印刷技術 手早さ | 1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田の印刷技術

1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

20歳代の頃、会社の上司から 「あんたは、手が早いなぁ~」と、よく

言われてました。・・・ん?事務の女の子を口説いた事がバレたかな(汗)

などと焦りもしたのですが、そうではなくて、「仕事の手が早い」と言う事を、

おっしゃりたかったようです。(ホッ、バレてなかった(^^)v)

 

最終的に「技術とはスピードである」ってのは、何度も紹介している、私の

持論なのですが、オフセット印刷ってのは、インキと、湿し水、なんて言う、

二つの「液体」を制御する技術なんですよね。

 

液体ってヤツには、流動性が有りますわね。平らなガラス板の上に液体を

垂らしてみたら、まぁ、その粘度にもよりますが、徐々に流れて広がって

行くって言うのが流動性を持った液体の性質です。まして、このガラス板が

平らではなくって、斜めに成っていたら、液体はすぐに流れてしまいます。

 

印刷機をチョッと思い出してみて下さい。インキと湿し水を扱っている部分

って、どこですか?・・・インキ壺や、水舟なんて所は、インキや湿し水が、

溜めてあるだけの所ですから、まだイイんですが、その二つが出会って、

絶妙なバランスを保っている部分って、やっぱり、ローラーですよね。

 

このローラーの配列って、インキなら、上から下へ、湿し水は、下から上へ

って言う感触の流れですよね。(二階建て式の両面機だとチョッと違うけど)

・・・ガラス板を斜めにしただけで、流れてしまう液体。これが斜めどころじゃ

なく、ローラー上では、上下みたいな感覚で扱われているんですわ~。

 

まぁね、超薄い被膜で制御してますし、ケッコウ粘度の高いインキを使用して

ますから、印刷中の印刷機をチョッと停止させた瞬間にローラー上のインキが、

ぜ~んぶ、下の方へ流れ切ってしまって、上の方のローラーには、全くインキが

無いッ!なんて事には成らないんですが、ここまで被膜が薄いと今度は乾燥っ

て事が、心配に成りますよね。

 

完全に乾燥してしまわないまでも、時間の経過と共に、どんどん変化してしまう

って事は否めないでしょう。ですからね、例えば、見当合わせ、色合わせなんて

言う作業が終了して、あとは、課長の刷り出し許可をもらうだけ。なんて言う時に、

課長が、どこに居るのか分からず、探すのに30分も掛かってしまい、その間中、

印刷機が停止してしまった! なんてのは避けたいワケなんですよ。

 

せっかく良い色が出たのに、無意味に30分も停止させてしまったら、こりゃ条件が

変わってしまって、「刷り出しOK!」とか言われても、再度、その色を再現する事が

出来ないなんて事も有ったりします。非常に不安定な、2種類の液体を制御してる

ワケですから、あまり停止させずに、手早く作業を進めたいですよね。

 

我々の、オフセット印刷ってヤツは、インキと湿し水って言う、反発し合う二つの

液体を、1μと言う、超極薄な世界で扱って行く技術なんですわ。こんなメッチャ

緻密な世界で、超微妙なバランスを扱っているのですから、迅速かつ、的確な

判断、処理、制御、なんて言うのは、本当に大切なんですよ。

 

フライパンの上で、目玉焼きを作る時に、チョッと油断したら、真っ黒焦げに成って

しまったとか、本当は、黄身が半熟に成るように作りたかったのに、熱を掛け過ぎ、

硬い黄身に成ってしまった~。なんて言う事の数十倍、我々はスゴく繊細な事を

しているんだと言う自覚を持って、手早く処理する事に重点を置いてみて下さい。

それが出来るように成ると、刷り出し等の安定性が、ググッと良く成りますよ。