日々、歩行の衰えが進行していく母のために、

何年かぶりにお三度さんをしている。

 

いつ転んでもおかしくない歩行なので、

ガス台の前で作業をすることと、

階段を上ること、下ること、

この二つを母に禁じている。

〝お湯を被って結構な火傷をする〟

〝階段を転げ落ちて捻挫をする〟

この二つは、老人が「寝たきり」へと向かう

代表的な契機だと聞いているから。

 

ところが、この二つが守れない。

朝、何をしにいくんだが、

急な階段がある勝手口のドアを開ける音がする。

昼飯を作るためにお昼を少し回った

ぐらいの時間に降りていくと、

大抵、卵やじゃがいもを茹でている母に出会う……。

そのたび、

「今度見かけたら、飯作らないし、

ゴミ捨ても行かないよ」

と少し強い口調で言っても、どこ吹く風だ。

 

どちらも、自分で出来るつもりなのだ、まだ。

 

4年前に父を喪ってからの母は、

やはり急激に、何もかもへの情熱を

失っているように見える。

我が家へ遊びにきて母の料理を食べた友人たちが、

揃って絶賛するほど達者だった料理を筆頭に、

家事は他者に指導ができそうなほど

完璧にできる人だと思っていた。

だが、こちらが家を出て、三十年の時間を経てから

再び一緒に、しかも今度は二人で暮らし始めた

母親は、少し様子が違っていた。

 

そんなことばかり云っていても、

くだらない愚痴にしかならなそうなので、

その辺にしておこう。

 

とはいえ、久しぶりのお三度さんは、

ちょっぴり楽しかったりもするのだ。

 

今日の昼飯は、少し時間をかけて作った。

昼食時はいつも即席スープを飲むことに

していて、漫画喫茶の飲食コーナーに

置いてあってハマった

「3色スープ」(オニオン・ワカメ・中華)

を買いだめしてあるのだが、

各色20食ずつあるのに、必ず、

中華だけが半分以上余る。

なので中華は、大量に、一気に卵スープとして

飲むことが多いのだが、

今回は、それに少し手を加え、鶏(もも)を

じっくり煮てみた。

まずは600ccのお湯に、

スープ粉末を4袋入れ、グツグツと。

20分ほど煮込んで、鶏の旨みが出てきていたら、

そこで味調整。フライドオニオンにおろしニンニク、

鰹の出し粉とチキンコンソメを少々……。

その後さらに20分ほど煮込んだら、

フライパンにバターを敷いて、

ピーマン、にんじん、なすをサッと炒め、

粗挽きのソーセージと一緒に鍋に投入。

そこから弱火で10分ほど煮込み、

最後に卵を三個溶き入れれば完成。

 

チキンとたっぷり野菜煮溶きタマゴスープ中華風。

サイドには、外した鶏皮を焼いたものを

細かく切って、刻みネギとおろしポン酢で和えたヤツ。

 

「スープ、まだある?」

 

とスープ皿を差し出してくる母に、

「あるよ」と、いつかのドラマで

どっかのバーテンが言ってたセリフで返した。

 

 

買い物は、週一のパルシステムと、

ハナマサ系のスーパーマーケットが週に一度。

野菜以外で必ず買うのは、

・ロッテリア系の味がするフライドポテト

・冷凍豚ひき肉600g ・冷凍粗挽きソーセージ

・昔あげ(油揚げ) 

・サラダ用でない、長い焼きちくわ

・豆腐 ・納豆

精肉はほぼ豚肉だが、ヒレならぱパル、

バラならスーパーの方の3枚肉ジャンボパック。

 

↑  すみません。

明日買い物に行くので、メモがわり(苦笑)。

 

かように、家政婦さんのような生活を送っている、

今日この頃のセミリタイアードライター。

なんだそれ。

 

 

先日、久しぶりに大遊びを共有した先輩に、

 

「嫁もらえよ。まだ間に合うよ」

 

と現状の私について言われたので、

 

「あ、先輩それ、差別発言っすよ。

 女性にも、オレにも」

 

と、言い返しておきました。合ってるよね?

 

ご清聴、ありがとうございました。

 

 

東京Xの薄切りバラ肉をさっと炙ったのを

入れた豚汁は、ポテサラ用のふかしジャガイモを

入れるとクリーミーで脂の甘さが引き立って、

なんとも美味い。それで丼飯を食った後、

ねこまんま状態にしたものを飼い黒猫にやって、

布団に入って5秒で入眠。

 

たぶん夜中、爆音で目覚める。

昭和の歌謡曲が、コンサート会場ばりの爆音で流れている。

スピーカーを載せているのは二人乗りの中型で

ゴリゴリのヤンキーバイク。

わらわらと20台ほど。

運転もケツ乗りも、よく見ればみんな知り合い。

てか、老若男女のご近所衆。

〝何やってんだコイツら?〟

と思いながら、2階の自室の窓を開け、

そいつらと握手をしようと手を伸ばす自分。

〝何やってんだオレ?〟

と思っているうちに、手がルフィの腕ばりに

ゴム伸びして、全員と握手する。

 

老若男女の手の感触を噛み締めながら、

自室の前に広がる小学校の校庭の上に広がる

夜空に目を向けると、ぶったまげた。

 

夜空を親子連れの鹿が跳ねている。

よく見るとそれは、星々が描く星座。

星座といっても星々は異様なほどに細かく、

金色に輝いて、親子の鹿を点描している。

その点描は、金色単色のアニメーションのようで、

涙が出るほど美しかった。

 

なんなんだろうな、これ?

