お金は、2段階に分けて、発行されます。
第一段階は、中央銀行である日本銀行が、手形や債券などの資産を、買い取るのと引き換えに、お金(日本銀行券)を発行します。
発行する相手は、金融機関(銀行、保険会社、証券会社など)に限定されます。
日銀は、一般の企業や個人とは、取引をしません。したがって、日銀は、金融機関以外に、直接お金を発行する事はありません。
次に、第二段階として、日銀から日銀券の供給を受けた銀行(預金取扱機関)が、その日銀券(現金)をもとに貸し出しをします。
この場合、貸し出し相手は、企業や個人、自営業者、団体などの一般社会(民間)となります。
以上、お金の発行の仕方は、非常にややこしいのですが、2段階に分かれているのです。
もう一度、簡略化して説明すると、日銀が、銀行に日銀券を供給します(第一段階)。次に、銀行がその日銀券を、貸し出しと言う形式によって、一般社会に供給します(第二段階)。
実にややこしい、お金の発行の仕方です。
なぜ、国(政府)が、直接一般社会に向かって、お金を発行すると言う方法を取らないのでしょうか?
その理由は、「昔から、そーゆー発行の仕方をしてきたから、今もそのやり方を、そのまま続けているのに過ぎない」と言うことなのです。
まるで笑い話のような、お話です。
で、その発行の仕方が始まったのは、いつかと言うと、今から90年前の、1931年です。
この年に、日本は、金本位制を止めて、管理通貨性に変わりました。
その管理通貨制度が、そのまま現在も続いているのです。当時としては、非常に画期的な、通貨発行制度だったようですが、今から考えると、金本位制よりは、少しマシになったと言う程度、に過ぎないのですが。
で、90年後の現在においては、もはや、あまりにも古臭い通貨発行制度となって、一国の経済状況が、ガタピシと、不協和音を立てるようになっています。
なぜなら、管理通貨制度は、世の中のお金の量が、極力増えないように、できているからです。
第一段階では、日銀は、手形や債券などの資産を買い取らなければ、お金を発行することができません。
しかし、手形や債権には、返済期日があるので、いずれ返済されます。返済されれば、日銀が発行したお金(日銀券)は、再び日銀に戻ってきます。
これでは、日銀と金融機関の間で、お金が行ったり来たりするばかりで、お金の発行額は、増えようがありません。
次に、第二段階です。
銀行は、日銀から供給されたお金を、世の中に貸し出します。
この時、世の中が、銀行からたくさんお金を借りれば、借りるほど、世の中のお金の量(マネーサプライ)は増えます。
その反対に、世の中が、あまりお金を借りなければ、お金は増えません。
経済が好況であれば、世の中(企業や自営業者、個人)は、たくさんお金を借りて、設備投資や、新しい事業を、始めようとするでしょう。
しかし、経済状態が良くなければ、世の中は、なかなか、お金を借りようとしません。
したがって、世の中のお金の量(マネーサプライ)は、増えません。
日本は、最近の20年間は、かなりよくない経済状態が続いていて、しかも、デフレから抜け出せないままです。
当然、企業、自営業者は、銀行からお金を借りなくなっています。銀行からお金を借りなければ、世の中のお金は増えません。
お金の発行は、2段階に分かれていますが、第一段階では、ほとんどお金が増えない仕組みになっています。
そして、第二段階では、現在日本は、経済状態が悪いので、やはりお金は増えません。
結局、2段階とも、お金が増えないようになっているのです。
それで、どうなるかと言うと、お金が増えなければ、サラリーマン、労働者の賃金は増えません。現実に、この20年間、賃金は横ばいか、下がり気味です。
また、お金が増えなければ、企業、自営業者の利益も増えません。(一部の優良企業だけは、内部留保を抱え込んでいますが)
結局、お金の量が増えなければ、経済は、どうしても上向きにならないのです。
しかし、ここで、反論が出てきます。「いや、そんな事は無い。マネーサプライ統計を見ると、この20年間でも、世の中のお金の量は、そこそこ増えているではないか。間違ったことを言うな。」となるでしょう。
いえいえ、ここには[からくり]があるのです。[ウルトラC]があるのです。
それこそが、政府による国債の発行です。これによって、ようやく、世の中のお金の量が、増えているのです。
まず、第一段階において、日銀は、手形や債権を買い取るのと引き換えに、お金を発行します。しかし、この時、手形や債権が返済されては、何にもなりません。
せっかく日銀が発行したお金が、再び日銀に戻ってしまうからです。その点、国債は好都合です。
なぜなら、政府は、国債をほとんど返済しないからです。返済期日が来ても、借り換えを繰り返して、結局、ほとんど返済する事はありません。
だから、発行済み国債、すなわち国債残高は、たまりにたまって、1千兆円にもなっているのです。
こんな都合の良い事はありません。もし、政府が国債をキチッ、キチッと返済していれば、日銀が銀行に供給するお金は、全然増えないままになったでしょう。
次に、第二段階において、政府が発行した国債のうちの、かなりの額を銀行が買います。
これは、銀行の貸し出しと同じなので、銀行が買った額だけ、マネーサプライが増えます。
なぜなら、銀行が支払った国債代金は、政府に行き、政府は、これを1年間の予算として、世の中に支出するので、当然、世の中のお金の量が増えるのです。
ここに10年間は、デフレで、経済状態が悪いので、企業、自営業者は、銀行からあまりお金を借りないため、マネーサプライが増えなかったのですが、これら民間に代わって、政府がお金を借りてくれるので、うまい具合にマネーサプライが増えているのです。
以上、お金の発行は、2段階ありますが、この2段階の両方で、国債は実に、有益な働きをして、マネーサプライ増加に貢献し、ひいては、日本経済が壊滅的状態にならないように、下支えをしているのです。
国債は、国の借金ではありません。貨幣の発行なのです。
なぜ、こんなにややこしい、わけのわからない、お金の発行の仕方をするのでしょう?
それは、90年前と言う大昔にできた、貨幣発行制度を、そのまま1度も改良することなく、使い続けているからです。
機械でも、90年も経てば大抵使い物にならなくなります。自動車でも、こんなに古いものは、博物館にしかないでしょう。
われわれは、時代の進歩とともに、古いものを、その時代に合った、新しいものに変えてきたのですが、実に不思議なことに、お金の発行の仕方と言う、ものすごく大事な制度を、変えることを怠っているのです。
