印刷技術 温度設定 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

ウチの会社(コスモテック)での私の主担当は、湿し水の冷却循環装置

ですので、印刷工場さんへお邪魔させて頂くと、最初に見るのが、やはり

湿し水冷却循環装置に成ってしまうのですが・・・。

 

冷却の設定温度、エッチ液の添加濃度設定、湿し水の汚れ方等々、必ず

チェックするのですが、設定温度に関してはケッコウ、おもしろいんですよ。

一番スゴイ所は、冷却設定ナシ。つまり、常温で刷られていました。

 

あと、20℃って所も有りました。・・・湿し水の温度を、常温だとか、20℃

だとかで私に刷れと言われても、こりゃ私には出来ません。私は湿し水を

極限まで絞りたい人ですから、常温や20℃では、絞れんのですわ~。

 

湿し水の温度が高いと、何で湿し水を極限まで絞る事が出来ないのか?

答えは簡単です。印刷物に汚れが発生してしまうからです。「温度」って

言う要素で変化してしまうのは、インキでしたよね。インキが高温に成り、

ダラダラに成ってしまったら、非常に汚れやすく成ってしまいます。

 

つまりね、湿し水の温度設定とか、ローラー冷却の温度設定とか、とにかく

「温度」と言う要素は、それによって一番変化してしまいやすいインキを、

ウマ~く扱う為のものだと考えて下さい。・・・んじゃ温度設定は、低ければ

低いほどイイのか?って言うと、これがまた、アカンのですわ。

 

インキってヤツはね、インキローラー中とかで、25℃で正常な転移が

出来るように設計されています。例えば、ローラー冷却の場合だと・・・。

ローラー冷却って、全てのローラーを冷やしてるワケじゃないですよね。

横振りローラー内に冷却水を循環させて冷却していますよね。

 

この冷却温度を、15℃にしたとしましょう。横振りローラーは直接、冷却

されていますから、15℃を保つ事が出来ますが、他のローラーは印刷が

進んで行けば加熱して行きます。もともと25℃で良好な転移をするよう

設計されてるインキですから、他のローラー上では正常転移が出来ても、

この15℃に冷えた横振りローラーに当たった瞬間、正常転移が不可能

に成ってしまうんですよ。

 

正常に転移が出来なく成ってしまうと、この15℃のローラーにインキが

溜まってしまうように成り、印刷用紙にまで、インキが正常に届かなく

成ってしまうんですわ。インキが届かないから、印刷が淡く成り、余分に

インキを盛って色調を合わせる事に成る。余分にインキを盛ってるから

湿し水を絞れば、すぐに汚れが発生してしまう。

 

分かりますか?冷やせば冷やす程、汚れなく成るのではなく、冷やし過ぎ

によっても、汚れや乳化や、裏移り、乾燥不良の原因を作ってしまうんです。

ですから、あまり極端な冷却はせず、ローラー冷却は、24~25℃くらい。

湿し水の冷却は、水舟で15℃に成るように設定するのが良いとされてます

から、冷却水槽内では10℃くらいの設定に成ろうかと思います。

 

印刷中、高速回転してる刷版を、非接触の温度計(レーザーポイントで測る

ヤツです)で、計測した時に、25℃~最高でも28℃までには留めておける

ように成れば、継続的に安定した印刷が出来ると思います。

 

ただし、版面上の温度は、他の要因でも大きく上昇してしまいます。例えば、

胴仕立てが悪く、印圧が異常に高ければ、摩擦熱で上昇してしまいますし、

版面に対するローラーニップがメッチャ太かったりしても、こりゃ温度上昇の

原因に成ります。その辺りの設定が完璧であると言う点にも注意して下さい。