マクロ経済について考える時、我々は何に最も注意を払わなければならないでしょうか?
それは「変化」です。
20世紀から21世紀にかけて、経済は大きく変化しました。そもそも、経済の規模が著しく増大しました。
日本の国内総生産(GDP)は、1955年から1997年までの42年間で、約60倍に増大しています。これは、すさまじいばかりの経済成長が達成されたことを示しています。
それほどの経済成長を、実現させた根本原因は何だったでしょうか?
日本人が勤勉でよく働いたこともあるだろうし、人口が増えたこともあるでしょう。
しかし、それよりも遥かに大きな要因は、明らかに科学、技術が長足の進歩を遂げたことにあるでしょう。
そして、その成果を産業界が着実に取り入れ、生産性を著しく向上させたからです。
ところが、ここに不思議なことがあるのは、順調に成長してきた日本経済が、1997年以降ピタリと成長を止め、25年経った現在に至るまで、上向く気配さえも感じられないことです。
いったい1997年前後に日本に何が起きたのでしょうか?
その原因は極めて明瞭です。雇用者の賃金が1997年を境に下がり始めたことにあります。それまでは、賃金は毎年必ず上がっていたのにです。賃金が下がるから、日本全体の総需要が減ってしまい、GDPが低迷してしまうのです。
では、賃金はなぜ下がるのか?
これも明瞭です。人間の労働が次第に不要になり、余分になったからです。すなわち、人間の労働の供給が過剰になり、人間の労働に対する需要が過少になったからです。
では、なぜ人間の労働が不要になったのか? それは、科学、技術が進歩し、機械、コンピューター、ロボットが発達して、人間の仕事を奪ったからです。今まで人間が働いていた場所が機械、コンピューター、ロボットに置き換えられていったからです。
現実においても、1990年代から2000年代にかけて、産業界ではリストラの嵐が吹き荒れたではないですか。
例えば、トヨタなどの自動車メーカーの工場の中を覗いてみると、組み立てロボットが自動車を組み立て、溶接ロボットが溶接し、塗装ロボットが塗装するという生産工程になっていて、人間の姿は工場の隅のほうに、ぽつりぽつりと見受けられる程度です。(YouTubeで自動車工場の中を見ることができる)
これらの工場では、30年間でどのくらい人員削減をしたでしょうか。5分の1になったのか、10分の1だろうか?
製造業だけではありません。前回のブログでも書いたように、サービス業でも機械化、コンピューター化は相当進んでいます。
では、こうして労働の現場からはじき出された人々は、今どうしているのでしょうか?
この人たちこそ、非正規労働者となって、ひどい労働条件で働いているのです。その数、全労働者の4割にも達しています。この4割の人たちの給与は、正社員の約半分程度です。したがって、この人たちが平均賃金を下げているのです。(もちろん正社員の賃金も上がってませんが)
この非正規労働者の低賃金は、紛れもなく政治の責任です。と言うと、そんな事はない、自己責任だと反論する人がいるでしょう。機械、コンピューターに仕事を奪われる人間は能力、努力が足らないからだと。
いえいえ、とんでもありません。機械、コンピューター、ロボットの発達を、社会全体の豊かさに結びつけることのできない政治が悪いのです。
本来、科学、技術が進歩すれば、それだけ社会は便利になり、豊かになるはずです。過酷で危険な労働、あるいは長時間労働から人間を解放するために機械、コンピューター、ロボットが発達したはずです。
ところが現実はどうでしょう。日本社会は豊かになるどころか、逆に貧しくなっているではないですか。
それも、他の国々は賃金もGDPも伸びて、どんどん豊かになっているのにです。他の国々は、巨額の国債を発行して財政出動をしているから豊かになるのです。100財政出動をすると、乗数効果が働くので、GDPは200も300も増えるのです。
すなわち、国債(国の借金)が100増えると、GDPは200も300も増えるのです。通常国の借金は、GDPに対する比率で表すので、国債を発行して財政出動すればするほど、国の借金は小さくなるのです。(廣宮孝信氏「国債を刷れ」を参照)
個人の場合は、借金をすればするほど借金は増えますが、国家は借金をすればするほど、借金が小さくなるのです。これがミクロとマクロの違いです。他の国々は皆、この方法で経済成長しているのですよ。
なぜ財政出動しなければ、国は豊かになれないのか?
簡単なことです。機械、コンピューター、ロボットは給料を貰わないからです。それなのに、人間の何十倍も仕事をして生産性を上げるからです。
要するに、ものすごい勢いで生産をするのに、給料を貰わないので全然消費をしない存在(機械、コンピューター、ロボット)がいるから、経済がアンバランスになるのです。
すなわち、生産(供給)と消費(需要)が全く一致しない経済になるのです。だからデフレに陥るのです。
ミクロ経済主体(企業、個人)には、この状況を変えることができません。なぜなら企業は、あくまで利益を追求する団体だからです。経費を削減するために賃金を下げるのは当たり前で、さらに人間を使うより給与のいらない機械、コンピュータを使うでしょう。
一方、人間は生きるためには、他に仕事がなければ、給料が安くても働かなければなりません。このようにミクロ経済主体では、現状をどうすることもできないのです。
しかし、マクロ経済主体(政府)は違います。政府はお金(国債)を発行する能力を持っています。この能力を用いて、国全体の需要と供給のアンバランスを是正することができます。すなわち、ミクロにできないことをマクロがやるのです。
これが科学、技術が進歩し、機械、コンピューター、ロボット、AIが発達した社会において、その進歩、発達を豊かさにつなげる唯一の方法なのです。こうしなければ日本国は、ただひたすら貧しくなるだけです。
以上、MMT はなぜ正しいのかを、生産面から説明しました。私が不満に思うのは、MMT は貨幣面しか説明しないことです。
経済の実態は生産なのだから、もっと生産面に目を向けるべきでしょう。そうすればMMT に対する理解者を、もっと増やすことができるはずです。