「経済の実体は生産であり、決して貨幣ではない」

これがわからない人間が多すぎる。

日本において、雇用者の平均賃金は、1997年以降ずっと下がり続けているが、その理由について「生産性が上がらないから」と言う説明の仕方をする人間が多いが、これはとんでもない間違いである。

本当は、むしろその逆であって、生産性が非常に高まったために、賃金が下がるのだ。なぜなら、機械、コンピューター、ロボット、AIなどの性能が著しく高くなったために、これらに人間の仕事が奪われるのである。したがって、人間の労働が不必要になり、余分になってきたために、賃金が下がるのだ。

物の値段は需要と供給のバランスによって決まるが、労働の値段(賃金)も例外ではない。労働の供給に対して、需要が少なくなったために必然的に賃金が下がるのである。

ところが、現在は少子高齢化で、労働人口が減少しているので、労働力不足(下手不足)であると盛んに言われているが、これは大マチガイだ。

確かに、建築関係など人手不足の業種もあるようだが、あくまでそれは一部の職種のことであって、職業全体にわたって人手不足なのではない。

そもそも、本当に人手不足なら、企業間において労働力の奪い合いが起きて、必ず賃金は上がるはずだ。それなのに、上がらないのは、労働力が余っていることの証拠である。


実際の労働の現場を覗いてみよう。

例えば自動車製造工場においては、その生産工程の凄まじい進化ぶりに驚嘆するだろう。(YouTubeで自動車工場の中を見ることができる) 

まず、組み立てロボットが自動車を組み立て、次に溶接ロボットが溶接し、さらに塗装ロボットが塗装すると言う有様で、広い工場の中に人間の姿はほとんど見られない。しかも、各ロボットはものすごいスピードで、正確に作業するので、その生産能力の高さは目を見張るものがある。

おそらく30年前の同じ自動車工場では、もっとたくさんの労働者が作業をしていただろう。30年間で労働者の数は10分の1、あるいは20分の1、もしかすると50分の1になったかもしれない。

科学、技術の進歩によって、これだけ人間の労働は機械、ロボット、AIなどにとって変わられ、不必要になったのである。


その他の製造工場、家電工場、食品工場、繊維工場、日用品製造工場などもすべて同様に機械、ロボットが生産に携わり、人間の労働はごく僅かになりつつあるのだ。

すなわち、人間の労働に対する需要は急速に減少しているのである。このような状況で、どうして労働者の賃金が上がるだろうか?


製造業だけではない。サービス業においても、機械、ロボット、コンピューター、AIは広く利用されるようになってきた。

銀行のATMや、鉄道の券売機、自動改札機などは相当以前からおなじみであるが、スーパーのレジが無人化しつつある。多くはまだ、支払いだけ客が行うレベルだが、すでに完全無人化レジが開発され、普及しつつある。

車の自動運転は、特定の地域に限られるが、これも実現化されつつある。さらに、ドローンによる物資の輸送なども既に実験段階にある。

アメリカの電気自動車会社テスラは、極めて精巧な人型ロボットを、3年程度で完成させ販売開始の予定である。このロボットは危険な労働や、過酷な労働、その他あらゆる現場で活躍するようになるだろう。いったい生身の人間はどこで働けば良いのだろうか。

知的な労働に携わる人たちはどうだろう。スマートフォンでもそこそこの通訳はしてくれる。会計、簿記の仕事はどうだろうか? 会計ソフトがあるので、素人でも数字だけ入力すれば、コンピューターが帳簿を作成してくれる。そうすると、簿記の資格は必要なのだろうか?

学校の先生はAIのほうがずっとふさわしいかもしれない。

最近は高齢化に伴い、介護サービス業が盛んになりつつあるが、これも介護ロボットが重労働を担当してくれるだろう。


[ 近未来の素晴らしい世界を予測する ]

間違いなく近未来において、我々は労働から解放されるのである。製造業においても、サービス業においても、知的労働においても、その大半の労働を人間に代わって、機械、ロボット、コンピューター、AIが行ってくれるようになるのである。

素晴らしいではないか!われわれ人間は、仕事をしなくても良くなるのであり、毎日好きなように遊んで暮らせるようになるのだ。実に夢のような未来が待っているのだと、早合点しては イ ケ マ セン‼︎


よくよく考えてみてください。我々は仕事をしなくなったら、誰が給料を払ってくれるのか?

