経済学の中級、上級の教科書をひもといてみると、驚くことに、初めから終わりまで、数式の大洪水で、まるで物理学書と見間違えるほどだ。
物理のような自然現象は、人類が生まれる遥か以前から存在するもので、おそらく、ビックバンによって宇宙が誕生した時、自然の法則は決定されたと考えられる
すなわち、自然法則は、人間が全く関与していない、純粋に自然によって形作られたものだ。

それに対して、経済現象は人間が作ったものだ。人間が、生活する上での営みのうちの生産や、分配、消費といったものが、次第に複雑になり、制度や慣習によって、ある一定の形式を持つようになったものだ。

自然の法則は、人間の力によって、変える事は絶対にできないが、経済上の諸制度や慣習は、人間が作ったものであるから、いくらでも人間がこれを変えることができる。
例えば、かつては、多くの国々で金本位制度が採用されていたが、次第にこの制度は時代にそぐわないものになったので、現在では、すべての国が金本位制を止め、管理通貨制度に移行している。

自然現象と経済現象には、これほどの違いがあるのだが、物理学が、数学を使うことによって、華々しい成果を上げてきたのを見て、経済学者たちは、どうやら物理学の猿真似をしてしまったようだ。
微分、積分、編微分、対数などと言う高等数学を使って、眼もくらむような経済理論を打ち立てたのであるが、少しでも経済上の制度が変わってしまえば、この素晴らしい経済理論は、たちまち砂上の楼閣と隠すだろう。

制度が変わるだけではない。
産業革命以後、生産能力は、絶えず向上を続け、生産量も増大する一方だ。生産能力の向上、生産量の増大と言う経済を形成する最も重要な要素が変化し、増大し、人々の労働や消費の形態も変化する。
それに対する国家の経済政策も、多様になり変化する中で、これらの現象を、物理現象と同じように、数学によって解明しようとするのは、あまりにも見当が違いすぎるのではないか?

同じ自然現象の中でも、動植物学(生物学)や、地質、海洋学、あるいは医学と言う分野では、特に数学を用いるような事はしていない。
これらの分野では、現象を観察し、分類し、分析し、推論を立て、また、観察すると言う方法を用いているようだ。

経済学も、これらの観察を重視する手法を用いるべきではなかったのか。
経済とは生産であるから、生産がどのように変化したか、その変化の様態を、じっくり眺めることが重要であるだろう。
一方、宇宙(自然)は定常状態のまま、すなわち、何十億年も変化しないと言う世界だ。

凄まじい勢いで変化するのが、経済現象と言うものであるから、その変化、発展の様態を、鋭く観察、分析し、その変化に対応できるように、制度、慣習をどう変えるか、経済政策をどのように打ち立てるかを研究するのが、本当の経済学と言うものでは無いだろうか。