女性が言った。
「わたしは生まれてきたくなかったし、こんなにつらい人生なんて生きていたくない!神様なんていない!わたしは神を怨んでるんです!」
帰ってきたお宮様が答えた。
「怨む必要はありません。なぜなら、人は自分で選んで地上にやってきたからです。つらい人生も生まれる前に、自分が予定表を作っているのです。そして、その予定表は地上で出会う人によって細部が変わって参ります。
あなたの言う『神様』が金色の玉座に腰掛けた偉い人、という意味ならば、そんな『神様』は存在しません。人間に罰を与え、生け贄と金銀財宝を要求する『神様』はおりません。人間の想像上の産物です。神とは、人間の思惑と知識を超えて、宇宙を、銀河を、地球を存在させ続けている完璧な法則のことです」
「神が完璧なら、なぜわたしは不幸なんですか!」
「二つ考えられます。一つは、魂でそれを学ぶためにあなたが生まれたこと。もう一つは、現実社会に生きる人間として、あなたが危険を避け得なかったことです」
「避け得なかったってなんですか!」
「あなたは相手が返せるか返せないか、信頼できるか出来ないかを良く考えず、際限なくお金を貸していました。反社会的な考え方を持つ犯罪者を恋人とし、周囲の苦言を無視して、長い間、欲望に身を任せていました。その恋人に暴力を振るわれ、さらに薬物中毒にされました。
しかし、その前に、あなたを昼の世界へ引き戻そうと努力してくれた人たちはいっぱいいたのです。あなたはその善意の人たちを追い払い、嫌だ嫌だといいながら、あなたを傷つける人たちとずっと一緒にいたのです。毒のシャワーを自分で自分にかけながら、苦しい苦しい助かりたいと言って、全てを神様のせい、社会のせい、他人のせいにしてきたのです。そして、また、自傷行為を行っていらっしゃいます。
自分が握っている毒のシャワーを手放しなさい。浸かっている毒の風呂から上がりなさい」
「そんなこと言ったって、わたしには無理です」
「なぜですか?楽になりたいのでしょう?」
「無理です。遅すぎます」
「遅くはありません。今すぐに出来ます。心の底で決心すればよいのです」
「できません」
「死ぬよりずっと簡単ですよ」
「死んだらぜんぶ解決します」
「いいえ。死んでも何も変わりません。むしろ、事態は悪くなります。地上で解決すべき事柄が解決できなくなります。地上で言う『死』とは、肉体が無くなるに過ぎません。魂は死にません。消滅しません。今のあなたそのままで存在し続けます。苦しいと思えば、その苦しみがのしかかったままです。そして、後悔するのです。ああ、生きているうちになぜ、もっと・・・・・・と」
「死んだら幽霊になって残るんですか?ばかばかしい」
「生命は死んで霊になるのではありません。生きているこの瞬間も霊です。魂です。肉体をたずさえた霊であり、魂なのです」
「証拠を見せてください」
「証拠はあなたであり、私です。生命が存在していることが証拠です」
「ですが、全然ニュースにもならないですね。もし、本当に霊や魂があるなら、ニュースになるじゃありませんか」
「私が帰ってきたことがニュースになっているでしょうか?」