傍線一報227 対決 | 自遊人のブログ

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対決/ 月村了衛 光文社

 

p.310

 日邦新聞の記事がきっかけで、統和医大だけではなく、 他大学医学部や医大における不正の実態も次々に暴かれた。たとえそれが統和医大経営陣の目論見通りであったとしても、国会で取り 上げられる運びにもなったし、今後は入試における差別は一掃されるか、そうでなくても徐々に、 そして確実に減っていくだろう。
 だけど――と菊乃はスプーンを動かしつつ、さらに思考を凝らす。
 監視を怠ってはならない。不正や腐敗は、国民が一瞬でも目を逸らすと、素知らぬ顔であらゆるものに忍び入る。ことに女性差別は厄介だ。
 差別を追及する側の報道人でさえ、意識的、無意識的との区別を問わず、差別心を持っている。この自分もまた例外ではない。
 男と女。性差というものが存在する限り、人間社会から性差別はなくならない。
ーーーでも少しずつ、そう、少しずつでもよい方向に変えていくよう努力し続けることはできる あの夜、神林晴海が言っていた。もっと前には和藤も同じことを言っていた。その通りだと何 度も思う。だから自分は努力を続ける。

 

正義を貫き、社会制度を変えようとする主人公の檜葉菊乃が、朝ドラの佐田寅子に、若い世代の改革意欲を優しく見守る小山内教授が穂高教授に重なってしまう。

手に入れたいものと守るべきものの対決に一瞬たりと目が離せない。