傍線一報228 豊かさとは何か | 自遊人のブログ

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豊かさとは何か/ 暉峻淑子 岩波新書

 

p.19

 技術革新によって、いよいよ強大になった資本主義の生産力は、社会と個人を支配し、動かしていく原動力である。ハイテクノロジーによる効率性や利便性は、もし、人間が無防備、無自覚にそれを受けいれ、流されていくならば、「工業社会の生み出す毒」によって、人間と社会と自然を破壊していく。

 その毒を制し、コントロールするには、抗体としての強い「個」と、社会的制度を、技術革新と資本力におくれないように育てていかなければならない。

 毒を制する対抗手段や制度とは、環境保護や教育や社会保障制度や政治制度や労働のありかたである。そのような抗体を強める一方、 オルターナティヴな、もうひとつの生きかた、社会のありかたを、ヨーロッパの社会はたえず模索している。

 しかし、日本では、潜在的不安を抱きつつも、政財界は巨大な資本力や技術力を讃美し、経済大国に酔っているのだから、社会は、いよいよ自家中毒的に病んでいく一方である。

 

1989年に出版された本とは思えないほど、現在に対する鋭い警告と受け止めた。

技術への妄信は、気候変動と自然環境の破壊に歯止めが掛からない。

豊かさが単に経済の追及の先には見えてこないことに気付かないまま35年も過ぎてしまった。