経済を成り立たせるものは「生産」である。「貨幣」が経済を成り立たせるのではない。生産があるから貨幣に存在理由が生まれるのである。ものすごく当たり前のことだが、生産のない社会においては、貨幣は何の役にも立たない無用の長物になる。
その生産は、現代においては [人間 ] + [道具、機械、コンピューターなど ] によって行われる。決して、人間だけが生産を行うのではない。
江戸時代か、それ以前の時代においては、人間がごく簡単な道具だけを使って生産をしていただろうが、現代は違う。
以上のことを頭に置いた上で、「年金」について考える。
現代の日本は、少子高齢化によって、現役世代の人口に対して、高齢者の人口が相当多くなってきている。現在は、現役世代2.5人に対して高齢者1人と言う割合だが、いずれは現役1人に対し高齢者1人と言う時代が確実にやってくるだろう。
このような将来予測を考慮に入れて、厚生労働省は年金計画と言うものを立てているが、それは大体において、現役からの年金徴収額を増やし、かつ年金受給者の受給額を減らすと言うものだ。その上、年金受給開始年齢を高くしようとする計画もあるようだ。
しかし、このような厚労省の年金計画は、とてもおかしなものではないだろうか。なぜなら、上のような計画では、働く人間の数と、養われる人間の数だけで計算しているのであり、機械やコンピュータ、ロボットなどの人間以外の生産設備については、全く考慮に入れていないからだ。
要するに、近年における機械、コンピューター、ロボットなどの著しい進歩発展による顕著な生産能力の向上については、全く無視している。生産は人間だけが行っているのではないと言うことを忘れているのである。
例えば、ある工場で、非常に性能の高い生産設備を導入したことによって、同じ数量の製品を生産するのに、それまでの従業員数を半分に削減することが可能になったと言う事は、ごく普通に起きていることだ。
特に、1990年代から2000年代にかけて、コンピューターの性能が飛躍的に進歩し、製造業においては、ほとんどの機械にコンピューターが組み込まれ、プログラムに従って、それまでとは考えられないほどのスピードで、正確に大量の生産が行われるようになった。
製造業だけではない、サービス業その他においても、コンピュータは多くの業種、業務において、なくてはならない働きをしている。
さらに、世界中のコンピューターを通信によってつなぐことによって、情報通信革命(IT革命)が起き、あらゆる分野において、どれほど生産性を高めることに貢献しただろうか。
最近の20年、30年の間に、これら機械、コンピューター、ロボット、さらにAIなどの発達によって、国全体の生産能力が著しく向上した事は、疑いの余地のないことである。
そうであるなら、ただ、現役世代の人数の減少だけを考慮に入れて、年金の支給額を減らしたりするのは、あまりにもおかしいのではないか。
もし、機械、コンピューターなどの生産設備に進歩が全くないのであれば、現役世代と高齢者の人数の変化だけを見て、支給額を決めても良いだろう。その場合は、現役世代が半分に減れば、確かに生産能力も半分に減ったことになるので、支給額もそれに応じて減らす必要があるだろう。
しかし、現役世代が半分になっても、それを補うほどの生産設備の進歩発展があるのであれば、支給額を減らすのは間違いである。
冒頭部分でも述べたように、経済を成り立たせているのは「生産」であり、決して「貨幣」ではない。現役世代の数が減れば、全体の年金徴収額が減るのに決まっている。
一方、機械、コンピューターはどんなに生産を上げても、給料を貰わないので、その中から年金を納付する事は無い。しかし、確実に人間以上に機械、コンピュータは生産に貢献しているのだ。
「経済を成り立たせるのは生産」である以上、機械、コンピューターの労働価値分から納めるはずの年金額を推測して、これを国全体の年金徴収額に加えても何の問題も起きない。
このことによって、年金の財源は大幅に増えるのであるから、政府(厚労省)のとるべき行動は、現在の真反対になるのだ。すなわち、現役世代からの年金徴収額を減らし、かつ高齢者への年金支給額を大きく増やすのである。
お分かりだろうか。科学、技術が進歩し、機械、コンピューターが発達すると、世の中からお金が漏れ落ち、消えてなくなると言うことを。だから、科学、技術の進歩を人間社会にとって利益に結びつくように、知恵を出し工夫しなければならないと言うことを。
そして、それができるのは政府以外にはない。
科学、技術の進歩によって世の中からお金が漏れ落ちるのは、年金制度だけに起きている現象ではない。25年も続く賃金の低下も、同じ理由から起きているのだ。(これについては、次のブログで述べることにする)
いずれにしても、MMT が「国債を発行して財政出動せよ」と言うことの根拠は、以上の理由から出たものである。MMT 自身は単に「機能的財政出動」と言う言葉で片付けているが。MMT は、もっと自分の理論の根拠を明快に示すべきだろう。