ファンタジックな光景に目を奪われていると、

「にゃあ」と鳴き声。

黒猫だ。階段の踊り場の方から、目だけが光っている。

光る目が語っている。

「美味い豚汁の礼に、いいもん

 見せてやるから、こっちこい」

と横柄に言っている。

 

階段の踊り場へ行くと、黒猫は

信じられないような敏捷さで、

階段状になっている壁の小さな棚を

ステップアップして、

飾り窓の出っ張りにゴロンと寝転び、

首を右に振って、目で言った。

「ほら、観てみろよ」

 

観てみろよったって、飾り窓はオレの

頭上3メートルぐらいのところにあるし。

オマエみたいにステップアップして

そこまで行くなんて無理だよ。

なんてなことを思っていたら、

猫の尻尾が異様に伸びてきて、

こちらの尻に巻き付いたと思ったら、

ぐん!と持ち上げられて、気がついたら

飾り窓のすぐ下の棚に腰掛けさせられた。

棚はいつの間にか椅子サイズの尻敷になっている。

足をぶらぶらさせながら腰掛けると、

目線の高さはちょうど飾り窓の真ん中あたり。

こりゃいいやと思って、左を向き、

さっき黒猫が観ろと言った

飾り窓の外に目を向けると……

 

小学校の校庭が広がっているはずのそこは、

コンサート会場だった。

コンサート会場というより、大きなライブハウス?

待てよ? ここ、来たことあるな?

そうだ。むかし、ソウルシンガーのJoeのライブを

聴きにきた、その頃できたばかりのビルボード東京だ。

 

向かいにうずくまっている黒猫を見やると、

ヤツは目を閉じ、アゴを足の上に乗せて、

何かに聴き入っている。

まあ当然、ライブの音なんだろう。と思っていると、

いきなり音がこちらの頭の中にも飛び込んでくる。

ステージでパフォームしているのは、

背の高い黒人シンガー。

あ、ルーサーじゃん。ルーサー・ヴァンドロスじゃん。

しかも、演ってる曲「SuperStar」じゃん。

ウェンブリーのライブで伝説になった、

アドリブのスキャットじゃん!

 

スキャットに聴き惚れていると、

いつの間にか背景は明け方の薄暗さになっていた。

ビルボード東京は、ステージ後ろが全面ガラス張りで、

六本木公園を見下ろせるようになっている。

(現在は違うだろう)

よく見ると、上から見下ろす六本木公園の、

薄暗い朝靄の中を、人間の大人が4人、

マラソンより少し速いぐらいのスピードで、

横列を組んで駆けている。

異様なのは、彼らが皆、全裸で

それぞれ違った色に発光していることだ。

男3人は、それぞれ紫・青・オレンジ。

一人だけいる女は眩いばかりの金色。

 

〝どこに向かって走ってんだ? あいつら〟

 

そんなことを考えた途端に、

ライブステージの明かりが消え、音も途絶えた。

その瞬間……目が覚めた。

 

- - - - - - - - - -

 

これが、2026年の初夢。

 

なんなんですかぁ? これ

 

 

 

 

知り合いの、20代後半のバカ息子が刺青を入れた、

という話を聞いた。

しかも、それまでにさんざん悪さをして

就職先が見つからず、母親のツテのツテで

無理矢理ねじ込んでもらった会社(建設業)に

入社する直前に、

「気合を入れるのと見せるために入れた」

のだという。しかも、

だいぶオアシのかかる立派な和彫なんだとか。

 

ここまでいくと、〝アホでどうしようもねえな〟

という感想も出てこない。

むしろ、その思考構造を丁寧に解析して、

脳科学の学会ででも発表したくなるレベル。

 

そんなことを考えていたら、

刺青=タトゥーに驚いたある夜のことを思いだした。

 

自分が30代後半だった頃の六本木の夜。

 

その頃は、二十歳以上年上で独身の、

大手出版社で小説誌の編集長をやっていた大先輩に、

3ヶ月に一度の割合で呼び出され、二人して

六本木や新宿のクラブでどんちゃん騒ぎをしていた。

もちろんそのうちの何割かは取材も兼ねていた

(大先輩の小説誌で『夜遊びに関するエッセイ』の

連載をいただいていた)ので、

経費で落ちることもあったが、半分以上は

その大先輩、いや恩人の奢りだった。

恩人は特に、企画系のクラブが大好きで、

当時官僚接待で話題になった

「ノーパンしゃぶしゃぶ」だの、

女の子が胸の開いた迷彩服で匍匐前進してくる

「自○隊パブ」だの、

超有名AV嬢がママを務める「銀座高級クラブ」

だの、一癖も二癖もある企画飲み屋に行っては、

朝まで大騒ぎをした。

 

