近未来を描く音楽SF小説です。ちょっと異色かも。

 

アメリカのあちこちで連続爆破テロが起きる。時をほぼ同じくして恐ろしい感染症が発生。それまでの「前時代ビフォア」とは全く違った、恐怖と厳しい規制のもとで暮らさざるを得ない「後時代アフター」を人々は生きている。

 

主人公がふたり。

巨大企業で顧客サービスにあたるローズマリーは、仕事は全てオンライン。アバターで対応し外に出る必要はない。ある日顧客からチケットをもらってライブに出かける。と言っても、もちろんアバターで仮想空間のライブを体験するだけなのだが、それがきっかけで彼女はオンラインライブを制作配信する会社に転職する。ここでの仕事は、ミュージシャンの発掘、スカウト。彼女は、ネットではなくて実際に人が集まる違法ライブにもぐりこんでいく。

しかし、人との接触は危険だ。外は危険だらけだ。

 

人々が多く集まるのは違法、夜間外出も規制されて警官がいつもチェックしてまわっている。仮想空間ではないリアル世界に出ていくことになったローズマリーは、他人がくしゃみするのも恐怖、病気感染をいつも怖れている。

 

もうひとり。ロックミュージシャンのルース。人々を分断する政策に逆らって、リアルのライブを秘密裏にやっている。汗を飛ばしみんなで声を出してこそのロックだ。オンラインで人生の何もかもを、学校も人との付き合いも娯楽も、アバターで済ませる生活でいいのか。人々のチカラを、熱を、取り戻したい。

 

この二人が出会う。しかし、ローズマリーの会社はネット社会をますます推し進めていこうという巨大企業。一方ルースはそういった大企業が全てを支配するような社会を嫌う。分断された繋がりを取り戻そうと闘う立場だ。音楽を愛しその力を信じているふたりなのだが果たして・・・。

 

SF作品ですが特にSF的にすごいガジェットやプロットは無く、普通に近未来を描いた感じです。作品の刊行は2019年、コロナ禍を予言するような世界設定は興味深いと思いました。社会派小説の一面もあり、また熱いライブシーンや音楽への想い、ミュージシャン達を描いた音楽小説でもあります。作者は著作の傍らリアルにプロのミュージシャン活動中。

 

この作者は前に短篇集を読んでいて、それもとても好きな作品でした。短篇集はフィリップ・K・ディック賞など受賞、今回の長編は2020年度ネビュラ賞受賞です。

 

 

 

 

 

 

 

音楽SFなので、図柄がSFなこちらの曲を♪

最近は日々ブリティッシュロックなユーリですwww

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