日経メディカルに

2回目の対談記事がありましたので紹介いたします。

前回 間質性肺炎 徳田記事1(20.1.22)

なお、情報の垂れ流しである事をご理解願います。

 

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徳田均の「呼吸器診療、これでいいのか?」

対談◎間質性肺炎診療の落とし穴【その2】

その患者、本当に特発性肺線維症ですか?

2020/02/05

徳田均 × 宮崎泰成(東京医科歯科大学統合呼吸器病学)

 

 徳田均氏が日々の診療で感じた疑問や問題意識を専門家や研究者にぶつけ、解決策を探るシリーズ。第1回目は、徳田氏が昨今、特に患者数が増えていると感じている間質性肺炎についてです。間質性肺炎を専門とする東京医科歯科大学統合呼吸器病学分野教授の宮崎泰成氏に、急性型と慢性型に分けて、診断の進め方やコツなどをお話しいただきました。今回は慢性型の間質性肺炎についてです(編集部、文中敬称略)。


徳田 前回(関連記事:間質性肺炎増加の陰に卓上型加湿器の流行!?)は急性の間質性肺炎についてお尋ねしましたが、慢性に経過する間質性肺炎に話題を移しましょう。最近は慢性経過の間質性陰影に遭遇することが増えています。胸部画像で広範な網状影を呈し、慢性の咳、労作時息切れが主徴となりますが、無症状のケースも存在します。

 

 慢性の間質性肺炎の中で、特発性間質性肺炎(IIPs:Idiopathic Interstitial pneumonia)が強調されています。特発性間質性肺炎とは、原因を特定し得ない間質性肺炎の総称で、特発性肺線維症(IPF)など7疾患が含まれます。それ以外で重要なのが、宮崎先生方が専門とする慢性過敏性肺炎(CHP:chronic hypersensitivity pneumonitis)、そしてリウマチ膠原病関連の間質性肺炎、またわが国では少ないですが、サルコイドーシスなどがあります。

 

 慢性間質性肺炎のうち、どの疾患がどの割合で存在するかの統計は多くありません。わが国の難病情報センターの数字では、IPFの有病率は10万人当たり10.0人となっています。米国の数字では10万人当たり5~16人とされています。

 

 一方わが国のCHPの有病率は10万人当たり1人程度とされ、IPFとCHPの比率は10対1程度とする報告が多く、CHPはIPFに比べて少ないとされています。2000年初めに出されたスペインからの報告では6対1程度で、世界的にもCHPはIPFに比べて患者数が少ない疾患だとされてきました。

図1 慢性間質性肺炎の推定内訳
(出典:N Engl J Med. 2018;378:1811-23.)

 ところが、2018年にNEJMに掲載された、米国ニューヨークの間質性肺炎の専門家による総説では、著者たちの施設の慢性間質性肺炎の内訳は、IPFが20%、CHPが20%、膠原病肺が20%、サルコイドーシスが20%と推定されています(図1)。特定の施設のデータとはいえ、わが国で慢性間質性肺炎の代表とされているIPFがわずか20%にすぎず、CHPが同程度の頻度だというのは、驚くべき数字です。IPFの専門家によるトップジャーナルでの発表だけに、インパクトも大きかったです。

 

 とはいえ、私にとってはこの数字は、非常に納得できるものです。他院でIPFと診断され紹介されてくる患者で、画像で上肺野優位などIPFらしからぬ所見が見られ、詳しく評価するとCHPが疑われる患者が少なくないからです。生活環境に関する問診を丁寧に行い、確定診断がつかなくても、羽毛製品の除去など厳格な環境整備をしてもらうと、咳・痰などの症状が軽減し、炎症反応の指標となるKL-6が減少、さらに肺機能の改善が見られます。

 

きちんと原因を検索していけばIPFの診断は減る

 市中病院ですので、実施できる検査に制限がありますが、このようなかたちでCHPと臨床診断されるケースが少なからず存在し、IPFよりもCHPの方が多い印象すら受けています。

 

 肺疾患は環境の影響が大きいので、全国どこでも同じ傾向かどうか分かりませんが、少なくとも都市部においては、IPFは減少しCHPが増加しているように思うのですが、東京医科歯科大学医学部附属病院ではいかがでしょうか。

東京医科歯科大の宮崎泰成氏。(写真:秋元 忍)

宮崎 我々の病院では、原因が特定できない間質性肺炎、つまりIPFは10%程度です。若年性の遺伝性肺炎が5%程度、膠原病関連が30%程度です。粉塵病関連(いわゆる塵肺)では典型的な石綿肺はほとんどなくなりました。残りがCHPです。

 

 基本的に慢性間質性肺炎で原因のないものはないと考えていますから、当院では徹底した原因検索を行っています。早い段階でIPFと診断してしまうとIPFの割合は増えます。特発性、つまり「原因が不明である」とするのは簡単ですが、原因は必ずあると考えて原因検索の努力を続ければ、原因が見つかることがあり、徳田先生のおっしゃる通り、IPFの割合は減っていきます。

