印刷技術 楽に刷る | 1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

何とかして、より良い刷り上がりにしようと、コテコテと試行錯誤を繰り返し、

あれこれ悩んで刷り上げてみた。・・・こう言うのってねぇ、後から見ても

決して良い仕上がりに成っていない場合が多かったりしますよね。

 

「コッテコテの作業をしてもアカン。サラ~ッと仕上げた物が綺麗だ」

ってのが、私の友人の口癖でした。ある日、彼が私の工場にやって来て

私の作業ぶりを見ていました。「成田さんってさ、何でもかんでもサラ~

っと、こなしてしまうよね。しかもオレに冗談言いながらだもんなぁ」

 

ええっ、そんな事、意識した事ないけど、これがオレにとっては普通だよ。

別に何も悩む事とか無いもんね。「えっ、でもさ、さっき印刷物を見ながら、

一瞬、悩んだ顔したじゃん」 あ、あれは、次にどんな冗談言おうか悩んで

たんだよ~(笑)。印刷自体で悩む様な事は、やっぱり無いかな。

 

印刷機のセッティングは完璧に調整済み。紙の状態も把握したしそれに

対する対応策も施しておいた。この印刷物に対する吟味も充分にしたし、

それを「成田ブランド」として、どう仕上げるかの構想も出来てる。そして、

それを実現させる為の方策も、すでに施してある。あとは黙っててもさぁ、

印刷機が再現してくれるから、この時点で悩む事なんて何も無いよね~。

 

「その『成田ブランド』ってナニ?」・・・オレさぁ、これでも1級技能士なんだよ。

国家資格を持った技能士が、他の人と同じ仕上がりの印刷物しか作れんと

したら、国家資格を持った意味が無いよね。ウチのお客さん達の中にはさ、

「成田さんに刷ってもらってくれ」と言って仕事を下さってる方もおられてね、

そのお客さんに「やっぱり成田さんが刷ると違うね!」って言って頂けないと

次から仕事が、もらえなく成ってしまうんだよ~。

 

「そこまで言われても、コッテコテに成らないのか~」・・・いや、だからさぁ、

印刷機に版をセットしてしまってから、コテコテやってたら、本当にそれこそ、

コッテコテの泥沼にハマってしまうんだよ~。版をセットする前に、印刷機の

コンディションを整えたり担当営業と相談して、どんな仕上がりを要望され

ているのかとかの相談って部分では、かなりコテコテとやってますよ(笑)。

 

「そっか~、版をセットして試し刷りが始まった時点では、もう既に理想の

印刷物の完成形が見えてるって事か~」・・・えッ?見えてないの?どんな

仕上がりにしたいのかが見えてなければ、そりゃ迷うばかりだよねぇ~。

「ハイ、その通りです。試し刷りを何度も繰り返しては、さっきの方が良かっ

たんじゃないのか?とか、3回前のヤツの方がいいかも?って悩んでます」

・・・ハハハ、そりゃ、コッテコテに成るよねぇ~。

 

実は先日、万年筆のペン先の修正を、職人さんにお願いしたんですよ。

万年筆のペン先には小さな「玉」の様な部分が有りまして、これを研磨して、

私が望む、文字の細さだとか、書き味なんてのを作り上げて行くワケです。

ルーペでペン先を見ながら、少しづつ削って行くと言う作業ですわ。

 

これって、どんな形に削り上げるかは、もう決まってるんですか?

「それが決まっていなければ、削る事なんて出来ませんよね。数万円や、

何十万円もする、お客さんの万年筆を預かって、そのペン先を削るわけ

ですから、『すいません。失敗しました。これ、もう書けません』なんて事、

絶対に通用しません。お客さんの要望を伺って、それを実現する為には、

こんな形に削り上げる!ってのを、まず決めないと話に成りませんよ。」

 

我々も同じだと思うんですよ。印刷は受注生産ですから、そこには必ず、

お客さんからの要望が有ります。「家電製品のパンフだからさぁ、商品の

写真が赤浮きするのは絶対にやめてくれって、おっしゃってたわ~。」

了解です。んでも、今のプルーフから見ると、紅網がケッコウ多いみたい

だから、刷版にお願いして紅版のゲインカーブを少し抑えておきますわ。

 

印刷が始まる前に、要望等が分かれば、その、理想の完成形を求めて、

事前にやっておける事が色々有ります。そうした準備を、万全に行って

おけば、印刷現場でドタバタする必要なんて、全く無いって事なんですわ。

 

印刷作業はサラ~ッとやる。まぁそれが正しい表現かどうかは別にして、

コッテコテの作業をしてたんでは、楽に良い物を仕上げる事は出来ません

よね。事前にシッカリと計算して、準備をキッチリしておく。これが出来る

ように成ると、楽に良い物が仕上がるので、印刷が楽しく成るんですよ~。