タクシーの後部客席も、シートベルト着用は義務。
これは知ってる。でも、意外と知られていないのが、
〝ただし、後部座席については罰則はない〟
ということ。正確にいえば、もし、検問などで
着用義務違反が咎められた場合、
運転手が点数を引かれる。
ただし、これも有形無実な話で、検問で
「後部座席のお客さん、シートベルトしてないですね。
切符切るので、運転手さん降りてください」
と言われたなんて話は聞いたことがない。
そんな現実なので、近頃は乗車のたびに
「安全のためにシートベルトをお願いします」
と言われるが、受け流してしまっている。
タクシーの後部座席のシートベルトは、
あまり巨体の客を想定して設置されておらず、
着用すると体全体にかなりの圧迫感を感じて、
気分が悪くなる。
タクシーを利用するときは、
深夜の飲み会後か、二日酔いで
電車に乗りたくない時が多いので、
シートベルトをすると、
おそらく吐き気を催してしまう。
先日は、まさにその〝吐き気〟を
催した朝があった。
その日は朝4時まで飲んで、
ホテルを11時にチェックアウトした。
少し駅までは距離のあるホテルだったので、
いつもの通り、タクシーに乗った。
走り出した途端、耳元で
それほど大きくはないが耳障りな
サイレンの断続音が鳴り響いた。
音がする方を見ると、スピーカーの下に、
〝ベルト警報機装用車〟の目障りな赤いステッカー。
「どうにかならないスか、この音。
体調悪いから、ベルトしたくないんですけど」
とドライバーに言うと、
「すみません、交通法規なので、
していただかないと困りますし、
していただかないと、その音、鳴りっぱなしです」
だって。
結局、シートベルトはしたものの、
腹や胸が締め付けられて気分が悪くなるし、
ベルトの滑車の部分がキィキィとずっと音を鳴らしていて、
不快この上なかった。
もちろん、シートベルトはしなきゃダメだし、
すれば安全性が高まるのも、法律やモラル的にも
してないヤツは社会的にダメなヤツなのも
十分に理解している。
でも、〝ベルト警報機〟とかはどうなんだろう?
客商売としてどうなんだろう? ……
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という話を、その日の夕方に、埼玉で乗った
タクシーの、30代後半ぐらいのメガネチー牛な
運転手に話したら…
「そりゃ、お客さんが悪いですね。
法律違反してるんだもん。
だと。その言い草にカチンときて、言い返した。
「法律違反はしてないよ。
法規違反な。その法規も、
点数は引かれないし」
「いやあ、僕たちが引かれちゃうんですよ、点数」
「引かれたことあんの?
検問で?客が着用義務違反してるから
切符切るって言われたのか?」
「いや、ないですけど…でも
あるかもしれないじゃないですか今後」
「ねえよ。あったとしても、
〝お客様は体調不良のようですので〟
って言えばいいんだよ」
「ああ、そうですか。
ものすごく不快です。
お客さんは、運転手をモノ扱いしてる」
「はぁ? モノ扱いなんかしてねえよ」
「運転手が切符切られるのは
関係ねえっていうんだから、
してるでしょうが、モノ扱い」
「はぁ? 何言ってんだオメエ?
切符なんか切られねえよ!
こっちこそ不快だわ、犯罪者呼ばわりされて。
〝他社さんの話なんでわからないです〟とか
〝そりゃ災難でしたね〟
でいいんだよ受け答えは。
あー、気分わるっ!」
「文句あるなら会社に電話してくださいよ」
「おう、電話してやるわ。
アンタ、名前は?」
「名前は名乗りたくありません。
降車時にレシートをお渡ししますので、
それ見て車番言って貰えばわかります」
ここでは少しまとめてあるが、
15分ほど車内で言い合いになった。
ものすごく気分が悪かった。
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実はその一週間後、この顛末の後日談が
出来上がったので記しておこう。
以下は、揉めた会社と同じ市内にある
別のタクシー会社の老ドライバーとの会話。
「いやぁ、この間、〇〇交通のドライバーさんと、
だいぶ不愉快な口喧嘩になっちゃいました」
「〇〇交通? どんな感じの運転手ですか?」
「30代後半で、短髪メガネの、オタクっぽい…」
「やっぱりアイツか。いや、実は私、昨年まで
〇〇交通におりましてね、十年以上。
そいつとは5年ぐらい一緒に働いてましたが、
いやあ、週に1本のペースで
苦情電話が入ってましたよ、客から。
あまりにひどいんで社長に言ったんですけどね、
辞められちゃ困るもんだから、
一切そいつに伝えないんですよ。
社長は私より少し年下で、昔からの知り合い
だったんですが、その件もあって
なんだか信用できなくなって、
去年、辞めることにしたんです。
その短髪メガネには、辞めぎわに思いっきり
説教とゲンコツくれてやったんですが…
相変わらずなんですね、あのバカ」
