日経メディカルに
3回目の対談記事(2.26)がありましたので紹介いたします。
なお、情報の垂れ流しである事をご理解願います。
徳田均の「呼吸器診療、これでいいのか?」
対談◎間質性肺炎診療の落とし穴【その3】
慢性過敏性肺炎では徹底した抗原回避を
2020/02/26
徳田均 × 宮崎泰成(東京医科歯科大学統合呼吸器病学)
徳田均氏が日々の診療で感じた疑問や問題意識を専門家や研究者にぶつけ、解決策を探るシリーズ。間質性肺炎を専門とする東京医科歯科大学統合呼吸器病学分野教授の宮崎泰成氏との対談の最終回となる今回は、慢性過敏性肺炎の治療や患者指導を中心にお話しいただきました(編集部、文中敬称略)。
徳田 慢性過敏性肺炎(CHP)が強く疑われる場合、抗原回避のための環境整備について、どのように指導すれば良いのでしょうか。
宮崎 過敏性肺炎では、抗原回避が治療の原則となります。徹底して抗原を排除してもらいます。例えば、鳥関連過敏性肺炎であれば、羽毛布団やダウンジャケットを、本人が使わないのはもちろん、同居人が使用したり、押し入れに保管しているだけでも病状が悪化することがありますので、家の中から全てを破棄してもらいます。
徳田 玄関だけを共有している二世帯住宅で、2階で使っている羽毛布団が原因で、1階の住人のCHPが悪化したケースを経験したことがあります。このケースでは2階に住む親の羽毛布団も処分してもらいました。
宮崎 ダウンジャケットも要注意です。冬場は、満員電車に乗らないように指導します。他の人が着ているダウンジャケットの羽毛が影響するからです。間質性肺炎が症状を伴って急性に増悪するというよりも、KL-6の数値などが上がって肺機能が少しずつ悪くなることが多いようです。繰り返すと線維化が進みます。
他にも例えば、車の掃除や仏壇の掃除に使う羽毛のハタキも破棄してもらいます。羽毛製品は色々なところで使われていますので、気をつける必要があります。また、鶏糞は家庭菜園でよく使われており、案外、見落としがちです。
徳田 外出時の生活指導はどうしていますか。
宮崎 N95マスクを推奨しています。
徳田 抗原の粒子の大きさから考えると、最近販売されているインフルエンザ用のマスクでも対応できるように思いますが、やはりN95マスクですか。
宮崎 通常のマスクだと、装着したときマスクと皮膚との間に隙間ができ、そこから抗原が侵入します。N95マスクであれば、ゴムをギュっと締めることで隙間からの侵入が防げます。
通勤経路にも気をつけてもらっています。ムクドリがたくさんいる樹木の下を通っていた患者には通勤経路を変えてもらいました。その患者は、ここ数年、うまくコントロールできています。
徳田 抗原回避が難しい場合はありませんか。
宮崎 あります。例えば、鳥のブリーダーで鳥関連過敏性肺炎になったが、鳥の飼育がやめられないという患者がいました。愛好家にとっては命よりも大切ということもあるわけです。他にも、しめじの栽培業者でキノコ肺になった人では、栽培をやめると収入の道が断たれてしまいます。容易に回避できない場合は工夫が必要です。
徳田 そういう場合はどうするのでしょうか。
宮崎 鳥のブリーダーの人では、鳥の飼育部屋を陰圧にして、通気口にはフィルターを付けて抗原が外に出ないような環境で飼うようにしてもらったところ、症状や検査値が安定しました。しめじ農家の患者は、N95マスクを使って仕事をしていただき抗原回避をしています。
徳田 ハウスクリーニングについては、専門業者に依頼すべきなのでしょうか。
宮崎 CHPの原因抗原の多くはホコリに含まれ、家の至るところに存在します。ですから専門業者による徹底的なハウスクリーニングは有用でしょう。
徳田 空気清浄機はどうですか。
宮崎 空気清浄機も使います。抗原が外から入ってくる可能性を考え、私は窓を閉めて空気清浄機を使うように指導しています。
