ぞわぞわするような幻想小説です。14作品を集めた短編集ですが、どれも引き込まれる名作ぞろい。ホラー感もありですブルブル![]()
トップを飾る「アイスクリーム帝国」
「共感覚」を持つ少年の話。チーズの味を三角形と感じたり、アコースティックギターの調べで金色の雨が降り注いだり。ある日街のショップでコーヒーアイスクリームを食べたとき、美しい少女の姿が出現する。幻の少女に会いたくてアイスをどんどん食べるようになるが・・・・
想像をはるかに超えて展開する物語です。
表題作の「最後の三角形」
主人公は薬物依存のホームレスの男。ある寒い夜に男は開けっ放しのガレージを見つけて転がり込む。禁断症状でうずくまっていると、家の主の老婦人が銃を手に現れる。しかし彼女はストーブと食料を与えて男にここにいてもよい、と告げる。
とまぁその辺まででもドラマティックに面白く描かれるのですが、この物語のキーは、町のどこかに描かれたある印、そして仕掛けられた最後の三角形の魔術。もう・・スゴイの一言です、その後の展開が。
と書いていくときりがないので、端折りますがww
例えば「タイムマニア」の少年は(ハーブの)タイムのお茶を飲むことで悪霊から離れていたが、強力な悪霊と対峙するためにたくさんの乾燥タイムを口に押し込んで・・・とか。
優秀な戦闘兵器として作られ、異星人の侵略から人類を守ったロボットの晩年?を描く「ロボット将軍の第七の表情」
あるいは「恐怖譚」では、死んでいるのに呪文によって生きている子供を、あのエミリー・ディキンスンが言葉で殺そうとするのです
ディキンスンの詩句がいくつも出てきます。
どこからこんな着想が?
と驚かされます。トンデモ話のように聞こえるかもしれませんが、巧みな文章で夢中で読んでしまいます。
この作者の作品は他に一つだけ読んでいて、これも類をみないような力作でした。
この「言葉人形」はけっこう深い精神性?みたいなものを感じましたが、今回の作品はより強力な物語性、幻想奇想集という感じでしょうか。
ファンタジー好きには絶対お薦めです。

