印刷技術 塩と砂糖 | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

「塩を知らない者に、砂糖を出して『これが塩だ』と教えたら、この甘い物が、

 塩なんだと思い込んでしまう。  それが 『教える』 と言う事の恐ろしさだ。」

・・・私の、師匠の言葉です。

 

先生、そりゃ、いくらなんでも、飛躍し過ぎですわ~。砂糖を塩だと思い込む

なんて、そりゃ無いでしょう!「じゃおまえ、印刷会社に就職する前に印刷機を

見た事が有るか?」 ・・・いや、就職してから、初めて見ました。

 

「だろ。だったら、印刷機を初めて見た時に、先輩から『これが表面加工の、

ラミネートマシンだ』って教えられたら、おまえ信じるだろ。」・・・あ、確かに。

印刷業界に初めて入って来た人間にとっては、どれが塩だか、砂糖だか、

全く分からん状態だ。そこで逆に教えられたら、それを信じるしかないんだ。

 

そう言えば、私にも覚えが有ります。・・・成田、紙の大きさを教えてやるわ~。

とか言って、先輩風を吹かせながら、これがA全だ。A1とも言う。これを半分に

断裁した大きさが、A半切、A判二つ切だな。だから、A2とも言うんだ。んで、

A半切を、また半分に切ると、A判4つ切。つまり、A4判だな。

 

これね、2級技能検定の勉強をするまでの、2年間ほど、信じ切ってました~。

A判4つ切=本当は、A3判ですよね。全く知らない事を、初めて教わる時に、

間違って教えられてしまうと、何の疑いも無く、そう思い込んでしまうんですね。

・・・確かに、塩と砂糖の話って有るんだなぁ~。

 

先日、ウチの会社内で、色の話をしてました。ウチは機材メーカーですから、

色に関して、印刷屋さんほどの知識は持っていませんわね。「あの看板の色

って『紫色』でエエんかなぁ?紫より薄いから、違う色?」・・・あれはねぇ~。

 

私ら印刷屋は、さんざん、特練りの色を作って来たワケですから、そんなもん、

一目瞭然で、頭の中に配合表が浮かびますわね。「あれはですねぇ、群青が

ベースなんですよ。メジウムで薄めて、カラーガイドマゼンタ少々ですかね。」

 

「チョッと待って下さいッ!あれって、紫とか、青系の色ですよねぇ。それを、

群青色がベースだって、そりゃ、おかしくないですかッ!」 ・・・エエッ?

 

なんか話が噛み合わんなぁ~。T さん、T さんにとって、群青色ってどんな色?

「あそこに見える家の、壁の色みたいなヤツですよ」 ・・・それって、こげ茶色。

「いや、あの茶色の濃いヤツを、群青色だって教わったんですよッ!」

 

いつ、どこで、誰が教えたのか知らんけど、砂糖を塩だと教えてしまったん

ですねぇ~。そのために、Tさんは、こげ茶色を、群青色だと思い込んで、

30年以上も過ごして来てしまったんです。こんな一般的な、色の話でも、

間違いが起きてしまっています。恐ろしいですねぇ~。

 

印刷現場って言うのは、新入生達にとっては、異次元の世界です。

専門用語が飛び交い、言葉すら理解出来ないような空間なのです。

どうか、諸先輩方、塩と砂糖を間違える事なく、教えてあげて下さい。