今や、スマートフォンを大半の人々が所有しているが、このスマホの機能について考えてみよう。

ご存知のように、スマホの持つ機能は、パソコン、電話、カメラ、計算機、ラジオ、音楽配信、ゲーム機、新聞、本、メモ帳、地図、コンパス、電車バスの時刻表、時計、鏡その他と非常に多種類に渡るので大変便利が良い。

これほど多くの機能を持つモノが、たちまちのうちに日本中(世界中)に普及したのは、実に驚くほどの技術進歩のスピードである。

しかし、ここでよく考えてみてほしいことがある。それは、スマホが上に挙げた多数の製品機能を併せ持っていると言う事は、それらの製品を今まで製造していた企業、工場、店舗は生産を相当縮小しなければならないと言うことである。

かつてのカメラ(写真機)は、最近はほとんど目にしなくなったし、そもそもカメラ店なるものが街から消えてしまっている。

また、音楽配信があるので、ステレオ、ラジカセなども見られなくなり、CD (レコード) 店もなくなった。

新聞や本は、急速になくなることはないが、それでも少しずつ消えていこうとしている。新聞や本に関しては、これに関わる企業や店が相当ある。

紙、インクの製造会社、書店、新聞販売店、本や新聞の運送会社、製本会社、出版社などで、これらの企業や店舗は、徐々に生産を縮小しつつあるだろうし、当然そこで働く従業員は削減されるだろう。

時計、鏡、計算機の生産、販売も縮小されていく。

要するに、数多くの機能を併せ持ったある一つの製品が普及すると言う事は、多数の会社や商店、そこで働く人間が消えていくと言うことだ。

すなわち、科学、技術の進歩は明らかに人間から仕事を奪い、多数の失業者を生み出す。人間の労働が余ってしまうから、人間の労働の値打ちが下がり、結局賃金が下がるのである。

近いうちに、車は全て電気自動車になるだろうが、そうすると、エンジン周りの多数の部品は必要なくなり、モーターとバッテリーを積めば済む。さらに、自動運転になれば、運転手はどうなるのか?


現代は、技術革新が急速に進む時代である。コンピュータ、デジタル、通信などの分野は、加速度的に進化しつつある。

そうであるなら、その技術革新がどれほどの影響を、経済に与えているかと言うことを考えなければならない。

技術革新は生産を著しく効率化する。

生産が効率化すると言う事は、一人当たりの労働者の生産数量が飛躍的に増大すると言うことだ。ところが、生産数量が増大しても、それに合わせて需要が増えるわけではない。

例えば、洗濯機は一家に1台あれば充分だろう。2台も3台も購入する家庭は無い。その他の電気製品も家具も一通り揃えば、それ以上は邪魔になるだけなので購入する事は無い。

したがって、生産効率が高まり、一人当たりの労働者の生産数量が増大すると、労働者の数を削減することによって、生産数量を一定に保つことになる。

もちろん、国内だけでなく、海外に輸出することもできるが、それも無限ではない。日本の自動車や家電は相当輸出をしているが、やはり一定数に達すると頭打ちになる。

技術革新は、このように経済(生産)に多大な影響与える。その結果、人間の労働は削減され、労働力の余剰が起きるので、当然のように賃金が下がる。

そうすると、国民の賃金の合計額が、国全体の総需要に等しいので、総需要も低下することになる。

すなわち、技術革新が進むと、総需要が低下することによって、デフレ型の景気低迷に陥るのである。まさに日本は、25年前からこの状況にあるのだ。

では、それ以前はどうだったのか?

技術革新は今ほど進んでいなかったので、人間の労働に対する需要は強く、したがって賃金は年々上昇していた。

当然、国内総生産(GDP)も右肩上がりに上昇した。日本は1997年まで、賃金もGDPも両方とも上昇していたのだ。そして、1997年以降、賃金もGDPも揃って見事に下降、低迷し始めたのである。

その原因は、明らかに技術革新が急速に進んだことにある。技術革新は素晴らしいことであるが、われわれは、それを社会の豊かさ、人間の幸福に結びつけることができていない。



技術革新は明らかに賃金を下げる働きをすると言うことだ。なぜなら、優れた生産設備(機械、コンピューター、ロボット、AIなど)が人間に代わって生産を行うので、人間の労働が次第に不要になり、価値を失うからだ。

一方これらの優れた生産設備によって、国全体の生産能力は極めて高い水準に達する。

そうすると、どんな現象が起きるだろうか?

生産能力は高いので、モノ、サービスを大量に生産するのであるが、それを買う(消費する)ための、お金を人々が充分持っていないことになる。なぜなら賃金が下がるから。

ここに、国全体の総供給と総需要に著しいアンバランスが生じ、当然のように根強いデフレ型不況に陥るのだ。実に当たり前の現象が起きているのである。

では、このアンバランスを是正するにはどうすれば良いのか?賃金が下がることによって失われてしまった国民の所得を、政府が補填するのである。総供給と総需要のバランスが保てるまで、国民に所得を注入するのである。具体的には政府が国債を刷って、財政出動を行うのだ。

社会保障を充実させ(年金を増やし、医療負担を減らすことなど)、必要な公共事業しっかり行い、さらに減税を行う。

そして、もっと効果的なのは、国民に直接給付を行うことだ。これが一番手っ取り早い。これらの財政出動を緩やかなインフレになるまでやり続けることだ。

すなわち、MMT を実行すればよいのだ。

これに対して、現在ガソリンや食料が値上がりしていて、すでにインフレ状態ではないかと言うかもしれないが、これは間違いだ。なぜならインフレとは、モノの値段が全般的に上がることを言うのであって、一部のモノの値段が上がることを意味するのではないからだ。


先にも述べたように、日本は著しい技術革新によって、全般的に生産能力が高まっているのに、賃金が下がることによって総需要が低下すると言う、甚だしい需給のアンバランスが起きているのである。

まさに構造的デフレ状況にあるのだから、大幅な財政出動をしても何も問題は起きないし、ハイパーインフレにはならない。

そもそもガソリンが高いのなら、ガソリン税1リットル25円を0にすれば良いのである。税金をとって国民の所得を減らしては何にもならない。