金本位制度から管理通貨制度へ

かつては、多くの国々は金本位制度と言う通貨発行制度を採用していた。

中央銀行が発行する紙幣は兌換紙幣といい、一定の比率で金と交換できる約束になっていたので、紙幣の発行は中央銀行が保有する金の量によって制限された。

要するに、無制限に紙幣(通貨)を発行することができなかったわけだ。したがって、国家の経済政策は、いろいろな点で制約を受けることが多かった。

特に20世紀に入り、先進各国は工業化して、生産力が急激に高まってくると、限られた通貨の量では、生産量に対して貨幣量が圧倒的に不足する事態になった。

このことを原因として、20世紀前半(1929年)に世界大恐慌が起きたが、この大恐慌から脱するためには、金本位制を止める以外に方法はなかった。


こうして、1930年代に各国は相次いで、金本位制を離脱して管理通貨制度へと移行したのである。

管理通貨制度において、政府、中央銀行は、金の保有量に制約されることなく、自由に裁量的に通貨の量を増減することができるようになり、ようやく世界恐慌から脱却することができたのである。

なぜ脱却することができたのか?

もちろん、生産能力の向上に見合った通貨量を、中央銀行は自由に発行できるようになったからであり、これは金本位制下にあっては絶対に不可能なことであった。


実に、歴史上、金本位制から管理通貨制度に移行したのは、人類の英知のなせる技であり、めでたし、めでたしであった。

しかしである、これにて「一件落着」と言うことには全然ならなかったのです。

なぜなら、管理通貨制度は中央銀行が通貨を発行すればするほど、「国(政府)の借金」が生まれる仕組みになっていたからだ。

以下その理由を説明する。

金本位制においては、中央銀行は金と言う資産を保有して、それと同額の通貨(兌換紙幣)を発行することができたのであるが、これを中央銀行のバランスシートで表すと、左側の資産の項目に金(ゴールド)を記載し、右側の負債の項目に兌換紙幣を記載することになる。

次に、金本位制から管理通貨制に変わると、違いはどうなるか?

バランスシートの資産の項目に記載できるものは、金(ゴールド)だけでなく、手形や債券などの金融資産も加えることができるようになった。

すなわち、中央銀行は金本位制下では、資産として金(ゴールド)しか持つことができなかったのに対して、管理通貨制下では、資産として金(ゴールド)だけでなく、手形や債権をも加えることができるようになったので、それだけ発行する通貨量を飛躍的に増やすことができるようになったのである。


中央銀行は、金(ゴールド)だけでなく他の金融資産を買い取ることによって、それと同額の通貨(中央銀行券)を発行することができるようになったのである。

ただし、民間の発行する手形や債券を買い取っていては、とても追いつかないので、一度に大量に買い取ることのできる債権、すなわち「国債」を買い取ることによって、通貨(中央銀行券)を発行することになる。

そこで、大量の国債を買い取るためには、まず、政府に大量の国債を発行してもらわなければならない。すなわち、現在の管理通貨制度においては、最初に政府に大量の国債を発行してもらわなければ(大借金をしてもらわなければ) 通貨の発行はできない仕組みになっているのだ。

 [管理通貨制度に移行して、中央銀行は自由に裁量的に、いくらでも通貨を発行することができるようになった。]これは確かに正しいが、その発行した通貨と同額の国債を中央銀行は買い取らなければならないのである。そして、そのためには、それと同額の国債を政府は発行しなければならないのだ。


なぜこのようなことになるのか?

管理通貨制度と金本位制度の貨幣の発行の仕組みは、実際はほとんど変化していないからだ。

中央銀行がバランスシートを根幹に通貨を発行する仕組みは、金本位制度においても管理通貨制度においても同じだからだ。

ただ、管理通貨制度は中央銀行が保有する資産の種類が、金(ゴールド)だけでなく、手形や債券が増えたから、それだけ発行できる通貨の量も増やすことができたと言うだけのことだ。

しかし、その発行する通貨の裏付けとして、必ず政府の借金行為が存在しなければならないのである。

お分かりでしょうか?

我々はお金を発行するためには、必ず国(政府)の借金が増える仕組みを使って発行しているのです。

要するに、経済が発展し、生産が増大するのに合わせて、政府、中央銀行はお金を発行してきたのですが、その発行したお金と同額の政府の借金が生まれる仕組みになっていたのです。

そういう仕組みを使っていたので、政府の借金が生まれるのは当たり前だったのです。

現在、世の中に出回るお金の量(マネーストック)は約1千兆円余りありますが、政府の借金もそれと同じ額、すなわち1千兆円余りあります。

何の不思議もないのであり、これで良いのです。

まさしく、MMTが主張する通り「国債の発行は貨幣の発行と同等」なのです。