手塚治虫の「鉄腕アトム」は、昭和30年代、40年代のアニメーションです。手塚は未来(21世紀)には、アトムのような人工頭脳を備えた人型ロボットが誕生することを予測しましたが、21世紀の今日、現実にAI (人工頭脳)が開発され、社会のあらゆる場所において、利用されつつあります。

すでに、工場等では産業ロボットのかなり優れたものが、幅広く活躍していますが、人型ロボットも、相当人間の動きに近い精巧なものが出現し始めています。

まさに、この人型ロボットにAIを搭載すれば、アトムのようなロボットの実現も、そう遠い将来ではないでしょう。

まさに、科学、技術は着実に、しかも急速に進歩しているといえます。


さて、手塚治虫は夢のような未来社会を描きましたが、優れたロボットが登場し、社会のあらゆる場所で活躍し始めると、実は大変な社会矛盾、と言うより大量の失業と貧困と言う大問題が発生すると言うことまでは気づいていなかったようです。

それはどういうことかと言うと、人工頭脳を持った優れたロボットがあれば、これが人間の代わりに働くことになるのは当然でしょう。いや、人間が働かずに、ロボットに働かせる社会になるのが当然です。

「アトム」の世界では、レストランのウェイター、バス、電車の運転手などは全てロボットで、もちろん、工場での作業も、全てロボットが行っています。

ところが、街角では人間がたくさん行き来して、ごく普通に生活している様子が描かれています。よくよく考えてみると、これは非常に奇妙な、ありえない世界ではないでしょうか?

なぜなら、ほぼすべての労働は、ロボットが行っているのであり、ほとんどの人間は、仕事をしていないことになるのです。

人間は働くことによって、お金を稼ぐことができ、そして、そのお金で必要なものを買い、生活をすることができます。働かなければ、生活をするどころか、生存することさえできません。

さらに、せっかくロボットが工場でモノを生産し、商店でロボットがモノを売っても、人間はお金を持っていないのだから、それらのモノを誰も買うことはできないはずです。

そうすると、工場でモノを生産し、商店でモノを売ると言うこと自体が無駄になり、工場や商店の存在自体も意味のないことになります。


さて、以上の状態を、わかりやすくまとめると、「この社会は経済そのものが成り立っていない」と言うことになります。やがて、この社会は工場、商店、生産、消費が全て退化し、人間は、みんな自分で必要な食料その他を調達する、自給自足の社会になると言うことです。

科学、技術が著しく進歩していく中で、現在の経済システム(すなわち人間は労働をすることによってお金を得、それによって生活するというシステム)を続けるのであれば、確実に自給自足の原始社会に戻ってしまうのです。

以上が、アニメ「アトム」の本当の社会の姿ですが、作者は経済と言う観念をこの物語には導入していないのです。


さて、我々の社会は、まだまだ「アトム」の社会には到達していないと、多くの人々は思っているでしょうが、実は、すでに半分ぐらいは到達しているのです。何ごとも、物事はいっきょに起きるわけでは無いのです。

日本は1997年以降、賃金が下がり始め、かつGDPが低迷し始めたが、このデフレ不況は、25年後の今日まで、ずっと続いています。

そして、政府はアベノミクスを始め、どんな経済政策を打っても、このデフレ不況から抜け出せないままです。25年かかっても、何をやってもダメなのです。

何故でしょうか?

そうです!

我々は、すでにアトムの時代に突入しているのです。機械、コンピューター、ロボット、AIが既に相当、人間の仕事を奪ってしまったので、人間の労働に対する需要が減ってしまったために、賃金は下がり続けるのです。

世間では、よく「人手不足」と言いますが、本当に人手不足なら、必ず賃金は上がります。


さて、あと数年で「完全アトム時代」に突入するでしょう。最近、ユニクロに行ってみると、「セルフレジ」になっていました。レジ係は、まもなく全員失業します。車も自動運転になれば、運転手は全員失業します。

今のうちに、社会のシステム、制度を変えなければなりません。

それはMMT でも良いし、ベーシックインカムでも良いし、あるいは他のものでも良いでしょう。もし、今、変えることをしなければ、現行の貨幣経済は崩壊するのです。