 

徳田 少なくとも大都市では、きちんと原因を検索していけばIPFは少なく、CHPが多いという傾向にありそうですね。

 

徹底した問診が過敏性肺炎の診断には必須

徳田 隠れた原因がないか常に考えることが大切ですが、とはいえ、慢性間質性肺炎の鑑別については、国際的なコンセンサスが得られたフローチャートがないのが現状です。

 

 IPFについての米国胸部医学会/欧州呼吸器学会/日本呼吸器学会/ラテンアメリカ胸部医学会の国際診断ガイドライン(ATS/ERS/JRS/ALAT合同声明、2018年)では、新たに見出された明らかな原因のない成人の間質性肺炎について、疑うべき疾患としてIPFを中心とした診断の流れが示されており、他の疾患の鑑別、すなわちCHPや膠原病関連肺炎、薬剤性肺炎、塵肺などの除外診断についての記述は少ない。特にCHPについては具体的な記述が乏しいです。

 

 一方、CHPの専門家が作成した指針(Salisbury et al, 2017)では、慢性間質性肺炎で疑うべき疾患の第一にCHPを挙げて、それを中心に診断を進めるフローチャートが示されています。どちらも、偏ったフローといえます。ニューヨークの専門家が言うようにIPFとCHPの発症頻度が同程度であるならば、その両方を疑って鑑別診断を進めるべきだと思いますが、そのようなフローチャートは残念ながら存在しません。この点については、どうですか。

 

宮崎 間質性肺炎は、IPFであれ膠原病関連であれ、十分に問診しないと診断がつきません。また、過敏性肺炎では原因となる抗原は多岐にわたり、原因検索には様々なことを確認する必要があります(表1)。私は、場合によっては患者の家まで訪ねて確認することがありますが、そこまでしないまでも、問診は丁寧に進めていただきたいと思います。血液検査などの結果で簡単に診断がつく疾患とは異なる難しさがあるといえます。

表1 過敏性肺炎の主な原因抗原 
(日内会誌.2017;106:1212-20より一部抜粋)

徳田 慢性過敏性肺炎については、臨床的な実感として、急性型と同様、夏型過敏性肺炎が減少しているように感じています。逆に増えているのが、鳥関連慢性過敏性肺炎ではないかと。羽毛製品の使用の増加に加えて、羽毛が過敏性肺炎の原因抗原になることが広く認識され、鑑別診断が注意深く行われるようになったことにも関係があるといえるでしょう。わが国で、原因抗原は何が多いのでしょうか。

 

宮崎 鶏糞や羽毛などが抗原となる鳥関連過敏性肺炎が多く、慢性過敏性肺炎の6割程度を占めるとされています。鳥関連過敏性肺炎で多いのは鳩で、主に糞が原因となります。

 

徳田 かつて伝書鳩を飼うのがブームだった時代があり、今の60~70歳で伝書鳩に熱中していた人がいますね。

 

宮崎 随分減っていますが、未だに鳩小屋が多い場所はありますよね。あとはムクドリですね。都市部でも夕方になると特定の場所に集まってきて問題になっています。インコや文鳥なども飼育していればCHPの原因になり得ます。最近多いのは、羽毛によるものです。羽毛布団やダウンジャケットの使用が増えていることが原因です。さらに、家庭菜園で使用する鶏糞も抗原になります。

 

徳田 羽毛布団など通常の生活の中にも隠れた抗原が多々あります。徹底した問診によって原因抗原を特定する必要があるでしょう。国際ガイドラインにも「CHPの診断には問診が大切」と書かれていますが、残念ながらどのような問診が必要かは提示されていません。そもそも国際的に承認された問診票がありません。

 

宮崎 国によって生活環境や文化が違うので、国際的な標準問診票を作成するのは難しいかもしれません。家の中で鳥を飼っていたり職業的に鳥への曝露が多かったりする国や地域もあります。フランスでは、牧畜業が多いので農夫肺が多い。インドにおける慢性肺疾患の登録データを見るとと、半分が過敏性肺炎でほとんどが急性です。原因は大気汚染と考えられています。とはいえ、問診は非常に重要ですから、包括的な問診表を作成し漏れなくチェックできるようにする必要があります。

 

 当院では自宅や周囲の環境について26項目におよぶ詳細な質問表を用意して、間質性肺炎の患者全てに聞き取りをしています(表2)。

 

表2 自宅および周辺環境についての問診票

徳田 質問項目は多岐にわたっていますね。IPFと診断されて当院に紹介されてくる患者に聞くと、前医においてこうした確認がなされていないことが残念ながら多いのが実情です。徹底的に環境要因を検索する必要性が周知されていないようです。国際ガイドラインでも「徹底的に問診すべし」と書いてありますが、その記載は、目立たない箇所にあるため、しっかり読まないと見つかりません。

 

宮崎 日本のIPFのガイドラインにも、「IPFの診断にはまず原因が明らかな間質性肺炎を除外すること」と書いてありますが、非常に簡潔で、扱いが小さ過ぎるように思います。線維化は不可逆的なので、過敏性肺炎の場合には早い段階での環境整備が重要です。逆に言えば、早めに抗原回避をすれば進行が止まり、症状も良くなります。

