印刷技術 「印圧」中級編 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

私のセミナーでも、良く解説させて頂く話なのですが、印刷を行うためには、

「印圧」と言う、圧力が必要に成ります。・・・初心者コースの場合、「印鑑を

押す時の事を思い出して下さい。」 なんて言う解説をしています。

 

印鑑を押す時、朱肉を付けた印を、紙に対してチョッと触れるくらいの、軽い

圧力で押したって、キレイに印が押せないですよね。下敷きに少し軟らかめ

の物を敷いて、その上に紙を置き、印を押す時は紙に印が、めり込むような

感じで圧力を掛けますよね。

 

オフセット印刷も同じです。チョッと触れてるだけじゃ、キレイな印刷が出来

ないんですわ。そこで印鑑のように、めり込むような感じで圧力を掛けるの

ですが、この時の「めり込み量(食い込み量)」は、小さな印刷機から大きな

印刷機まで、全て一定です。さてこの適性食込み量は、何mm でしょうか?

 

セミナーで、こんな質問をすると、「2mm くらいですか?」って言う回答が、

最も多いんですわ~。まぁ、印鑑から想像すると、そんな感じに成りますよね。

・・・皆さん当然のように、ご存知だと思いますが、オフセット印刷機の印圧、

適正食い込み量は、0.10~0.15mm ですよね。

 

チョッとだけ、話を難しくします(笑)。この、0.10mm って言う食込み量、

いわゆる「印圧」って言うのは、どこの部分の事を言っているのでしょうか?

 

これね、日本全国を回っていると、間違えて覚えてしまっている人がケッコウ

多いんですよ。 「あ!印圧ね、ウチは20とか、30くらいのが多いかなぁ。」

・・・いやいや、それ、印圧じゃなくて、印刷する紙の厚みの話ですよねぇ。

「ええッ!違うの?紙の厚みが変わると印刷機の方の、その数字を変えなきゃ

イカンでしょ。だから、アレを印圧って言ってるんだけど、違うの?」

 

・・・違います。

 それは、紙の厚みなので、「紙厚調整」って事で数字を変えるんですわ。

 

オフセット印刷の「印圧」と言えば、基本的には、版胴×ブラン胴の間の事を

指して言っています。「版ブラン間」(はんぶらんかん)なんて呼びますよね。

ここの食込み量を整えてセッティングする事を「胴仕立て」って呼んでいます。

 

この、胴仕立てって言うのは、本当に重要な部分なんですよ。食い込み量が、

0.10 ~ 0.15mm なんて言う、超繊細な接触圧を作ってやらなきゃアカンの

ですもんね。これには必ず、シリンダーゲージ(パッキングゲージとも言う)を

使って、正確に計測してやって下さい。

 

大きな圧力が掛かる部分ですから、間違えて0.50mm とかで仕立ててしまっ

たら大変です。その荷重負担が、版胴やブラン胴の両脇のベアリングにメチャ

大きなダメージを与えてしまいます。ここのベアリングが、ガタ付きだしたら、

もう、まともな印刷は出来ませんわね。

 

印刷機ってのは、本当に、超精密機械なんですわ。ギヤの構造とか、様々な

タイミングの制御とか、メチャ緻密で凄く繊細な計算の上に成り立っています。

そんな箇所に直接、我々が手を出す事は、まぁ無いんですが、胴仕立てって

ヤツだけは、我々オペレータがやらなきゃ成らない部分なんですよ。

 

さすがの精密機械も、胴仕立てを誤ってしまったら、まともに機能しては

くれません。印刷機の取説等をシッカリと読んで、正確に理解したうえで、

確実に胴仕立てを行うようにしてやって下さい。