徳田 私は、リビングと寝室に1台ずつ設置するよう指導しています。
宮崎 基本的には、長く過ごす場所に置くのがよいと思います。睡眠時間は8時間近くあるわけですから、寝室は必須です。あとはリビングです。先生のおっしゃるように、2台設置すれば、自宅で過ごす時間の大半はカバーできるのではないでしょうか。
抗線維化薬の投与には専門家の判断が必須
徳田 CHPと診断した場合、ステロイドや抗線維化薬による治療はどう考えますか。
宮崎 炎症がある場合はステロイドを使用します。慢性化して線維化してきたときの薬物治療については、まだ結論が出ていませんが、最近の論文では、抗原回避の指導を十分実施しステロイドによる治療を行っても半数は線維化が進行するという結果が示されています。実際、そうしたケースはありますので、その場合、抗線維化薬を検討します。抗線維化薬の投与には、専門家の判断が必要でしょう。
徳田 国際ガイドラインでは、高分解能CT(HRCT)画像診断における典型的な特発性肺線維症(IPF)像である「UIPパターン」を呈している場合、気管支鏡検査(BAL)や肺生検を施行せずIPFと判断して、条件が整えば抗線維化治療を実施するよう推奨しています。
一方で、2013年にLancetに発表されたスペインの研究では、画像(一部病理)からIPFと診断された46例を2~7年間フォローし、その間、CHPではないかと問題意識を持ち診察のたびに問診や必要に応じて再検査(VATSを含む)を行ったところ、実に22例(43%)がCHPに診断変更となったと示されています。その施設特有のバイアスがあるとしても、かなり衝撃的な数字です。
この数字を見ると、画像所見だけでBALを行わずにIPFと診断し、抗線維化薬の投与を開始するという国際ガイドラインに示された方法では、多くの患者に甚だしい不利益をもたらすことになります。まず必要な抗原回避の指導を受けることができないわけですから。仮にIPFと診断して治療を始めたとしても、診療のたびに「この診断は正しいだろうか」と再考する意識を持ち、必要があれば躊躇なく再検査するという取り組みが必要だと思います。
宮崎 同感です。一度つけた診断でも常に見直す必要があると思います。特に慢性過敏性肺炎は、季節変動もあり、時間をかけないと診断できない疾患です。
徳田 当院では、外科的肺生検は一部の症例でしか行っていませんが、CHPを疑い十分な環境指導を行うと少しずつ良くなるケースを多く経験します。治療的診断ではありますが。
宮崎 我々は、3年ほど前から間質性肺炎の全患者を登録しています。診断過程、予後、診断の分布などのデータを蓄積しています。そのデータによるとCHPの診断をつけるのに、3~6カ月はかかっています。
徳田 経過を見ていく中で、ようやく全貌が見えてくる疾患といえそうですね。肺に起こる疾患は、環境中に存在する様々な粒子と、体の免疫の対話で成り立つわけですから、環境が変われば病気の姿も変わるし、宿主免疫が変われば病気の姿も変わるということなのでしょうね。間質性肺炎についても、特にアレルギー性のものについては、時代とともに変化していくといえそうです。
宮崎 環境と遺伝が個人の免疫を変化させることも考慮したいです。
徳田 他の分野に比べて、呼吸器疾患は時代とともに最も大きな変貌を遂げるのだと思います。我々医師は、常に情報をアップデートし、新たな可能性を考えながら診察に当たる必要があるといえますね。本日は、ありがとうございました。
著者プロフィール
1973年東京大卒。癌研究会付属病院(現、がん研有明病院)、結核予防会結核研究所付属病院(現、複十字病院)などを経て、1991年より社会保険中央総合病院(現、JCHO東京山手メディカルセンター)呼吸器内科部長。現在も非常勤ながら臨床の最前線に立ち続けている。