 

徳田 正しく診断をつけて、原因を取り除くことが非常に大切ですね。

 

家や職場から離れる抗原回避試験が有用

 

JCHO東京山手メディカルセンターの徳田均氏。

徳田 CHPを疑ったときに、一般医が行うべき検査にはどのようなものがありますか。

 

宮崎 夏型過敏性肺炎については、抗トリコスポロン抗体検査があります。感度、特異度ともに80%以上と有用な検査です。一方、鳥関連過敏性肺炎を疑った際に保険診療で使える検査はありません。

 

 自費であればインコ、オウム、鳩に対する抗体検査が可能です。ただし、急性の過敏性肺炎では感度、特異度とも高いのですが、慢性では感度、特異度ともに50%程度です。現在、当院を中心に多施設で研究を進めており、スクリーニングが可能な抗体検査について、近々論文で報告する予定です。

 

徳田 それは楽しみですね。ところで、気管支鏡検査は一般の病院でも行うべきとお考えですか。

 

宮崎 CHPの患者には気管支鏡検査は積極的に行うべきでしょう。気管支肺胞洗浄(BAL)液の所見は疾患ごとに異なるので、参考所見として有用です。リンパ球の比率が高い場合は、特発性肺線維症以外の、CHPを含む間質性肺炎または他疾患による肺病変の可能性が示唆されます。

 

 経気管支肺生検(TBLB)は、特発性間質性肺炎を病理組織学的に確定診断する手段ではなく、癌や肉芽腫の参考所見や鑑別診断において意義があります。病理所見の診断には熟練を要しますので、積極的には勧められませんが、できればやった方がいいのではないかと思います。

 

 他には、抗原回避試験が有用です。2週間、家や職場から離れることで、KL-6や白血球、血中酸素濃度などの指標が改善するかどうかを見ます。改善する場合、家や職場の環境に原因抗原がある過敏性肺炎の可能性が高いと考えられます。

 

徳田 2週間の入院というのはハードルが高いですね。やはり2週間は必要ですか。

 

宮崎 急性であれば1週間でも分かりますが、慢性では最低でも2週間は必要です。むしろもっと長い方が良いと思っています。患者は無自覚のまま抗原に曝露している場合が多く、自宅や職場の環境に原因抗原が存在すると分かれば、確定診断に近づけます。

 

徳田 KL-6の値はどのように解釈すればいいでしょうか。

 

宮崎 KL-6が5000 U/mLを超えるケースでは、過敏性肺炎、膠原病間質性肺炎、サルコイドーシスという鑑別が挙がります。特に5000を超えるケースでは、過敏性肺炎の頻度が高いので、常に念頭に置くべきでしょう。一方、IPFでは5000 U/mLを超えることは少ないです。ただ、過敏性肺炎でKL-6が5000 U/mL未満のケースも少なからず存在します。線維化が進むと、かえって数値が低下する場合もありますので、これだけでは鑑別できません。

 

徳田 KL-6の季節変動はいかがですか。

 

宮崎 冬場にKL-6の値が上がり、暖かくなると下がるという波を数年繰り返しているケースの多くは鳥関連の過敏性肺炎です。冬場に羽毛布団やダウンジャケットを使うことが原因となっています。KL-6の季節変動については、当科で研究し論文を出していますが、1つの指標になるでしょう。

 

徳田 医科歯科大学病院では、CHPが疑われる患者にどのような検査を行っていますか。

 

宮崎 先に示した検査以外では、鳥関連過敏性肺炎を疑う、あるいは否定したい場合には、精密な検査として、抗原吸入によって症候の再現を調べる抗原吸入試験を行います。感度・特異度ともに90%以上あり確定診断に有用ですが、抗原吸入は慎重に行う必要があり、症例を絞って行っています。

 

 さらに、必要に応じて、家の中のホコリを採取して含有する鳥抗原量を定量する検査も行います。鳥関連過敏性肺炎が疑われるが、家中の抗原となり得るものを処分してもらっても症状や検査値が改善されない場合に行います。外から入ってくるホコリなどに抗原が含まれていることもあるためです。

 

         

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著者プロフィール

1973年東京大卒。癌研究会付属病院(現、がん研有明病院)、結核予防会結核研究所付属病院(現、複十字病院)などを経て、1991年より社会保険中央総合病院(現、JCHO東京山手メディカルセンター)呼吸器内科部長。現在も非常勤ながら臨床の最前線に立ち続けている。

連載の紹介

徳田均の「呼吸器診療、これでいいのか?」

長年、市中病院で呼吸器診療の最前線に立ち続けている徳田均氏が、日々の診療で感じた疑問や問題意識を専門家や研究者にぶつけ、解決策を探るシリーズ。身近な呼吸器疾患に潜むピットフォールや、専門医でなくても知っておきたい呼吸器内科の最新トピックスを対談形式で紹介します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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