そんな店たちの中でも、恩人が大好きだったのが

六本木にあるカウンターパブだった。

ここは、天井近くに酒の注ぎ口が据え付けられていて、

超ミニスカートの女の子たちがお酒を作る時、

カウンターに上って注ぐので……

これ以上の説明は人格が疑われるので避けておこう。

その店で働く女の子たちは、揃って明るく可愛らしく、

男性スタッフたちも陽気で話しやすいので、

恩人はほぼ常連となっていた。

「おめえらのパンツなんて見たくもねえから、

 下のキープボトルで普通に作ってくれ」

という程度には。

 

何回目かにその店を訪れたのは、

クリスマスのすぐ後、年末最終営業日だった。

その店で22:00の待ち合わせで、

いつもよりずいぶん遅いスタートだな、とは思っていた。

店に着くなり恩人は、

「オマエ、今日は朝まで大丈夫だよな?」

と言う。「もちろん」と答えると、

「今日はここでオーラスまで飲んで、

 二次会行こう。場所取ってあるから」

と言うので、いつもは数軒ハシゴなのに

珍しいこともあるもんだ、と思いながら飲み始めた。

 

3時間後、その店のすぐそばにある

有名ビジネスホテルの2階に恩人といた。

「二次会、ホテルの部屋でやるんですか?」

と訊くと、

「いや、ここに新しくできたカラオケボックスを

 押さえてあるんだよ」

と恩人。言うなりスタスタと歩いていく

彼についていくと、煌びやかな入り口があり、

さらにその先に、広々としたカラオケルームが

ガラス越しに見える。

「すごいだろ。風呂付きのカラオケルームなんだよ」

満面の笑顔の恩人が、言いながらドアを開けると、

そこには、4畳半ほどのカラオケスペースがあり、

その奥には、そこそこ大きな洋風風呂(3畳ぐらい?)が

湯気を上げている。

「まずは風呂入るかっ!」と言いながら脱ぎ始めた

恩人は、海水パンツに着替えると、湯の中へ飛び込んだ。

〝え…風呂付きの部屋で二次会? 二人でか?〟

と、戦慄を覚えて立ちすくんでいると、突然後ろから

「えーー!すごーーい!!」

という嬌声が聞こえてくる。振り返るとそこには、

四人の若い女性。あの店の女の子たち。

「先にずるいよー! 今行くからーっ!」

と言いながら四人は、端にある衝立に向こうへと走り、

数十秒後には色とりどりのビキニに着替えて、

続々と風呂へ飛び込んだ。

 

三十分後、異性と風呂に浸かりながら酒を飲み、

他人の歌を聞くという、ストレンジな状況に

やっと慣れてきた頃、部屋のドアをノックする音。

「やっと来たか。入れ入れ」

と言う恩人の声に、三人の男が入室してくる。

あの店の男性スタッフだ。

三人とも本当に好青年で、人懐っこく、

そこそこのイケメンで、細マッチョ。

そんな印象を持っていた。

〝あ、あの店の忘年会をやってあげてるのね、これ〟

と、やっと合点が行った頃、

三人が衝立の向こうから出てくる。

にこやかに歩いてくる三人は、

みんな見事に筋肉質で、

中年太りの自分の体が恥ずかしくなる。

そして三人並んで湯船に入り、ふうっと一息。

少しして、湯上がりに腕をかけようと、

なぜか三人揃って、後ろを向いた。

その瞬間に目に入ったのは……

 

揃いも揃った青い筋彫り。

右から順に、鯉、昇龍、金太郎…

色はまだ入っていないからモノアート。

でも、彫師の腕の良さがわかる見事な出来。

 

正直、面食らった。

彼らは、店で出会うと本当に真面目そうに見えて、

〝3人とも小学校から青学だよ〟と言われても

信じてしまいそうなほど、爽やかだったから。

墨を入れてる=不真面目というわけではないが、

あまりにも普段の印象とそぐわなかった。

 

「あ、見たあれ? 引くよねー」

 

女の子の一人が話しかけてくる。

 

「い、いや、うん……」

 

「後どれくらいかかるの、それ?

 そもそもなんで入れたの?」

 

女の子が男たちの絵を指さしながら訊く。おいおい。

 

「あと半年弱ぐらいかな。

 あそこで生きてくって決めたからだよ。

 決まってんじゃん」

 

言いながら男は、やや鋭い視線を送ってくる。

 

笑い返すしかできなかった……。

 

 

その後は、女の子たちが水着を脱ぎ始めたり、

男たちがジャニーズを歌い始めたりして、

大いに盛り上がったが、あんまり酔えなかった、

 

のちにお笑い芸人が乱行パーティーを開いて話題になり、

すぐに閉店してしまったカラオケボックスでのお話。

ちなみに私たちは淫らな行為は決してしていません。