印刷技術 更紙(ザラガミ) | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

ご無沙汰でございます~。

日本列島を、北へ南へと、出張で飛び回っておりまして、

なかなかブログの更新が出来ず、久々に書いております~。

 

今回は、更紙(ザラカミ)印刷の、お話しです。枚葉機だと、包装紙系で、

純白ロールの裏面に刷るだとか言う、飛んでも無い話が有りますよね~。

あとは、上質紙よりも低級な、中質紙にカラーやベタを刷るなんて話が

有ろうかと思います。

 

まぁ、イヤな紙ですよね。ヒッキー(紙剥け、ゴミ乗り)等で、ベタ部分に

白抜けが出たりとか、インキの着肉不良や、紙粉のブラン残りなどで、

印刷品質が、すぐに劣化してしまうので頻繁に印刷機を止めて、洗浄や

対策などをして行かなきゃ成らないですもんね。

 

こうした、表面強度が低い紙の場合、昔はね、インキをダラダラに軟らかく

して対応してたんですよ。「エエッ!ウチは今でも、その対応してるよ!」

って方も多いかと思うんですが、チョッと考えてみて下さい。

 

昔は、今とは違って、連続給水ではなく、モルトン水棒って言う、ゴムの

ローラーに布を巻いたヤツで、湿し水の供給をしていたんですわ。これね、

布が版面に当たりますから、例えば必要以上に、多目のインキが有っても、

その布が吸収してくれちゃうんですよ。

 

それに対して、今の連続給水は、ゴムのローラーが版面に当たりますよね。

モルトンと同じように、多過ぎるインキは、このゴムローラーに付着して行くん

ですが、布と比べたら、ゴムなんて、吸収できる量が微々たるもんですわ。

 

・・・「多過ぎるインキ」で、解説していますが、「ダラダラに軟らかいインキ」でも、

同じなんですよ。軟らか過ぎるインキは、汚れやすく、その汚れを防ぐためには、

どうしても、水が多目に成ってしまう。水が多ければ、インキの濃度が出ないので

インキを必要以上に盛って、色調を出してやらなきゃ成らない。

 

つまり、軟らかいインキは、その量も、どうしても多目に成ってしまうって事なんです。

多目で、しかも軟らか過ぎるインキ。連続給水で、この状態を作ってしまうと、まぁ、

大変ですわ~。水着けローラーがインキだらけに成って、調量のゴムローラーとか、

最悪の場合、クロム(金属)ローラーにまでインキが着いてしまったら、こりゃもうね、

まともな印刷に成りません。

 

「更紙 = 軟らかいインキを使う」 ・・・表面強度の弱い紙ですから、カチカチに硬い

インキでは刷れないんですが、この考え方は、モルトン時代の、古い考え方だと、

思って下さい。印刷枚数が少なくて、連続給水のローラーが、インキで汚れてしまう

前に印刷が終わってしまうんならイイんですが、2万枚とか、それ以上は難しかと。

 

んじゃ、どうするか。・・・インキは普通に使っている中でも、少々軟らか目のインキを

選択して、湿し水は、ガッチリ絞る。(オフセットの基本の中に『水を上げ気味にする』

なんて考え方は、こりゃ有りませんわね。どんな場合でも、水はガッチリ絞る!)

 

紙はね、水に弱いんですよ。紙を水で濡らして、その表面を指先で、コシコシと

擦ってやれば、ほとんどの紙が、ボロボロの表面に成ってしまいます。湿し水が

多いってのは、紙を水で濡らしてるのと同じで、ヒッキーを出やすくしてしまって

いるんですわ。ですから、とにかく、湿し水は徹底的に絞る!

 

あとね、もしも、インキローラーと、湿し水のローラーを連結する事が出来るような

ブリッジローラーってのが有れば、積極的に使ってやって下さい。(ハイデルの

アルカラーの場合は、常ににブリッジが繋がった状態ですよね)。インキってのは、

湿し水が入り込む事で、タック(粘り気)が落ちます。

 

ブリッジを掛ける(リョービさんだと、セパじゃなく、インテにする)ってのは、いろんな

効果が有るんですが、更紙の場合だと、合法的に良好な、低タック状態を作るって

ことと、もう一つ。余分な紙粉や、ヒッキーの元に成るような物を、強制的に水舟へ

流し込んでくれるので、ヒッキー対策には、かなり有効なんですわ。

 

更紙だけを刷っていれば、それ専用の仕様にしてしまえばイイんですけど、そうは

簡単に行かないですよね。でも、さぁこれから更紙を刷るぞッ!とか言って、いろんな

変更をしなきゃ成らないってのは、出来るだけ避けたいですよね。

 

いつも言ってるように、印刷は、インキ・紙・水って言う、三大不安定要因を扱う技術

なんですわ。その不安定な要因を、少しでも楽に扱えるように、印刷機械も、ブランも、

ローラーも、みんな進化しています。その進化した物達の特性を、シッカリ引き出して

やれば、ほとんどの物は、鼻歌混じりで刷れてしまう時代です。

 

周辺の物が、全て進化している中で、それらを使うオペレータの頭だけが、20年前の

技術しか理解していない。・・・これが一番アカン事です。シッカリ勉強して、高性能な

機械や、資材や材料達を、正しく使ってやって下さい。そうすれば、更紙印刷なんてのも、

とても楽な仕事に成ります。(^^)v