印刷技術 選択肢を減らす | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

印刷作業って言うのは、基本的に、Aを選択するか?Bを選択するか?

って言う迷いと、意思決定の連続だったりしますよね。例えば色見本と

色調が合わない。紅を濃くするか?黄を減らすか?なんて言う迷いは、

毎日のように経験されているのではないかと思います。

 

問題は、こうした迷いの中の、いわゆる「選択肢」ってヤツを、どこまで

減らす事が出来るか。って事なんですわ。いつも言ってるように、我々の

オフセット印刷ってヤツは、「物理」ではなく、「科学」なんですよ。

 

淡ければインキを盛れ!汚れたら水を多くしろ!って言う、物理的な対応

では、ウマく行かんのですわ。例えばですよ、紅が淡いって事の原因って、

「インキ盛りが少ない」ってのも、間違い無く一つの原因ではあるんですが、

それより、「湿し水が多過ぎる」「ローラーニップが不良」「ブランがダメ」なん

て言う要因も有るワケですよね。

 

紅が淡い事の本当の原因が、湿し水が多過ぎるとか、ローラーニップが

ダメだったって場合、そうした、一番の原因を修正する事無く、ただただ、

めっちゃインキを盛って対応してしまったら、こりゃトラブル続出ですよね。

乾燥不良、裏移り、乳化、色調不良、諧調不良、色ムラ、色ブレ・・・。

 

ですからね、「あ、紅が淡いなぁ」と思ったら、すぐにインキを盛るんじゃなく、

まずは湿し水を絞ってみる。湿し水を絞ったら汚れた。「やっぱ水上げるか」

じゃなくて、この時も、即座に水を多くしてしまう前に、まずはローラーニップ

を確認してみる。って事が大切なんですわ。

 

紅が淡い。って言うだけなのに、たったそれだけでも何をどう修正するか?

って言う選択肢が、意外に沢山有るでしょう。こんな沢山有る要因に対して、

一つ一つ確かめてたら、こりゃね、なかなか、刷り出す事が出来ませんわね。

 

そこで、「ここは絶対に自信が有るッ!」って言う箇所を、いくつか自分で、

作り上げて行くんですわ。例えば、ローラーニップは昨日の仕事終わりに

キッチリ確認したから絶対に大丈夫!って成れば、迷うべき選択肢が一つ

消えます。ローラー上のインキの量も決して多過ぎるワケでは無い。しかし

それでも汚れているんだから、これは間違い無く極限まで水は絞れている。

これで、二つ目の選択肢も消えます。

 

あとは、ブランの状態、ローラーの新旧、インキの硬さ、用紙の問題・・・

ハハハ、考えるべき選択肢が、まだまだイッパイ有りますね~。

 

こうした時に重要に成るのが、「経験値」ってヤツなんですわ。しかも成功した

経験よりも、失敗した経験の数の方が、役に立つ場合が多いんですよね~。

失敗した経験が多ければ多いほど、選択肢を減らして行きやすいんですよ。

 

あっ、その紙な。それ乾燥がメッチャ悪いから、特殊紙用インキを使った方が

いいぞ。・・・以前に、この紙で失敗した経験が有るから、特殊紙用インキって

言う選択を迷わず選ぶ事が出来るってワケです。

 

こんな話をすると、「自分はまだ経験年数が浅いので、経験値も少なく・・・」

なんて事を言う人が、よく居ますが、経験年数なんて、あまり大きな問題では

無いんですよ。ただただ何も考えずに、漫然と仕事を消化しただけの20年と、

必死に考えて、間違った事でも一生懸命にチャレンジして、失敗を繰り返した

2年では、絶対に、その2年の方が素晴らしい!と、私は思います。

 

失敗ってのは、一生懸命にやった結果です。手抜きをして発生させるミスとは

大きな違いが有ります。・・・ただね、失敗でもミスでも、会社に対して、損害を

与えてしまいます。「失敗は成功の母」と言うように、一つの失敗を糧にして、

自分自身が大きく成長して、会社に恩返しをして下さい。