印刷技術 印刷方式・見分け方 | 1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

例えば自社の営業さんが、今までやった事の無い仕事を取って来たとしましょう。

それが現在も、他社で増刷が続いている印刷物だったとします。製版のデータも、

もらって来たので、あとは、増刷物に色調を合わせればOKなんですが・・・。

 

いざ印刷してみると、全く色調が合わない。それどころか、インキの色そのものが

全く違うような感じ。プロセスカラーの4色刷りではなく、特色4色刷りなのかなぁ?

いや、製版データは、CMYKで出来上がっていたしなぁ~。なんで色が合わない?

 

今時、こんな経験をされた方は少ないかも知れませんが、10年位前頃には、私の

所へよく、こんな相談が来ていました。・・・今まで、他社さんで刷っていた印刷物を

見せて下さい。と言って、それをルーペで覗いてみると…。こりゃアカンですわ~、

今まではフレキソで刷っていた物ですから、オフセットじゃ色が出ませんよ~。

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印刷方式には、4つの版様式が有ります。凸版、凹版、平版、孔版ってヤツですね。

最近は、これに無圧版とか言う、インクジェットやトナー方式の物が加わって5つの

版様式って言うべきかも知れませんね。・・・凸版方式の代表選手は、活字を使った

「活版印刷」だったんですが、最近は「フレキソ印刷」ってのが代表でしょうね。

 

凹版は「グラビア印刷」です。ペットボトルの飲料水等のラベルは、ほとんどがこの

グラビア印刷ですね。あと菓子パンの袋もそうですね。平版は我々のオフセットが

代表選手で、孔版は、Tシャツ等にプリントされた絵柄等を刷る「スクリーン印刷」が

有名ですよね。それぞれに特徴が有り、適した用途が有るんですが、冒頭の話の

様に他社で刷った物が、どんな印刷方式で刷られた物かを、確実に判別する事が

出来なきゃ、飛んでも無い事に成りかねませんよね。

 

これね、それぞれの版の形態を理解していれば、その印刷物を25倍のルーペで

覗いてやる事で、判別する事が出来ます。・・・例えば、社内のコピー機で刷られた

写真とか、インクジェットで刷られた写真とかの判別って簡単ですよね。

ええッ!そんな物、ルーペで覗いた事が無いですか? んじゃ手始めに、こいつら

をルーペで覗いて、オフセットと、どんな差が有るのかを確認してみて下さいな。

 

では、まず「グラビア印刷」です。私の目の前に「お~い お茶」のペットボトルが有る

んですが、このラベルはグラビアです。グラビアは凹版なので、マス目の様に四角く

切られた凹部分にインクが入って印刷されるのですが、最も特徴が出るのが文字

なんですよ。文字の輪郭部分が、ギザギザに汚く成ってたら、こりゃグラビアですわ。

 

フレキソの印刷物を探すのは、チョッと難しいかもですが、小ロットのフィルム印刷

にはケッコウ使われています。オムツのパンパース・特別バージョンとかに使われ

ていたのを見ました。フレキソは樹脂凸版です。凸版の特徴は、マージナルゾーン

って言って、版の構造的に、小さなベタ部(網点でもOK)の、輪郭部分に圧が強く

掛かるので、輪郭が濃く、真ん中あたりが淡く成ると言う特徴で判別する事が出来

ます。こんな事、オフセット印刷じゃ、絶対に起きませんからねぇ。

 

スクリーン印刷は、インクの膜厚が、オフセットの20倍も有るので、Tシャツに印刷

して、洗濯しても大丈夫なほど、非常に強い印刷ですね。でもその代わり、繊細な

グラデーションを再現する事は困難なので、カラー写真の印刷とかは無理です。

 

我々の、オフセット印刷ってヤツはね、他の版様式に比べたら、圧倒的な、諧調

(グラデーション)再現性を持った印刷方式なんですよ。他の印刷方式には絶対に

真似の出来ない、美しいカラー写真を印刷する事が出来る。それこそがオフセット

印刷が誕生した理由なのです。ですから、品質で劣るなんて事は、オフセットには

絶対に許されない事であり、オフセットで刷る意味が無く成ってしまうんですよ。

 

写真のみならず、文字も同様です。例えば「伊藤さん」の「藤」など、字画が多くて

しかも小さな漢字を、インクジェットやトナープリンターで刷ったら、文字が潰れて

しまいます。文字の輪郭部分のキレが悪いんですよね。だけどオフセットなら・・・

 

って、胸を張りたいんですが、最近のトナープリンターって、文字のキレが、メッチャ

良いんですよね~。水を上げ過ぎたオフセットよりも、はるかに綺麗だったりします。

これじゃ~ねぇ、本当に、オフセットが生き残れなく成ってしまうんですよ。

 

トナープリンターとかってね、まず版が不要ですよね。版を出力する手間や余分な

資材費が省ける。そして、刷り出しの予備紙も、不要ですわね。刷り出した1枚目

から製品として使えてしまう。特別な技術も不要。誰がボタンを押しても同じ品質

で印刷が出来てしまいます。例えば名刺の印刷なんてオフセットで刷る意味は全く

無いと言っても、決して過言では無いだろうと思います。

 

版を使って、刷り出しの予備紙使って、特殊な技術を駆使して刷るのがオフセット。

それでも、オフセット印刷で刷って欲しい!と、お客さんに言って頂くためにはねぇ、

トナープリンターには絶対に負けない、圧倒的な高品質である事が必須条件なん

ですわ。・・・私が、品質至上主義な理由は、こんな所にも有るんですよ。