印刷Q&A エッチ液濃度 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

 ● 質問

 
どうしても成田さんの意見が聞きたくてメールしました。

エッチ液の定量管理をしていますが、そもそもなぜ
2%なのでしょうか?もちろん印刷機やアルコールの
有り無し等で、2%以外で使っている所は沢山あると
思いますが。自分のところは、オフセット輪転機で
ノンアルコールです。どこのメーカーも大体2%を推奨
してきますが今現在、明確な答えが得られない状態です。

なぜ2%での推奨なのか等わかりましたら教えて下さい。
よろしくお願いします。
 
●回答
 
久々のご質問、感謝感激!でございます~(^_^)v
 
実は私も、同じ疑問を30年程前に抱きました。
当時、私は日研化学さんのテスターとして、
アストロ・マーク3 開発の、お手伝いをしてました。
(この点は公表しても良い旨、日研さん許可済みです)
 
当時は連続給水システムが、普及し出した頃で、
IPAを大量に投入して印刷をしていた時代です。
完全なノンアルコール化を成功させる事を第一の
目標としてアストロ・マーク2 そして、マーク3が
大旋風を巻き起こした時代です。
 
完全な化学者である、エッチ液の設計者さんが作った、
100種類近いエッチ液の試作品を、順番に私がテストして
評価して行くのですが、その時も最初っから、2%と言う
濃度が指定されていました。・・・なんで、2%なの?
と化学者さんに聞いてみると、次のような回答でした。
 
アルコール並みに、5%添加させてもらえるのならば、
設計者として、そんな楽な事はない。成分の構成とか
安定性を考えた時、2%よりも5%、もっと言うなら、
10%添加だったら、とれほど作りやすい事か。
 
現在、標準的なアルコール添加量が5%である。これを
ゼロ%にさせるためのエッチ液が、同様の5%添加だと
したら「なんだ、アルコールと同様の性能しか持って
いないのか~」と言われてしまう。ノンアルコール用の
エッチ液は、どうしても高価に成ってしまう。それを
アルコールよりも素晴らしい性能だと思ってもらう為
には、アルコールより少ない添加量で効果を発揮させ
なくては成らない。その分岐点が2%だと考えている。
 
つまりね、アルコールよりも値段の高いエッチ液を
アルコールと同様の添加量で使わなければ成らない
としたら、ノンアルコールにする事でメチャメチャ
お金が掛かってしまうって事ですよね。そんな事では
誰もノンアルコールにしてくれませんわね。
値段は高いけど、たったの2%で、充分な効果を出す
ことが出来るくらい、高性能なエッチ液なんですよ!
と言う点が、とても重要だったのだそうです。
 
その逆に、1%添加で使えないか?と成ると、これは
2%の半分の量で同様の性能を出す事に成るワケです
から、単純に考えても、倍に濃縮された物に成って
しまいますわね。エッチ液は、水と混ざって使われる
物ですから、濃縮度が高ければ、水に混ざり難いとか、
分離してしまいやすいとか、安定性を著しく損なう等
の問題が出て来るのだそうです。
 
研究者が開発する物ってのは、どれほど高性能な物でも、
その値段と効果が釣り合わなければ、決して普及しま
せんよね。特に印刷と言う仕事は、沢山の薬剤や資材を
使います。そんな中で、費用の掛かり過ぎる物って言う
のは、一番初めに見直されてしまいます。そうした事を
全て考慮して、目標にしたのが、2%添加で成功させる
って事だったのだと考えています。