金を発行することができないと言ったが、それは、まず、世の中の誰かが手形や債券を発行してくれなければ、日銀は買取る資産が何もないので、お金を発行することができないと言うことだ。

しかし、手形や債権(主に社債など)は、返済期日があるので、いずれは、日銀が買い取った手形や債権は、必ず返済される。
手形なら半年、社債でも5年か10年程度で返済される。そうすると、せっかく日銀が発行したお金(日銀券)は、再び日銀に戻ってくることになる。
これでは、せっかく日銀がお金を発行しても、何にもならない。
日銀と世の中とのあいだで、お金が出たり入ったりするばかりで、世の中全体のお金の量は、いつまでたっても増えようがない。

しかし、国全体の経済は、どんどん成長し、生産能力が向上し、生産量も増大する一方であるので、世の中全体のお金の量は、必ず増えなければならない。
もし増えなければ、経済は停滞し、成長も止まってしまうだろう。

そこで、日銀が、大量のお金を発行できるように、誰かが大口の債権を発行しなければならない。
しかし、民間の企業や個人には、そんなことは、やすやすとできるものではない。

そこで、日本国内で唯一、大口の債権を発行することができる機関である政府が、毎年のように大量の国債を発行して、日銀が買い取ることができる資産を、生み出しているのだ。
なおかつ、政府は発行した国債は、ほとんど返済しないので、日銀が買い取って発行したお金は、再び日に戻ってくることはない。
これは、日銀にとっては非常に都合の良いことだ。

政府は、借金をするために、国債を発行しているのではない。世の中のお金の量が増えて、経済が成長するために、国債を発行しているのだ。
お金のもとになる国債を発行しているのだ。
なぜなら、日銀はバランスシートに基づいて、お金を発行するので、大口の資産がどうしても必要だからだ。
もし、日銀がバランスシートに縛られずに、お金を発行できるのなら、言い換えると資産を買い取らずに、お金を発行できるのなら、政府は国債を発行する必要など、全然ないのだ。

そうすれば、現在あるような、1千兆円を超えるような国の借金など、生まれることもなかったのだ。中央銀行である日本銀行に、お金を発行できる独占権を、与えてはいるが、しかし、その中央銀行の実態は、民間企業と同じ株式会社のレベルにあって、バランスシートに縛られているのだ。
そのために、政府に国債を発行してもらわなければ、お金を発行することができないと言う、仕組みになっている。

そういう仕組みを、人間がつくっておいて、国の借金が一千兆円を超えてしまっている、大変なことだ、増税を貸して、歳出を厳しく削減しなければならないと、国会議員も、学者も、マスコミも盛んに主張する。
しかし、これはとても愚かなことである。この人たちは、物事の原因、成り立ちは、どうなっているのかを、全然考えようとせずに、ただ目の前にある1千兆円の借金だけを見ているのだ。

だから、日本は20年以上も、国内総生産(GDP)は横ばいのままで、全く上昇しないのだ。
これは、世界に例のない、日本だけの現象である。