印刷技術 ダブリ注意 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

ずっと以前にも書きましたが、自分の印刷機の「ダブリ」に気付いていない人って、

実はケッコウ多いんですよ。もう10年以上も前の話ですが、紙が大きくて自社では

刷れない印刷物が有りまして。それを外注へ出してたんですよ。

 

その時も、その印刷物の増刷が来たので、当然の様に、前回、刷って下さった

外注先さんへ依頼する事と成りました。外注先で印刷してもらう場合は、自社内の

管理担当者が、必ず立会いに行く事!と言う決まりが有りましたので、当たり前の

様に、担当者が外注先の印刷会社さんへ、立会いに行ったんですわ。

 

しばらくすると、その担当者から私に、電話が入りました。「どうしても、背景写真の

空の色が、前回より青く成ってしまうんですが、このまま刷ってもイイですかねぇ?」

・・・咬尻に有る、青空の部分が前回よりも青く出てしまう。その空の色を合わせよう

と藍を絞ると、咬の商品の色が、青味が足らず、淡く成り過ぎてしまう。との事。

 

オペレータは、何て言ってるの?・・・「この絵柄は前回も自分が刷ったから覚えてる

けど、前回、保存しておいたデータで、前回と同じ濃度で刷ってて、この空の色だけ

異常に青く出てるから、データ修正して空だけ青く成る様に変更したんじゃないの?

って言ってるんですが、別に変更なんてしてないんですけどねぇ~。」

 

それって、まだ納期は大丈夫だったよね。今日の印刷は一旦、中止して、空が青く

出てしまってる印刷物を持って、会社に帰って来なよ~。・・・咬尻の絵柄ですから、

多分、ダブリだろうと思ったんですが、「前回の色調に合わせろって言うんならば、

その部分の藍の網点を小さくしてもらわないと出ないよ。」等とオペレータから言わ

れてしまった様なので、こりゃオレの目で確かめた方がイイと思い、その印刷物を

持って帰って来るように指示をしたと言うわけです。

 

持って帰って来た印刷物を見たら案の定、咬尻、空の絵柄の部分の藍がダブって

いました。・・・おもえもさぁ、こんなダブリくらい、発見出来なきゃダメだよ~。25倍の

ルーペで空の部分の藍の網点を見てごらん。網点が二重に成ってしまってるのが

明確に分かるから。データで、そこの網点を小さくしろとか言われる前にさ、「これ、

ダブってますから、印刷機のメンテを、すぐにやって下さいッ!」って言えるように

成らないと、印刷の立会いなんて出来ないと思った方がイイぞぉ~。

 

立会いに行った彼は、管理の人間ですから印刷機を扱った経験は一切有りません。

でもね、下請けのオペレータ君は、前回も同じ物を刷ってるんでしょう。自分で刷った

物の増刷をするワケだよねぇ。んで、咬の色はイイのに、咬尻の空の色だけが濃く

成った。こんなのさぁ、即座に「ダブリだッ!」って気付かなきゃダメだよねぇ。自分の

技術の未熟さを棚に上げて、データを修正しろとは、こりゃ恐れ入っちゃうよねぇ~。

 

今回は私が気付いて指摘したので、すぐに爪調整をして、ダブリを解消させたとの

事なんですが、このダブリが発生してた間に印刷した物が、ケッコウな種類、有るん

ですよね。そいつらは、咬尻にダブリが出て、藍が濃く成ってしまってるワケですよ。

その濃く成ってしまった物が次の増刷時には、前回見本と成ってしまうんですわ~。

 

そんなねぇ、ダブって局部的に濃く成ってしまった物なんて、ダブリを直した後で

「その色調を忠実に再現しろ」と言われたって、こりゃまず不可能ですわねぇ~。

 

ダブリってヤツはね、常に気を付けていなければ成りません。早目に気が付けば、

爪の掃除くらいで解消する事も出来るんですが、ダブったまま印刷を続けてしまうと、

爪先が偏摩耗して、爪交換って言うところまで行ってしまうかも知れません。これは

ケッコウ高額な修理に成りますから、本当に要注意なんですよ。