印刷技術 高感度UVの1+1 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

光文堂新春機材展、多くの方に、お越し頂き、ありがとうございました。

私の地元の名古屋での開催ですので、古い印刷仲間が多くて、話が弾みました。

そんな中でも一番、私の興味をひいたのが、高感度UVでの、咬両端に発生する

薄っすらとした、チリ汚れです。

 

実は私自身も、初めて高感度UV機を使った時、この咬両端の薄汚れには、随分

苦労をしました。おそらく、経験の有る人が多いと思いますが、咬両端の部分に、

咬から、1~2cm くらい、モヤ~っとした薄い汚れが出るんですわ。「チリ汚れ」と

言ってる現場さんが多いのですが、これの解消には、本当に苦労します。

 

咬側に余裕が有る絵柄なら、多少、汚れが出ても、製品に成る時には断裁されて

しまうので問題は無いんですが、断ちトンボの中にまで、この汚れが入って来てし

まうと、これはアウトなので、何としても消さなければ成らないんですよね。

 

まぁね、消すのは簡単です。湿し水を多目に出してやればイイだけの話なんです。

でもね、この薄汚れを止める為だけに、湿し水を多くすると言うのは、決して良い

事では無いんですよ。だってね、他の絵柄部分とかには、全く汚れが出ていない

状態なんですよね。と言うことは決して湿し水の量が少ない訳ではないんですわ。

 

この、薄汚れを取り去る為だけに、湿し水を多くしなければ成らない。って事は、

他の絵柄部分に関しては、湿し水が過剰な状態に成ってしまうって事なんですよ。

過剰な湿し水は、インキの濃度を下げてしまいます。そこで、淡く成ってしまう絵柄

の濃度を解消する為に、全体的にインキを盛ると言う事に成ってしまう。・・・多過ぎ

る水と、多過ぎるインキの組み合わせは、最悪である。ってのは、何度も解説して

来ましたよね。

 

オフセット印刷の1+1は、極限まで湿し水を絞る事である。特に許容範囲が狭い

高感度UVの場合は、この1+1がシッカリ出来てないとウマく行かないんですわ。

一番最初の、1+1が出来ていないのに、かけ算だとか、割り算が出来るはずも

有りませんわね。難しい印刷物では、割り算どころか、連立方程式を解くような事

も必要に成って来ます。そん時に1+1が出来てなければ手も足も出ませんわね。

 

ですからね、この高感度UVでの、咬両端の薄汚れに関しては、その解消について、

徹底的に向き合って下さい。「チョッと、ここだけ汚れるんだよね~」とか、そんなね、

悠長な事を言っててはアカンのですよ。そんな事を言ってるってのはね、「オレは、

1+1の回答が出来ないんだよね~」って言ってるのと同じなんですよ。

 

問題は、その解消方法なんですが、絶対にやってはアカンのが、湿し水を多くする。

と言う対処方法です。これは1+1の基本から外れますよね。それと、エッチ液の

増量ってのも最悪です。前にも書きましたが、エッチ液は最大で2%まで。2%で、

良好に刷れないエッチ液は粗悪品です。(まぁ多くの場合は、エッチ液が粗悪と言う

よりも、オペレータの技術力が粗悪な場合の方が多いんですけどね(笑))

 

エッチ液や、オペレータの技術力が粗悪な状態で、エッチ液を、どんどん増量して

行くと、インキを侵し濃度や粘度を低下させてしまうので、気が付けば、咬両端以外

の部分にワケの分からんチリ汚れが出て来てしまうとか、インキが乳化して汚れが

止まらない等のトラブルが発生し出してしまいます。

 

であるならば、正しい対処法は?・・・まず最初に、粗悪な技術力の方を改善しましょう。

ローラーがグレイジングしているのならば、徹底的にキレイにする事。程度にもよります

けど、ローラーを印刷機から外して、1本1本、手で磨く事も必要かと思います。その後

でローラーニップをキッチリと出してやる事。これ、メッチャ重要です。

 

そして、そうした事がキッチリ出来た後で、エッチ液の選択です。・・・正直なところ、ここ

までキッチリとメンテをしてやると、今まで使っていたエッチ液でも、咬両端の薄汚れが

止まる事も有ります。って言うかね、メンテや使い方が良好でないと、エッチ液を替えて

みても、その違いが出て来ないんですよ。エッチ液ってね、魔法の液体ではないので、

粗悪な技術力をカバーする程の能力は持っていないんですわ。

 

ただね、勘違いしちゃアカンのは、決して、「スゴい技術力を身に付けろ!」と言っている

訳ではないんですよ。「オフセット印刷技術の基本、1+1をキッチリやれ」と言っている。

ただ、それだけの事だと理解して下さい。・・・ここがシッカリ出来ると、自分にマッチした

エッチ液を、確実に選び抜く事が出来るように成ります。

 

基本をシッカリ踏まえて、メンテをシッカリやって、相性の良いエッチ液と巡り会えるとね、

何の苦労も無く、咬両端の薄汚れは消えて無く成ります。いくら水を絞っても、そんな汚れ

は出ません。こう成ると、もう、難しい刷り物でも楽勝です。是非、試してみて下さい。