印刷技術 両端の余りインキ | 1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

出張から帰って来ました~。

ブログを再開させて頂きますので、また、宜しくお願い致します。

 

先日、「ロングランの印刷で汚れが出やすいので、エッチ液を増量した方が

イイのでしょうか?」って言う質問を頂きました。・・・オレに、こんな事を聞いちゃ

アカンですわねぇ~(笑)。汚れが出やすいからエッチ液を増量するなんてのは、

こりゃねぇ、最悪にアカン事!なのですよ。そう言う発想自体がアカンですわ。

 

エッチ液ってね、活性剤です。活性剤って、要するに台所洗剤と同じです。この

台所洗剤って、油汚れを落とす為に使う物ですよねぇ。・・・水と油の反発を利用

して、インキの着く所と着かない所を仕分けしているオフセット印刷においてね、

「油」ってのは、インキなんですよ。活性剤は油を溶かす。つまり、エッチ液はね、

インキを溶かしてしまう能力を持っているんです。

 

そんな物を、必要以上に大量に入れてしまったら、こりゃインキ、溶けまくりです。

溶けたインキは、濃度が出ませんから、適正濃度を得る為には、必要以上に

インキを盛る事と成りますわね。インキが多過ぎれば、汚れが出やすく成ります。

つまりね、多過ぎるエッチ液は、汚れを増長させる!と解釈しておいて下さい。

 

ですから、冒頭の質問に対する回答は「エッチ液を増量するなんて、絶~ッ対に

ダメですッ!」と言う事に成ります(笑)。とにかくね、想定外の汚れが発生したら、

まず1番にやる事は、ローラーニップの確認なんですわ。例えば、水ローラーに

インキが絡んで汚れが出てたとしても、それを掃除する前に、とにもかくにも、

まずはローラーニップの確認なのですよ。

 

正常な状態ならば、水ローラーがインキで過剰に汚れてしまう事は有りません。

(インキを出し過ぎてる。なんて言う基本の基本がダメなら話に成らんですが)

 

ローラーニップが悪くて(細くて)インキの搬送が正常に出来てないから、インキの

濃度がなかなか上がってくれない。そんな時にも、まず1番にローラーニップの

確認が必要なんですが、それをせずに、淡いからと言って、ただ闇雲にインキを

盛ってばかりいたら、そこに余剰なインキが発生し、余計に汚れが出たり、水系の

ローラーを汚してしまいやすく成るんですわ。

 

今回の質問者さんにも、それを伝えたんですが、ローラーニップを正常にしても、

ロングランだと、両端から汚れが出て来てしまうのだとか。まぁ確かに、両端の

制御ってのは難しいんですが、それでも、それほど困る事では無いはず…。

仕方ないので、その質問者さんの現場を見に行って来ました。

 

そこで分かったのは、インキ壺のゼロ点調整の甘さでした。絵柄が無い、両端の

インキ壺部分のゼロ点が狂ってて、絵柄が無いにも関わらず、常にインキを出し

続けている状態。こりゃ、ロングランをやれば、両端のインキが余って、両端から

汚れ出すのは当たり前ですわねぇ。

 

ここのゼロ点調整、やってるの?「ええッ?ゼロ点って狂うものなんですか?」

おいおい、そこからかい。狂います。メッチャ狂います。毎日のように見てても、

狂う印刷機は狂うんです。特に、この両端部分は注意して見て下さい。絵柄が

無い、この端の部分のゼロ点が甘くて、インキが出続けた状態でロングランを

刷れば、当然の様に両端のインキが余り、両端から汚れます。

 

ゼロ点を絞り過ぎて、インキ壺の元ローラー(金属製)を、削ってしまう様な事が

有っては、こりゃ話に成らんのですが、出来るだけ絞ってやる事が、ベターだと

思います。不要な部分にインキが過剰供給されるってのは、トラブルの原因に

成る以外、何の良い事も有りませんわね。