印刷技術 ローラーストリッピング | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

ローラーストリッピングって書くと、なんかカッコイイんですが、日本語では、

「ローラー・はげ」って言う、まぁ、高齢男性に対するセクハラの様な言葉に

成ってしまいます。・・・こっちだってなぁハゲたくてハゲてる訳じゃないぞ(笑)

 

先日、印刷工場さんで枚葉機の印刷状況を見てたら、端っこの藍の絵柄に

筋状の着肉不良を見付けたんですよ。咬から咬尻に掛けて一直線状態で

着肉不良が発生していました。なんじゃこりゃ?と、いろいろ推測してみた

んですが、この場合、最も怪しいのは、ブランケットの凹みですよね。

 

A全判の紙を印刷していて、その着肉不良が、四六半切判の紙端の位置と

ピッタリだったので、紙端の紙粉がブランに蓄積して、ブランを凹ませてしまう

ってヤツだと思ったワケです。印刷機を停止してブランを見てみると、やはり、

その位置に、筋状の凹み跡が有りました。こりゃ即、ブラン交換ですわね。

 

んで、ブランを新品に替えたんですが、これがね、直らないんです。なんで?

「このまま刷るの?」って訊くと、「これくらいなら、全く大丈夫な印刷物なので、

このまま行きます」との事。んじゃまぁ、ゆっくり原因を探ってみようと、まずは

水回りのローラーから見てみました。・・・暗いから懐中電灯は必須ですね。

 

水系のローラーには、その位置にトラブルが発見出来なかったので、順番に

上の方に向かって、インキローラーを確認して行ったんですよ。そしたらね、

水ローラーのすぐ上の、金属製のインキ移しローラーの端に、インキハゲが

起ってしまっている事を発見しました。これって、これが正常な状態か?

 

あまり詳しくは知らない印刷機なので、それが正常な状態かどうかが私には

分かりません。でももし、ローラーハゲであるならば、確認方法は簡単です。

そのハゲてしまっているローラーの部分に、自分の口から息を強く吹き掛け

てやるんですわ。息を吹き掛けた瞬間だけ、ハゲた部分にインキが正常に

付着して、吹き掛けるのを止めれば、またハゲる。こんな状態が起ればね、

こりゃ、ローラーストリッピング決定なんですよ。

 

その旨を機長さんに伝えると「ああ、そうだったんですか」と、印刷機ユニット

の脇に置いてあった、小型扇風機を持ち出して、そのハゲた部分に風を当て

だしたんですわ。そしたらね、着肉不良だった部分が、キレイにインキが乗る

ように成ってしまったんです。・・・コイツ、しょっちゅうやってるな~(笑)。

 

本当はね、こんな、邪道な対処方法ではアカンですよ。ローラーハゲが発生

したら、印刷機を止めて、そのローラーを外し、手でシッカリ磨いてやるって

言うのが正しい対応方法です。・・・どうして、そこまでしなけりゃならないの?

 

ローラーハゲって、おもしろくてね。ローラー上にインキだけしか無い場合だと、

ハゲないんですよ。さぁ印刷を開始しようと、水のローラーやインキのローラー

を、版面にタッチさせた瞬間、インキローラーにインキハゲが発生するんです。

 

つまりね、インキローラーにも湿し水が送り込まれた瞬間、ローラーがハゲる

って具合なんですわ。インキローラーの中でも、金属や樹脂で作られた物に

発生しやすいんですよ。これ何が原因かって言うとね、インキローラーに、

水と仲良しな成分が、こびり付いてしまう事で起こってしまうんですわ。

 

インキローラーは、インキを運ぶ為の物ですから、インキ(油)と仲良しじゃ

ないとアカンですよね。ところが、そこへ、水と仲良しな成分、例えば刷版の

保護に使ってるガム成分だとか、紙の表面に有る、炭酸カルシウムなんて

言う、水と仲良しな成分がインキローラーに、こびり付いてしまうと、こんな

ローラーストリッピング(ローラーハゲ)って言う状態が発生してしまいます。

 

ローラーに余分な成分が、こびり付いてしまう事を、ローラーグレイジングって

言います。グレイジング除去剤なんてのを使って、こまめにグレイズを落として

やらんとアカンのですが、頑固に、こびり付いてしまった物は、ローラーを外し、

手で一生懸命に磨いてやらんと、元には戻りません。

 

特に、UVや、高感度UVは、紫外線硬化剤のせいか、グレイジングが非常に

激しいので、頻繁にグレイズ除去をやってやる必要が有ります。今回の様に

ローラーハゲが起ってしまうと、正常にインキを運ぶ事が出来ませんからね、

ハゲた部分だけ、版面までインキが届かず、淡い絵柄に成ってしまいますね。

 

何の対応もせず、放置しておくだけでは、決して直らないトラブルですから、

ストリッピング(ハゲ)が発生してしまう前に、ローラーグレイジングが起きない

よう、日々の手入れをして行く事が重要なんですよ。