人気ドラマの影で一体なにがあったのか?

 

 

 芦原さんは「ドラマ『セクシー田中さん』について」とし、「色々悩んだのですが、今回のドラマ化で、私が9話・10話の脚本を書かざるを得ないと判断するに至った経緯や事情を、小学館とご相談した上で、お伝えする事になりました」と書き出した。

 

  「事実をなるべく丁寧にお伝えしたかったので、とても長いです」と3本に渡る長文投稿で経緯を説明。 

 

 説明にあたり、自身と発行元の小学館で「改めて時系列にそって事実関係を再確認し、文章の内容も小学館と確認して書いています」とし、「私達は、ドラマの放送が終了するまで、脚本家さんと一度もお会いすることはありませんでしたし、監督さんや演出の方などドラマの制作スタッフの皆様とも、ドラマの内容について直接、お話させていただく機会はありませんでした。ですから、この文章の内容は私達の側で起こった事実ということになります」と前置きした。  

 

 作品について「一見奇抜なタイトルのふざけたラブコメ漫画に見えますが…自己肯定感の低さ故生きづらさを抱える人達に、優しく強く寄り添える様な作品にしたいという思いが強くあり、ベリーダンスに纏わる方々の思いにも共鳴しながら、担当編集と共に大切に描いてきた漫画です」と思い入れを強調。

 

  ドラマ化に向けては、当初の数話のプロットや脚本をチェックして6月上旬に最終合意。「セクシー田中さん」は連載中で未完のため、①必ず漫画に忠実に②未完の漫画の今後に影響を及ぼさないよう「原作者があらすじからセリフまで」用意する③「原作者が用意したものは原則変更しないでいただきたいので、ドラマオリジナル部分については、原作者が用意したものを、そのまま脚本化していただける方を想定していただく必要や、場合によっては、原作者が脚本を執筆する可能性もある」という3つの条件を、小学館を通じて日本テレビに出したという。

 

  「これらの条件は脚本家さんや監督さんなどドラマの制作スタッフの皆様に対して大変失礼な条件だということは理解していましたので、『この条件で本当に良いか』ということを小学館を通じて日本テレビさんに何度も確認させていただいた」としたが、条件が守られず、「毎回、漫画を大きく改編したプロットや脚本が提出されていました」と明かした。

  よくある王道の展開への変更や、原作から大きくかけ離れた別人のようなキャラクターに変更などがあったほか、作品の核として大切に描いたシーンも大幅にカットや削除されたと指摘。

 

  「まともに描かれておらず、その理由を伺っても、納得のいくお返事はいただけない。といったところが大きなところですが、他にも細かなところは沢山ありました」と振り返った。それでも「粘りに粘って加筆修正し、やっとの思いでほぼ原作通りの1~7話の脚本の完成にこぎつけましたが…」と7話までは脚本を作り上げた。

 

  しかし、芦原さんがあらすじ、セリフを準備した8~10話のドラマオリジナルも当初の条件は守られず、大幅に改変した脚本が提出されたという。「8話だけ、何とか改変前の内容に修正させて頂いて日本テレビさんにお渡しすることになってしまいました」。9・10話に関する小学館と日本テレビとのやりとりに「時間的にも限界を感じた」として、「原作者が用意したものをそのまま脚本化していただける方」への交代を依頼する事態に発展した。

 

  結局、9・10話の脚本は、プロデューサーの要望を取り入れながら芦原さんが書き、脚本として成立するよう日本テレビや専門家で内容を整えるという解決策をとった。

 

  「何とか皆さんにご満足いただける9話、10話の脚本にしたかったのですが…。素人の私が見よう見まねで書かせて頂いたので、私の力不足が露呈する形となり反省しきりです。漫画『セクシー田中さん』の原稿の〆切とも重なり、相当短い時間で脚本を執筆しなければならない状況となり、推敲を重ねられなかったことも悔いてます。9話、10話の脚本にご不満をもたれた方もいらっしゃるかと思います。どのような判断がベストだったのか、今も正直正解が分からずにいますが、改めて、心よりお詫び申し上げます」と詫びた。

 

  また、「最後となりましたが、素敵なドラマ作品にして頂いた、素晴らしいキャストの皆さんや、ドラマの制作スタッフの皆様と、『セクシー田中さん』の漫画とドラマを愛してくださった読者と視聴者の皆様に深く感謝いたします」と結んだ。

 

芦原妃名子さんの消されたTwitter投稿全文はこちら

関係者の見解は?

 芦原さんの投稿に業界関係者も次々と反応。自作が「霊媒探偵・城塚翡翠」(日本テレビ系)として2022年10月にドラマ化され放送された小説家の相沢沙呼さんは、直接言及はなかったものの自身のX(Twitter)へ「改変されて面白くなることもあるでしょうけれど、許可を得ずにやってはいけないと思います」「関わった人たちがみんな原作を愛していないかというとそうではないはずなので、なかなか難しいですよね」と投稿しました。相沢さんは自作の映像化に脚本家としても参加した立場です。 

 

 また、2023年10月に放送されたドラマ「18歳、新妻、不倫します。」(テレビ朝日系)の原作者・わたなべ志穂さんは同じ漫画家という立場から「芦原先生はとてもリスクを持ち発言されたと思います」とポスト。映像現場において原作者には「味方はあまりに少ない」と打ち明け、芦原さんの発信が肯定的に受け止められていることへ「救われた作家は沢山います」と感謝をつづりました。

 

  その他『のだめカンターびれ』の二ノ宮知子さんや、『フリーター、家を買う。』の有川浩さんらは原作者サイドから、「鋼の錬金術師」(TBS系)といったアニメや、東映特撮作品に数多く関わる會川昇さんは脚本家の立場から、それぞれの意見や見解をSNSに投稿しています。