印刷技術 本機校正 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

多くの印刷現場から、「ウチの色調見本はダメだ!」と言う声を聞きます。

色調見本が、インクジェットで出力された物だったり、いわゆる、トナー方式の

カラーコピー機の様な物で出力されていて、それらを見て、お客さんの方が

「んじゃ、この色調でヨロシク」なんて言われてしまうと、こりゃ本当にダメです。

 

そうした、いわゆる「デジタル・校正機」のような物ってね、最初に導入する時

には、印刷機との色調合わせをシッカリやるんですが、数か月、数年って言う

時間が過ぎて行くと、最初に設定した色調とは変わって行ってしまうんですよ。

 

まぁ、そりゃそうですわねぇ。我々が使っている、1億円もする印刷機だって、

何の補正もせずに、1万枚印刷したら、刷り出しの1枚目と、刷り終わりの

1万枚目とでは色調が変わっている事と思います。この色調差を出さない様、

我々オペレータが、随時、調整をしているワケですもんね。

 

インクジェットにしても、トナー方式にしても、多くの場合、無調整のまま月日が

過ぎて行ってしまうのが普通だと思います。そんなもんねぇ、狂ってしまうのが、

当り前だと思いません?本来なら、そのインクジェット等の管理者が、狂った

事に気付いて補正するべきなんですが、そんな事はしないのが普通ですね。

 

それにね、インクジェットにしてもトナーにしても、我々のオフセット印刷機に

比べたら、こりゃ、かなり安易な造りと言えますから、例えばインクジェットで、

同じ絵柄の物を連続して10枚出力したら、その10枚とも全て、全く同じ色調

なのか?って言われたら、こりゃチョッとキツイだろうと思いますよ。それを、

もっとシビアに、1日おきに1枚づつ、同じ物を10日間も出力したら、こりゃ、

本当に、全ての色調がバッチリ!なんて事は有る得ないでしょうね。

 

そんな不確かな物を、色調見本にして、お客さんにOKを頂いてしまう事が、

こりゃもうアカンと思うんですよ。「これはインクジェットですから、絵柄見本

くらいに思って頂いて、色調はアテに成らないと思って下さいね」くらいの事を

営業が、お客さんに伝えなければアカンですよね。

 

「いや、それじゃ困る。正確な色調見本を出してくれ」って言う、お客さんも居る

事と思いますが、そう言う場合は別途の料金を頂いて、印刷機で「本機校正」

ってのをやるべきなんですよ。・・・刷版も紙も、校正用に使うワケですからねぇ、

こりゃ、無料でやるってのは、難しいと思いますが、後々のトラブルを防ぐため

だとか、信頼を得るためとかの理由で、無料でやってる所も多いんですよ。

 

実際にやってみると分かるんですが、濃度計の付いた印刷機を使ってるとね、

この本機校正ってヤツ、意外に簡単なんですわ。だってねぇ、何か他の見本に

合わせるってワケじゃなく、全く何の見本も無い状態で刷るんですからねぇ、

適正濃度内に納まるように、普通に刷ればイイだけの事ですもんね。それで

もし色調が悪くて修正が入ったら、こりゃ印刷側の問題じゃなく、製版での修正

とかに成るワケですから、印刷側は気楽なもんですよ~。(^^)v

 

とは言え、再校正や、三校なんかが入って来た場合はチョッとだけ大変ですよ。

再校正等の場合、全面的に変わるって事は、あまり無いかと思います。例えば

パンフとかで、商品が10個並んでたとして、その内の3つに色修正が有るとか

ってのが普通ですよね。3つは修正が入ったから、色が変わるのは、当たり前

ですが、変更の無い残り7つの商品に関しては、初校と全く同じ色で刷らなきゃ

こりゃ、校正刷りに成りませんわね。

 

例えばね、初校を刷った時の印刷機のコンディションが悪くて、その後メンテを

して正常な状態に戻った。なんて場合、初校は悪い状態で刷ってしまったワケ

ですから、その悪い状態を、もう一度、正確に再現しろって言われても、こりゃ

かなり難しいですよね。・・・逆に考えれば、印刷機のメンテ等が常に良好である

ならば、再校や三校が来ても、お茶の子さいさい!って事なんですわ。

 

何度でも、(増刷が来ても)常に同じ色調で刷る事が出来る!ってのが、印刷に

求められる最も重要な要素の一つですから、そうした事を確立して行くためにも、

メンテの能力を向上させるってのは重要なんですよ。その向上を確かめる意味

でもね、本機校正ってのは、とても有効なんです。是非、挑戦して下さいませ。