政府は、超法規的存在であり、強権を保持する。
政府は、警察権、裁判権を行使する。
すなわち、犯罪者を逮捕し、裁判を行って、刑罰を与えることができる。
さらに、法律を制定する権限を持つ。
あるいは、国民から税を徴収する権限を持ち、予算を決定する権限を持つ。
また、軍隊を組織し、戦車、大砲、軍艦などを保有する権限を持つ。
以上を挙げた権限は、民間のどんな人間、どんな強大な企業であっても、持つ事は許されない。
目の前に、明らかな犯罪者がいたとしても、一民間人が、この者を捉え、勝手に処罰する事は許されない。
それは私刑(リンチ)と言うもので、このようなことが、自由に行われるようになると、社会は大混乱に陥ってしまう。だから、犯罪者を逮捕し、裁判にかけ、処罰する一連の行為は、国家権力に委ねられているのだ。
このことは、すべての国民の合意のもとに、成り立っていると考えられる。
同じように、国(政府)は、税を徴収し、これをすべての国民に役立つように、使い道を定め、それを実行していると、一応考えられる。
しかし、この税の徴収とその使い方を、一民間企業に丸投げするなどと言う事は、あってはならないことである。
軍隊に至っては、ますます、これを民間企業に下請けさせて、安心できるものではない。何しろ、軍隊は強大な殺戮兵器(大砲、戦車、軍艦など)を保有しているのだから。
あくまで、国家権力の強力なコントロール下に、これをおかなければ、どんな恐ろしいことが起きるかわからない。

以上、われわれは、極めて重要なこと、あるいは、国民全員の共通の利害に関わることなどを、国民が選んだ代表が構成する政府に、委ねることによって、最大の幸福、豊かさ、安全を実現しようとするのである。

ところで、他にも、国民すべてにとって、極めて重要なことがあるのだが、それは貨幣の発行である。
貨幣は、生産、および流通、および分配と、あらゆる面でその便利さを発揮し、人々の豊かさを具体化する。
経済の部門では、生産活動の次に重要なのは、貨幣の発行である。

現代は、科学、技術が著しく発達する一方であるので、生産効率、あるいは生産能力は、ますます高まる。
すなわち、モノ、サービスの生産量は、ますます増える一方であるので、当然これを売買するのに必要な貨幣の量も、ますます増えなければならない。
もし、貨幣量が生産量と同じように増えなければ、たちまち経済は停滞し、デフレになるだろう。
それほど、貨幣の発行は、国家にとって重要なことであるが、貨幣を発行する唯一の機関である日本銀行は、実に驚くべきことに、一民間企業(株式会社)であるのだ。
その大株主は政府であるが、つまるところ、政府は、貨幣(硬貨は別として紙幣)の発行を、一民間企業である日銀に完全に丸投げし、下請けさせているのである。
で、その貨幣発行の丸投げは、いつ始まったのかと言うと、明治新政府が誕生して間もない、明治15年であり、約140年も前のことである。
で、これほど古い貨幣発行制度は、20世紀の終わり頃になって、ついに、その矛盾、不具合を露呈することになった。
それは、日銀は、世の中のお金の量(マネーサプライ)を、増やすことができないと言う、致命的な欠陥を持つと言うことであった。

なぜ、お金の量を増やすことができないか?それは、日銀は民間企業であるので、貸借対照表(バランスシート)に基づいて、業務を行わなければならないからだ。
日本銀行法第52条に、「日本銀行は半期ごとに貸借対照表を作成し、これを財務大臣に提出し、その承認を得なければならない(要約)」とある。
すなわち、バランスシートを用いて、貨幣(日銀)を発行する場合、右側の負債の項目に、日銀券いくらと記入し、それと同時に左側の資産の項目に、それと同額の資産(手形や債券など)を記入しなければならない。
これをわかりやすく言うと、日銀は、手形や債券などの資産を買い取らなければ、お金を発行することができないと言うことになる。
これでは、まったく、民間企業の通常の商取引の形をとって、貨幣を発行することになるのだから、全然、貨幣発行の意味がない。

貨幣の発行は、超法規的強権を発動して、政府自身が行わなければ、貨幣としての真の価値が生まれない。
すなわち、政府が、ただ輪転機を回して、紙幣を印刷し、これを世の中に対して、そのまま使用するのである。

政府は、国民から税を徴収して、これを財源として予算を組み、歳出するが、お金をただ刷って、これを税と同じように財源として、歳出するのである。
そうすると、その分だけ、世の中のお金の量(マネーサプライ)が増えるではないか。しかし、国民から税を徴収して、それを歳出するだけなら、世の中のお金の量は、全然増えるはずがない。

そのお金の増える量が、生産量の増大と、合致しているなら、インフレにはならない。一国経済は、見事に好循環の軌道に乗って、発展するだろう。

生産量が増えると言う事は、モノ、サービスという価値あるものが増えるのである。
その価値あるものを、取引、売買するお金は、価値のあるお金でなければならない。すなわち、通貨発行益のあるお金でなければならない。
そして、政府が直接発行する、ただ印刷しただけのお金でなければ、通貨発行役は生まれない。日銀が発行する日銀券には、通貨発行役は無い。
日銀券は、通常の商取引と同じレベルのお金であるからだ。