印刷技術 ゼロセット | 1級技能士・成田の印刷技術

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1級技能士・成田が、オフセット印刷技術を解説します~。

チョッと前にも、少し触れましたが、インキ壺のゼロセットってのは狂って

当然である。って言うのが、私の考え方です。外国製の印刷機に関しては、

経験が無いので分かりませんが、国産の印刷機は、狂うのが普通です。

 

だってね、その構造を考えてみて下さいよ。インキ壺の開き具合ってのは、

分割された壺キーブロックの先端と、インキ壺の、元ローラーとの隙間の

間隔で決まりますよね。

 

この、壺キーブロックってやつは、100段階くらいで、開いて行くかと思うん

ですが・・・。例えばです。隣のキーの開き度が80で、その隣の開き度が、

たったの、3 なんて事もケッコウ有るワケですよねぇ~。隣のキーがメチャ

沢山動いて、その隣は少ししか動かない。そんな状態の中でも正確に開度を

保たなきゃ成らないって、こりゃケッコウ過酷ですよね。

 

壺キーの動きって、金属製のキーブロックが前後に動いたり、上下に動いたり

して、隙間を制御して行くわけですが、それを動かしているのは、多くの場合、

キー一つ一つに着けられたモーターでやっていると思います。

 

壺の開き度の表示ってヤツはですねぇ、このモーターが、ゼロ点を基準にして、

ナンボ回ったか?で、その開き具合を表示しているのであって、実際に、その

隙間を、センサー等で計測して数値を表しているワケでは無いですよね。

 

そりゃ当たり前ですわねぇ。もし、各壺キー一つ一つに、隙間センサーみたいのが

付いてたら、メチャメチャ高価な装置に成ってしまいますもんね~。・・・センサーが

無いって事はね、実際には、どれだけ開いているかは、不明だって事ですよね。

 

インキ壺には、当然の話ですがインキが入ります。このインキってヤツは流動性を

持った液体ですから、キーとキーの隙間に入り込んでしまったり、キーの下に潜り

込んでしまったりして、キーの動きを渋くしてしまいます。

 

こんな過酷な状況の中、我々が求めるゼロ点、つまり、キーと元ローラーの隙間は

たったの、3ミクロン(1000分の3mm) なんて言う、超精密な精度だってワケですよ。

こりゃね、狂うな!って方が無理ですわ~。

 

ですからね、壺キーの分解清掃とか、ゼロ点の調整とかってのは、オペレータが

行うべき、とても重要なメンテナンス項目だって事なんですわ。・・・ゼロ点調整の時、

絶対にやっちゃアカンのが、元ローラーに対して、強く当て過ぎてしまうってヤツです。

 

強く当て過ぎると、回転する元ローラーの表面を削ってしまう事が有るんですよ。

表面に傷が付いてしまった元ローラーは、その傷から、どんどんインキが流れ出し

てしまいますから、ゼロで制御していても、インキが供給され続けてしまいます。

こう成ってしまったら、もう、正確な色調調整とか、出来ないですよね。

 

8胴も有る輪転機とか、菊全判の6色機とかに成ると、壺キーのメンテとか、ゼロ点

調整とかは、本当に大変だと思いますが、楽に、良い物を刷るって事が、生産効率や

安全性を考えた場合、とても大切ですから、どうか頑張ってやって下さいませ。