我々は、会社なり商店なり役所なり、どこかに雇われて仕事をするから給料がもらえるのだ。会社があなたの代わりに、ロボットを導入して仕事をさせるようになれば、当然あなたはお払い箱になって失業するのです。失業すれば給料はもらえないのです。そもそも、会社は人間に給料を払わなくて済むように、代わりにロボットを導入するのです。そうすれば、大いに経費を削減できて利益が上がるからです。

このようにして、会社は人間を全員解雇して、今までよりも大儲けをすることができて、万々歳になると思ったら、これまた大マチガイです。なぜなら、日本中、全員失業者になるのですよ。みんな失業者になったら、みんな給料が入らなくなって、何も買えなくなるのです。

国全体で消費がゼロになるのです。会社や商店は、せっかく機械、ロボット、AIを揃えてモノ、サービスを大量に生産し、世の中に供給しても、それらを誰も買ってくれなくなるのです。


さぁ、世の中は一体どうなるのか?

簡単なことです。一国経済は消滅するのです。消費(需要)がゼロになるので、生産(供給)も完全にストップするのです。そして、原始時代のように、自給自足と物々交換経済に逆戻りするのです。これが素晴らしい近未来社会の姿なのです。(もちろんこうなる前に何らかの手を打つでしょうが) 

科学、技術が果てしなく進歩し、機械、ロボット、AIに支配された挙句、実現する貧しい人間社会の姿なのですよ。

人類は、科学、技術を進歩発展させることによって、豊かな生活を営むことができるようになったのは間違いない。しかし、ある時点において、科学、技術が進歩しすぎて、人間の労働が不要になり始めた時から、人類は今度は逆に貧しくなるのです。

なぜなら、人間の労働は機械、ロボット、AIにとって変わられ、人間は所得を得られるなくなるからです。こう考えてみると、科学、技術が進歩しすぎては、いけなかったのである。

日本では、1997年以降、労働者の賃金は下がる一方であり、そして国内総生産(GDP)は横ばいのままで上昇する兆しは無い、その上、デフレ経済から抜け出せないのは、科学、技術が進歩しすぎたからであったのだ。


現在、まさに日本は近未来の予想図通り、一国経済が完全に消滅してしまう、その前段階、途上にあると言うことになる。

では、せっかく進歩した機械、ロボット、AIをぶち壊して、1997年以前の科学、技術の水準に戻さなければならないのか?いや、そんなことをする必要は無い。ただ、政府に強力なマクロ経済政策を行ってもらえば良いのだ。

科学、技術が進歩しすぎたために失われた国民の所得を、政府が貨幣を発行することによって、国民に注入するのである。具体的には、政府が国債を発行して財源を作り、公共事業や社会保障、地方交付金に相当額を支出し、これによって国内の需要を高め、デフレを解消し、経済を活性化するのだ。

この場合、国内の生産能力は十分に高いのであるから、相当額の国債を発行しても、容易にインフレになる事はないが、基準としてインフレ率が2%程度に収まるように注意すれば良い。


以上、政府のとるべきマクロ経済政策は、大体MMT の主張通りになる。

さらに、国民の失われた所得は、幅広い階層にわたっているので、定額給付金の長期間の支給(ベーシックインカムと同じ)も行うべきだろう。

これに対して、これほどの大盤振る舞いをしても大丈夫だろうかと言う意見もあるだろうが、もともと科学、技術が進歩しすぎたことによって生じた国民の所得の喪失であるので、全然問題ない。

我々は、科学、技術の進歩を、人類にとって有益になるよう使いこなさなければならないのである。