他のサイトに掲載した記事ですが、重要な内容ですので、こちらにも掲載します。
ある印刷工場で実際に見た光景なのですが、菊全4色UV機のステップに、工業用の
大きな扇風機が、8台も、置かれていたんですよ。ん?何に使うのかな?と思ったら、
印刷開始時、各ユニットに2台づつ、そのデカい扇風機をセットしてインキローラーに
強風を当てて、印刷をし出したのです。
なんで、こんな事するの?って聞いてみたら、「これじゃないと刷れん!」と豪語する
んですわ。印刷中は、1ユニット2台の扇風機の強風を、ローラーに当てっぱなしの
状態てす。・・・これじゃないと刷れんってさぁ、こんな事して刷ってるのは日本中でも、
多分、あんただけだよ~ッ!
この機長さん、湿し水はダバダバに多いです。アルコールもケッコウ多目に使って
おられます。よく話を聞いてみると「インキ壺に水が上がって来てしまうんだよなぁ。
それを防ぐためにやってるんだけど、この印刷機、ローラー冷却が付いてないから、
ローラーの熱が上がっちゃってさぁ、扇風機の風でローラーを冷やしてるんだよ。」
いやいや、インキ壺に水が上がって来るのは、湿し水が多過ぎる証拠でしょうが~。
それに、インキローラーを冷やすためにやってるって、それも考え方がアカンわ~。
印刷中のインキローラーに扇風機の風を当てるのは、NGです!やってはアカンです!
我々は、印刷用紙上に 0.001mmの正解なインキ皮膜を作り上げる仕事をしています。
ローラー上の膜厚でも 1mmを越える事は無いでしょう。そんな繊細で、薄い皮膜に、
扇風機の風が当たったら、温度が下がる前に、インキの物性が変化してしまいます。
扇風機の風のために、物性が変化し流動性を損ねられたインキは正常に転移する事が
困難に成ってしまいます。転移し辛く成ると言う事は、インキの乗りが悪く成る訳ですから、
印刷物は淡く成る。淡く成るから、当然、必要以上にインキを盛って対応する事と成る。
そして盛り過ぎたインキのおかげで、裏移り、乾燥不良等のトラブル発生ですわ。
オフセット印刷は物理ではなく、科学です。暑けりゃ扇風機で冷せって言う、物理的な
対応はアカンのですよ。扇風機の風はね、奥の方のローラーには、当たりませんよね。
風が当たった所のインキの物性と当たらなかった所のインキの物性が変わってしまう
ので、様々なトラブルを誘発する原因に成ります。インキローラーに扇風機の風を当て
るってのは、絶対厳禁!と覚えておいて下さい。
同じ意味で、ローラー冷却温度の低過ぎってのもアカンのですよ。例えば、夏場など、
ローラーの温度が上がってしまうからとか言って、ローラー冷却の温度を18℃とかで
設定したとしましょう。ローラー冷却の装置で実際に冷水を通して冷やしているのは、
横振りローラーですよね。この冷えた横振りローラーのおかげで、周りのローラーも
冷えてくれるのですが、さすがに全部を18℃にまで冷やす事は出来ないでしょう。
もともとインキってのは、25℃で使うように設定されていますから、25℃のローラー
の部分では正常に流れて(転移して)くれます。せっかく、25℃でキレイに流れて来た
インキが、18℃まで冷やされた横振りローラーに当たった瞬間、流れが悪く成ってし
まって、そのローラーの所にインキが溜まってしまうんですよ。
インキの流れが悪く成れば、当然、淡い印刷物に成ってしまうので、これまたインキを
必要以上に盛る事と成ってしまい、乾燥不良や裏移りを発生させてしまうってワケです。
インキも湿し水も、流動性を持った液体です。それらに変な手を加えてしまうと、元来の
性能を損ねてしまうんだって事を、覚えておいて下さい。