ミュージシャン活動もやっているという、サラ・ピンスカ―の素適なSF短篇集を読みました。ドリーミィで美しくて愛に満ちている作品集。これはファンになるかも?
一つ目。「一筋に伸びる二車線のハイウェイ」
アンディは事故で右腕を肩からぜんぶ失ってしまった。
病院で目覚めたとき、既にロボットアームが付けられ、動かすためのチップが頭に埋め込まれていた。
退院前日、彼は自分の腕がハイウェイだという夢を見た。
彼の右腕は、自分が実は道路だと知っていた、.コロラドの96㎞の、山へと伸びる道路なのだ・・・・
不思議な話ですよねww でも「ある場所の道路でありながらその場所に身を置いていない」心の痛みは大きくなって。さてこの右腕の運命は?
ラスト泣きましたww というか、これからもちょっと思いを馳せてまいそうです
表題作「いずれすべては海の中に」
終末期の世界、富裕層は陸地を離れ豪華客船に乗り込んでそこで暮らしている。彼らの娯楽の為に雇われたロックミュージシャン。ある時ちょっとした事で救命ボートで船を離れることになり、漂流中の危ない所を助けられる。助けたのは海岸でゴミあさりをして生きている女。
食べ物にも困る状況でのそれからのふたり。
浜に打ち上げられたロックスターから始まって、よくわからない状況が少しずつ語られて行くのがうまいです。しかも抒情的。擦り切れたズタボロ話なのに、何か美しい。この話もラストの一節がとても素適です、ここに表題の言葉が出てきます。いずれすべては・・・
「そして(Nマイナス1)人しかいなくなった」では、並行世界のサラ・ピンスカ―が大勢一堂に集まるがそこでひとりのサラ・ピンスカ―が殺害されるし、また「イッカク」では長旅の運転手として雇われたものの、依頼主のその車はクジラだった・・さらにはユニコーンの角が生えてくるww
等々奇想的なので、読む人を選ぶかも、とも思ったのですが、フィリップ・K・ディック賞を授賞しています。どの作品もなんだか心が暖かくなったりふと懐かしかったり、時に切なかったり、いい作品揃いです
もう一つ長編もあって「新しい時代への歌」 こちらは2020年度ネビュラ賞を授賞。こちらも読んでみたい。
ミュージシャンということなので、曲もぜひ聴いてみたいです!!!